魔導国カリタス
そうだ、宮殿を作ろう。
そう思ったきっかけは、もう時期行われる、僕が治める国の開国だ。
開国式は恐らくバシレイアで行われるだろうから、それの舞台が必要となる。
バシレイアの中のどこかの国を借りてもいいのだが、それでは神王の威厳もなにもない。
正直恥ずかしいけれど、宮殿も外交での武器の一つ。
数世界を束ねることになる僕には、必要なのだ。
宮殿を建てるとなれば、人間の人達の力も借りなければならない。
どこに頼もうか。
メガロス帝国に頼むのが安定的に良い判断なのだろうけど、メガロス帝国の帝王とは面識がないんだよなぁ...
となれば、残るはイレーネ王国かサスティナ王国。
いや、違う。
そんなのは、僕の目指す国じゃない。
次の日、バシレイアに、久々の守護神からのお告げが下った。
《近頃、バシレイアを中心とした数世界による国が出来る。それにあたり、バシレイア中央に、バシレイア全国で協力して、ヘルフェン宮殿を建ててもらいたい》
その後、メガロス帝国を中心とした八国もの大国が協力し、わずか一ヶ月で数多くある世界でも最大級の宮殿が建ったのだった。
ついにこの日が来た。
神魔戦争で生き残った悪魔と、人間の共存を目指す、魔導国。
それが今日、正式に開国される。
魔導国として加盟するのは、バシレイア、アバンダント、そして、元々魔神の世界だった、ゲヘナ。
バシレイアは言うまでもなく、僕が管理しているから、魔導国に加盟する。
アバンダントは、この前の小規模進行対応の時に目をつけていた。
ゲヘナに関しては、悪魔の人達が最初は怖がるだろうから、ゲヘナに集まってもらうつもりだ。
これからもちょこちょこ加盟世界を増やしていこうとは思っている。
開国式はバシレイアで行われ、ゲヘナで悪魔向けの開国式がフィリアによって行われる。
珍しく派手な服を身にまとい、バシレイアに建設されたヘルフェン宮殿の自室で開国式の始まりを待っている。
自室は前の家全体よりも広く、大きな本棚に大きな机、何もかもが豪華で、居るだけで疲れてしまう。
まあ、いつかは慣れるか...
ハデス様の自室と比べてみれば、そこまで突出したものでもないのだろう。
もちろん、ヘルフェン家全員の自室及び作業室がある。
みんな、見たこともないような豪華な部屋に、若干怯えていた。
僕らには、あの家くらいがちょうどいいのもしれない...
それにしても、この服暑いな...
この上に、式の時はもこもこしたマントまで羽織らないといけない。
億劫だ...
「ヘルン、その服似合ってるよ、かっこいい」
「そう?」
「ハネストもそのスーツ似合ってるよ」
「ふふ、そう?こんな服初めて来たから、ちょっと楽しい」
「お兄ちゃん!私は!」
「ヘレナもスーツ似合ってるよ」
「ハネストとヘレナで完璧秘書って感じでかっこいい」
やはり、女性にスーツは似合う。
二人とも、仕事が出来そうな素敵な女性に見える。
家ではのんびりしてるけどね。
「ふふ〜」
喜び方すらも似てるな...
「アイシーも、軍服似合ってるよ」
かっこよすぎて見惚れるくらいには...
「そうかしら、しっかりした生地だけど、動きやすくて、良い服だわ」
「それは良かった」
一般的な紺色の軍服に、銀色の翼が刻印された勲章を付けている。
とにかく、かっこいい...
