愛するということ
偽愛の死神、それが僕の二つ名。
それを聞いた時、僕は絶望した。
でも今は、少し希望を抱いている。
師匠によれば、行動によって二つ名は変わるらしい。
もちろん、意志を貫くために血の滲むような努力が必要ではあるが、そんなことは僕にとってなんの問題でもない。
人間だった頃から変わらない。
頑張れる事自体が尊い。
頑張れる余地があることが、頑張れる方法があることが、この上なく嬉しいのだ。
今の僕の愛は、確かに偽物なのかもしれない。
でも、それが本当の僕なのだとしたら、それをみんなさらけ出すことが、真の愛への一歩なのではないだろうか。
玄関の取っ手に手をかけ、深呼吸をする。
やはり、みんなに本当のことを言うのは緊張する。
でも、みんなが大好きなのも、本当のことだ。
取っ手を握りしめる。
思い切って扉を開けると、リビングにみんなが集まっていた。
「あ、ヘルン、おかえり」
いつも通りのみんな...
言えそうな、気がする。
自然と頭が下がる。
「みんな、ごめん!」
「僕の二つ名は、偽愛、偽りの愛だった!」
「でも、僕はみんなが大好きだよ!」
「偽物だとしても、僕は愛してるつもりだってことだけ覚えておいて欲しい」
「こんな僕ですが、これからもよろしくお願いします!」
全部弾けた。
僕の本心も、恥ずかしさも、愛情も。
「ほら、顔上げて」
視界には、いつもと何一つ変わらないみんなの笑顔が映る。
「私達はね、ヘルンに愛されたいからついて行ってるんじゃないよ」
「ヘルンが大好きだからついて行ってるの」
「まあもちろん、愛してくれたら、嬉しいけど」
ハネストが少し頬を赤らめながら言った。
「そうだぞ、俺はお前に命を拾われたようなもんだ」
「ここにいるみんな、多分そんなもんだろう」
「命の恩人について行くことに、見返りなんて求めない」
ヤブラン...
「私もお兄ちゃん大好き!」
「私も、お兄ちゃん好き」
ヘレナとフィオナが手を挙げながらはしゃぐ。
みんな、気にしていないようだった。
こんなに簡単なことだったんだ。
僕の真の心を見つけるまで、みんなについてきて貰えるように頑張ろう!
「ところで、ずっと気になってたんだけど」
「みんなで何してるの?」
そう、家に入った時に僕が最初に見たのは、笑顔で家を飾り付けするみんななのだ。
「まあ、一応、授名祝い、かな?」
「あぁ」
「まあ、いいか」
「どんな二つ名でも、二つ名を貰えるだけで光栄な事だし、楽しませてもらうよ!」
「うん!」
「ほら、そこ座って!ケーキ持ってくる!」
「おぉ」
「ケーキ、ハネストお姉ちゃんとヘレナお姉ちゃんと一緒に作ったの!」
「フィオナも手伝ったんだ、偉いね」
「フィリアお姉ちゃんは手伝わなかったのかな〜?」
「わ、私はいいのだ」
「フィリアお姉ちゃんはね、お料理苦手なんだよ」
「へ〜」
「フィオナ!だまれ!」
「あらーフィリアは大人気ないな〜」
「ね〜フィオナー」
「そうだそうだー!」
「くっ...」
そうして、バシレイア一明るい家に、また笑顔が戻ったのだった。
「ヤブラン、意外と甘いもの好きなんだね」
「う、うるせ!いいだろ別に」
なんか可愛い...ギャップ萌えってやつか...
「私も甘いもの好きだから、元気出して!ヤブランさん」
「ヘレナ...いい子だな...」
ヤブランは少し涙目だった。
そんなに感動したのか...
「ヤブランは意外と可愛いところがあるからね」
アイシーが畳み掛けた。
「ぐはっ...ヘ、ヘレナ、助けてくれ...」
可哀想に...
