開国祭
魔導国カリタスが、ついに開国された。
これで僕は、本当の意味で力を持った、一人の国主として、世界から再度見つめられることとなる。
でもまあ、そんなことはおいといて、今日は遊ぶんだ!!!
開国祭二日目、フィリア達が帰ってきて、家族が全員揃った。
「フィリア、ヤブラン、フィオナ、ゲヘナでの開国式、お疲れ様」
「みんなの反応は、どうだった?」
「まあ、とてもいいものとは言えないわ」
「でも、元悪魔だから分かるけれど、悪魔は本当に嫌であれば、開国式にすら来ないはずだ」
「前の悪魔国の方針に不満を持つ者も多かったからな」
「ヘルンの新しい政権に期待もしているのだと思う」
なるほど、悪魔と人間では、考えや行動なども少し違うのか。
「そうか、なら良かった」
「そっちはどうだったんだ?」
「こっちは順調すぎるくらい上手くいったよ」
「バシレイアでは結構頑張ってたから、それが功を奏したみたいだ」
「流石だな、ではやはり、問題は悪魔か」
「素直に心を開いてくれるといいんだけどね」
「そうだな...」
みんなが頭を悩まし、ひと時の沈黙が生まれた。
「まあ!とりあえず!」
急に僕が大声を出したので、みんな少し驚いていた。
「今日は開国祭、楽しもう!」
珍しく興奮している僕に、みんな動揺しているようだったが、だんだんみんなも笑顔になり、誘いに乗ってきた。
「いぇーい!」
うん、何故だろう、みんな僕の後ろを歩いて、国王の偵察のようになってしまっている。
「みんなと回れて嬉しいんだけど、そんなにずっとくっついてなくていいんだよ?」
「みんな気になる屋台とかないの?」
「俺はヘルンを守らなければならないからな、みんなは好きに回るといい」
「私もヘルンちゃんを守らないと行けないから、みんなは各自で楽しむと良いのではないかしら」
「私は副保護区長だからな、保護区長であるヘルンと一緒に居るのは当たり前だ」
「私は秘書であり、守護神防衛隊だもの、着いていくに決まってる!」
「ヘルンは私のお兄ちゃんだもん!」
「私のお兄ちゃんでもあるもん!」
「あらあら...」
人間時代は誰かに求められることなんてなかった。
誰かに救われ、誰かに助けられ、僕は誰かの足を引っ張ることしか出来なかった。
そんな僕が、今はみんなに愛されている。
そこに返している愛は、やはり、確実に、本物だ。
僕が心の中でひっそり涙を流している間に、みんなの争いは激化していた。
「じゃあ、ヘルンとのデ、ごほん!一緒に祭りを回る権利をかけて、勝負だー!」
「ヘルン、何か勝負になることない?」
「えぇ、みんなと回るじゃだめなの?」
「え、それだと...んー、あ!混んでる中で大人数はダメだと思う!」
「あぁ、まあ、確かに?」
「うん!何かない?」
「んー、そうだな...」
「じゃんけん、かな」
「じゃんけん?なにそれ」
そっか、じゃんけんなんて文化、この世界には無いのか。
「手を、握るか、開くか、人差し指と中指を上げるかの3つの形にするんだ」
「それを、それぞれ、グー、チョキ、パーって言うんだけど、グーはチョキに強くて、チョキはパーに強い、パーはグーに強いんだ」
「複数人でやる時は、みんなの手の形が2種類になるまでやって、強い形の方が生き残る」
「なるほど...たのしそう!」
「やってみよぉ!」
「掛け声は、最初はグー、じゃんけんぽん!だよ」
「で、勝った人が居なかったら、あいこでしょ!って言うんだ」
「わかった!じゃあ、行くよ、最初はグー、じゃんけんぽん!」
「ふふ、まさか、1番最後に加わった私が残るなんてね」
アイシーが微笑んだ。
「アイシーとはちゃんと話せてなかったから、嬉しいよ」
「あら、嬉しいことを言ってくれるわね」
「本当のことだよ」
「アイシーと最初に会った時、ヤブランとかもそうだけど、この人は良い人だって思ったんだ」
「師匠の話を聞いて、確信した」
「その時思い出したんだ」
「師匠が昔言ってた」
「自分を助けてくれた悪魔が居ると」
「だから、師匠は、強いけれど、悪魔との大きな戦いはしなかったんだ」
「悪魔にも、優しい人が居ることを知っていたから」
「僕は、沢山の悪魔を葬った」
「それこそ、良い悪魔も、悪い悪魔も、関係なく」
「だから僕は、師匠やアイシー、みんなのような、優しい人に憧れるんだ」
「僕には、出来ないから」
「そうかしらね」
「ヤブランはそうでも無いけれど、私だって、沢山の人間、神族を殺したわ」
「私は生まれた時が弱かったから、努力するしかなかったの」
「今でこそ反省はしているけれど、罪が拭われることは無い」
「私たち、仲間みたいね」
アイシーが再び微笑んだ。
その笑顔は、先程のものとは少し違った、悲しそうな、嬉しそうな、哀れむような、救われるような。
そんな、笑顔だった。
「さ、暗い話もここまでにして、せっかくデート権を貰ったんだから、楽しまないと」
「はは、そうだね、屋台でも回ろうか」
「ええ」
しばらく二人で歩いていると、アイシーが突然悟り出した。
「元悪魔王と神王がこうして肩を並べて歩いているなんて、凄いわね」
「うちの家族は、互いに世界を簡単に滅ぼせる力を持つ者同士が何人も集まって協力している」
「これは、確実に、時代の革新よ」
「そうだね」
「そうだねって、あなたがやったのよ」
アイシーは笑いながら言った。
「はは、確かに...」
「まあ、あなたのそういう所が好きよ」
急に何言っちゃってるのー...顔が噴火しそうだよ...
まだ恋愛とか、一回もしたことないからな...
「あ、ありがとう」
赤くなった顔を隠して感謝を言うのが、精一杯だった。
「あ、あの屋台行こうよ!」
そう言って、空気を変えるために美味しそうな串焼きの店にアイシーを引っ張って行った時。
急に空に暗雲がたちこめ、紫色に光る雷が、空を覆った。
会場中がざわめきで溢れ、不安感が広がっている。
「何事かしら」
「僕も分からないけど、とりあえず結界を張ろう」
「そうね」
アイシーと僕は、会場を覆うようにそれぞれ結界を張り、様子を見た。
「特に何も起こらないわね」
「まあ、二人が結界を張ったからね、何か起きても破れないと思うけど」
結界には、外からの攻撃を防ぐ効果に加え、音なども防ぐ加工をした。
雷の音が収まったことで会場も徐々に元気を取り戻し、また活気のある騒がしさが帰ってきた。
僕らも段々とその事を忘れ、祭りを満喫した。
会場も雷に慣れ始め、むしろ花火のように楽しみ始めた。
若干の不安は残っていたが、悪魔の脅威も消えたのだ。
そう何かが起きるとは考えにくい。
雷の光が強くなるにつれて、僕の不安感も強くなっていくのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
普段の投稿時間より約3時間の遅れ、申し訳ありません!
次話は、2025年11月27日に投稿します!
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