ヤブラン、フィオナも、ゲヘナの開国式に向かっている。
今はまだ、悪魔との共存は出来ないかもしれない。
でも、いずれは、みんなが互いに助け合える国を目指したい。
アバンダントとバシレイアの空間を繋いで、アバンダントの人達は今、バシレイアに集まっている。
開国式の後に行われる、一ヶ月にわたる開国祭。
ゲヘナでも同様のものが行われるが、フィリア達は、開国式が終わればこちらに戻ってくる。
魔法でゲヘナの状況は随時確認するが、とりあえず、悪魔同士で楽しむことで、緊張をほぐす作戦だ。
しばらくすると、ドアが叩かれ、開国式の登壇を促された。
「分かった、すぐ行くよ」
宮殿には、人間の使用人さんが沢山いる。
なるべく威厳を損なわないように、冷静に、優しく話すことを意識している。
ハデス様を目標にしているのかもしれない。
宮殿前に作られた、守護神の玉座。
その両サイドにはハネスト達の席が置かれ、その更に外側には、バシレイアの八国の長とアバンダントの五国の長の席がある。
それぞれの世界の国の長達は既に席に着いており、後は僕らが席に着くだけだ。
そこからも分かるように、階級としては、アイシーやハネスト、ヘレナ達の方が、各国の長達よりも上となっている。
でないと僕の指示しか聞かないことになって、忙しい
死神には厳しいからな...
壇上までの廊下を一歩一歩踏み出す度、足が重くなる。
これから僕は、数世界の頂点に君臨することになる。
勝手な行動や軽率な行動は絶対に許されない。
想像するだけで気が滅入りそうだ。
人間、神族、悪魔の共存。
その目標は、死神の心すら持たないほどの難しいことなのだ。
宮殿の出口が近づいて来る度に、僕の鼓動はどんどん早くなっていった。
人間なら何らかの病気になりそうなくらいの心拍数になった時、目の前が一気に明るくなり、無数の群衆に囲まれた。
あ...
それを見て何かを言おうとしても言葉が喉につまるほど、群衆の圧は強い。
集まった人間の人達が僕を声援で迎え、その音は鼓膜の状態を案じるほどとなり、僕の心を震わせた。
近くで歩いているみんなには僕が動揺しているのが分かったのだろう。
三人は、そっと僕の肩に触れた。
厚い布に覆われた僕には、その温もりは感じられないはずだが、確かに、みんなの温もりが、震えていた僕の心を温める。
その時、僕は今日で一番大きな、一番堂々とした、一番力強い一歩を踏み出し、立ち止まった。
それは、守護神の玉座の前であった。
守護神の登場に歓喜したのだろうか、周囲はそれまでより一層大きな声援に包まれた。
堂々と立った僕の後ろでは、豪華なマントが風になびいていた。
各国の国王達も席を立ち、僕の方を向いた。
「よく集まってくれた、我が愛する世界の住人達よ」
「神魔戦争により、間接的にも、何らかの被害を受けた者も居るかもしれない」
「だが我々は、新たな道へと進むのだ」
「悪魔と神族、そして人間の共存」
「神族と人間の共存は既に完成しつつあるが、悪魔との共存は未だ果てしなく遠い」
「我が国が先陣を切って、全種族共存の未来を掴み取る!」
「ここに、魔導国カリタスの開国を宣言する!」
そう言い終わった途端各国の長達が僕に跪き、一瞬の静寂を置いて、これまで聞いたこともないような大きく暖かい声援がヘルフェン宮殿前を包み込んだ。
待ってましたと言わんばかりに、宮殿に《開国祭》というのぼりがあげられ、屋台が次々に開店した。
僕や国の長達も席につき、飲み物を交わし、談笑にふけった。
特に、ヌース・イレーネとスピリトーは、現在の各国の状況や、事件以来の復興度合いなどを教えてくれ、バシレイアの異常の発生頻度などを確認することが出来た。
そうして、開国式は無事に終わったのだった。
開国祭、僕も楽しむぞー!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
昨日は体調不良により、投稿を今日に振り替えてしまい、申し訳ありませんでした!
次話は、2025年11月24日(月)に投稿します!
都合上、木日投稿の変更が多く、申し訳ありません!
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(作者がただただ喜びの舞を踊ります)