「そういえば、軍を作ると言っていたけれど、力が消えている悪魔で力になる?」
「んー、確かに、治安維持が主な任務とはいえ、ある程度は、僕の配下として動けるようになって欲しい」
「そうよね、どうしたものかしら...」
「最悪僕の魔力を分けても良いんだけど、素直に受け取ってくれるかもわかんないし...」
「なにより強くなられすぎても困るからな....」
「信頼を築けるまでは、ヤブランとアイシーで制圧出来る程度の戦闘力にしておきたい」
「まあ、元がそれほどでもない悪魔なら、僕が力を与えてもそこまでにはならないだろうけどね」
「念には念を、僕が力を分けるのは最終手段として、方法を考えよう」
「わかったわ、私も考えてみるわね」
「俺も考えておく」
「二人とも、よろしくね」
「ねーねーヘルンー」
「私とヘレナが秘書役なんだよね?」
「そうだね」
「なにか勉強しといた方がいい事とかある?」
「んー、確かに、外交とか、経済的な事も手伝ってもらうつもりではあるけど、僕もそんなに知識がないからなぁ」
「フィリア、そういうの得意?」
「ああ、悪魔王時代にそういう役職だったから、出来なくはないぞ」
「お!じゃあ、ヘレナとハネストは、フィリアに色々教えて貰ってね」
「お前もだぞ、ヘルン」
「は、はい...」
ハネストとヘレナが少し笑った。
まあ、勉強するか...
「私はなにかすることないの?」
自分の話だけされていないから不安になったのか、フィオナが心配そうに聞いてきた。
「フィオナは、絶対的な治癒魔法を手に入れて欲しい」
「医療部長だからね、みんながついてくるように、治癒魔法を極めて欲しい」
「分かった!フィオナ頑張る!」
「うん、偉いね」
「ヘルン!元気出たなら、魔法の練習付き合ってよ!」
「おぉ、いいよ、みんなはいいの?」
「私はいいかなー今日はハネストお姉ちゃんに譲るよ」
「今度一回付き合ってもらいたいもんだが、今日はハネストに譲ろう」
「じゃあ行こうか、ハネスト」
「やったー!」
外に出ると、ハネストは飛び跳ねながら僕の手を引っ張った。
「早く!早く!」
「転ぶよー」
野原の中心部に着くと、ハネストに見ててと言われ、少し離れて待った。
「前の魔法披露会から練習したんだ!いくよ!」
「うん」
気持ちよく晴れた空の下、ハネストは宙に手をかざす。
「アイスホーク」
聞いた事のない魔法に、僕は驚いた。
ハネストは、もう完全に、氷魔法の概念を掴んでいる。
そんなことを考える間もなく、空に十羽の光り輝く鳥が現れ、ハネストの指した方向に突撃した。
土埃が周辺を覆い、無理やり威力を教えてきた。
「ヘルン!大丈夫!?」
「大丈夫だよ」
「その魔法、考えたの?」
「うん、命令すれば、遠距離攻撃も出来るよ!」
想像以上だ。
正直、アイシーには勝てないと思っていたが、やはりハネストは、僕の想像を超えてくる...
「アイシーさん、氷魔法凄いよね」
「そうだね」
「アイシーさんには、私じゃ勝てないんだと思う」
「でも、ヘルンに役に立つって思って欲しくて」
え...僕がハネストを苦しめていたのか。
「確かに、アイシーは強いし、うちの戦力的な所を任せたいと思ってる」
「でも、ハネストはハネスト、アイシーはアイシー、どっちも、僕の大切な仲間だよ」
「特にハネストは、僕の心のよりどころになってくれている」
「ハネストは、僕にとって欠かせない存在だよ」
「えぇぇぇぇえ!そ、そうかなぁ...」
えぇぇえがどういう意味なのかは分からないけど、照れてるみたいだし、嬉しかったのかな。
まあ本当のことだし、僕も少し恥ずかしかった。
「じゃあ、特訓を始めようか」
「はい!師匠!」
「はは、何それ」
「へへ」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
昨日は投稿が出来ず、今日に振り替えとなってしまい、申し訳ありません!
次話は、2025年11月20日に投稿します!
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