和解と敵対
「ヤブランさん、一応聞いておきたいんですけど」
「魔神への信仰心などはないんですよね?」
「あぁ、特にそういったものは無いな」
「なら、魔神から力を奪われても、僕が同程度またはそれ以上の力を与えると言ったらどうします?」
「え」
彼の厳つい顔から急に力が抜け、可愛らしいキョトン顔になった。
「そ、そんなことが出来るのか」
「はい、フィリアやフィオナにも施してますよ」
「元闇柱と水柱か」
「ふむ...いいぞ」
「え」
いいんだ...
「お前と戦ってみたい気もするがな、まあ仕方がない」
「お前の力、一目見れば分かる」
「俺が勝てる相手じゃない」
「それに、お前と戦う理由も特にない」
「むしろ、魔神には少し嫌気が差していたところだ」
「なるほど...」
「もし良ければ、俺をお前の仲間に加えてくれ」
おぉ!三人目にして和解成功!
「是非、よろしくお願いします!」
「まあ、仲間になったから教えると言ってはなんだが、残りの二人は多分和解には応じんだろうな」
「特に、ピストスは魔神への信仰心が一際高い」
「少なくとも、会話だけで和解するのは無理だろう」
「そうか...まあとにかく、一人でも仲間になってくれたのは嬉しいです」
「じゃあ、行ってきます」
「あぁ、俺も参戦した方がいいか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「ヤブランさんはそこで休んでいて下さい」
「分かった、健闘を祈る」
「ありがとうございます」
悪魔王は残り二人、一人は毒魔法使いの女性、もう一人は悪魔固有魔法を使っているピストス。
毒魔法使いは置いておいて、ピストスが厄介だ。
悪魔王の中で悪魔固有魔法を振り分けられるのは、悪魔王の中で最強であることを表している。
話の通じる相手ではありそうだが、ヤブランさんによれば魔神への信仰心が強いらしい。
信仰心というものは怖い。
人は、自分が依存するもののためならなんでも出来てしまう。
早急に終わらせるのが善策だ!
「ジャッジメント」
ジャッジメントは本来単体攻撃魔法。しかし、威力を大きくすれば、二人くらいには十分当たる。
闇夜に流れる流れ星のように白く輝く魔力が、帯状となって数本のそれが光速で進みながら回転し、交わろうとしている。
それが交わった時、目を焼き切る程の閃光が放たれ、当たった者は神の罰を受ける。
フィリアに使った時よりも、威力は数倍になっている。
それは二人の悪魔王に当たった。
毒魔法使いは死んだ。
ピストスも死んだ。
意外にあっさりとした終戦にほっとしかけた時、何故か宙に浮いたままだった死体が、少しだけ動いた。
え...やめてよ?生き返るとか。
そんな僕の願いも無視して、ピストスは完全に蘇った。
さっきまで頭から生えていた二本の角が、一本になっていた。
一度まで生き返られる魔法...
多分生まれつきの固有的魔法だろう。
はぁ...不意打ちで倒したかったんだけどな...
ピストスはヴァルキリーとの戦闘である程度手こずっていた。
なのに悪魔固有魔法を振り分けられていることに疑問を持っていたが、こういうことか。
「まさか、急に殺されるとはな」
「私の切り札が無くなってしまった」
「流石は神王、私が敵う相手ではないようだ」
「なら、和解して貰えませんか?」
「残念ながら、それは無理なんだ」
「我は魔神様の純粋なる配下」
「魔神様を裏切ることなど出来まい」
予想通りの答えだな。
「魔神は僕が殺す」
僕がそう言った時、ピストスの比較的穏やかに見えた目がギロッと開き、頭に血管を浮かばせた。
「魔神様を殺すとは笑止千万!」
「お前の驕った態度、魔神様の配下である私が叩き治してやる!」
「ドミネーター」
「デーモンブロー」
「ヴァンダル」
ピストスは、怒りに任せて悪魔固有魔法を乱射した。
そんな適当な魔法が僕に当たるわけも、効くわけもない。
「テメノス」
神の領域...
それは、ドミネーターによる悪魔の領域を一瞬で飲み込み、範囲内を輝かしく照らした。
「もう一度死ぬといい」
―ジャッジメント―
歴史上最大規模の悪魔王戦は、そんな呆気ないもので終わった。
ヤブランを残して、四人の悪魔王が消えた。
その時、急に脳内に一つの術式が流れ込んできた。
―アブソープション―
自分が倒した敵の能力を会得することが出来る魔法。
それにより、悪魔王達の様々な固有能力が手に入った。
もちろん、ピストスの自己蘇生魔法も。
「ヘルフェン、お疲れ様」
ヤブランさんが僕のところに来て体調を気遣ってくれた。
「ありがとうございます」
「一人で悪魔王を四人倒すとはな」
「流石神の世界、バシレイアの守護神だ」
「喜びたいところなのですが、今すぐ仲間の元へ向かわなければ」
「悪魔の大侵攻を食い止めるには、僕の力さえも必要ですから」
「そうか、なら、今力をくれれば、俺も手伝うぞ」
「本当ですか!それはありがたいです」
「では、目を瞑って、自分の思う風を想像していてください」
―オルタ―
ヤブランさんの精神は、悪魔王とは思えないほど清らかなものだった。
そのため、魔神の力を切り離すのは容易だった。
暴風のような、春風のような、それはどちらも美しい。
ヤブランさんの精神に、僕の風魔法を定着させる。
風属性の特性を最大にし、僕の魔力を流す。
「終わりました」
「ほう、意外と早いんだな」
「一度魔法を使ってみてください」
「あぁ」
ヤブランさんは、宙に向かってウィンドカッターを放った。
それは遠く離れた木々を切り倒した。
「ちょいと強すぎないか」
「なんか、僕が力与えると、強化がかかるみたいなんですよね」
「凄いな...お前...」
「さ、じゃあ早く向かいましょう」
「仲間が心配です」
「フィリアが居るから、上級悪魔相手に負けるとも思えないけど、念には念を」
もう、ハネストに起きたようなことは二度と起こさせない。
僕が、この戦争を支配する!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
投稿時間が普段より大幅に遅れてしまい、申し訳ありません!
一週間毎日投稿6日目、明日で最後です!
次話は、2025年10月22日に投稿します!
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