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氷雪の女皇

獅子色の髪を靡かせながらメノスは地に落ちた。

周りを見渡すと、目の前で純白の女騎士ヴァルキリーの白い翼が黒に蝕まれ、灰と化した。

とてつもない速さで、ヴァルキリーが消えてゆく。

そこには、氷を自在に操る肌の白い女性が飛び回っていた。

「僕と和解する気は?」

「本当はそうしたいところだけど、ピストスが言った通り、もう引けないのよ」

「まあ、なら仕方ありません」

「尋常に勝負です」

「ええ、よろしくお願いね」

「ちなみに、あなたのお名前は?」

「私はアイシーよ、そちらは?」

「僕はヘルフェン・カリタスです」

「カリタス...もしかして、慈愛の死神の身内?」

「師匠をご存知なんですね」

「まあね、昔色々あったのよ」

「そうですか」

全身を白いドレスで飾るアイシーは、悪魔王らしくない微笑みを見せた。

「まさか自分が見逃した者の弟子と戦うことになるとはね」

自分が見逃した者?どういう事だ。

「自分が見逃した者とは?」

「あら、聞いていないの?確かシュッツといったかしら」

「彼女は元々人間なのよ」

師匠が元々人間!?

そういえばハデス様が、人間から死神になると能力が高い傾向にあると言っていた。

師匠もそうだったのか...

いやいや、悪魔王の言う言葉をそう簡単に信じてはいけない。

僕を惑わすための嘘かも...

「それで、私がまだ下級悪魔だった時、彼女を襲おうとしたのだけれど」

「その時、彼女は飢えていて、汚れていて、死を欲していたのよ」

「そんな彼女を私は殺すことが出来なかった」

「そうしたら、そんな彼女がいつの間にか慈愛の死神になったって訳」

出会った当初、師匠は言った。

普段あまり料理をしないから美味しくは無いかもしれないと。

そして、一緒にご飯を食べていた。

普通、死神は料理をしない。

栄養摂取効率がものすごく悪いから。

でも、師匠は僕と同じご飯で栄養を取れていた。

昔は料理をしていたような言い回しも、今となっては気にかかる。

もし本当に師匠が元人間なら、人間の僕を死神にする事に躊躇しなかったことにも納得がいく。

本当なのか...

「もし、それが本当なのだとしたら」

「まずは、ありがとうございます」

「師匠の命を拾ってくれたおかげで、僕もまた救われた」

「そして、それでも、僕は仲間を傷つける運命にあるあなたを見逃すことは出来ない」

「一度、死んでもらう」

「ええ、分かっているわ」

ヴァルキリーの翼が次々に地に落ちていく。

千体のシャドーナイトも、もう余裕はない。

手早く倒さなければ。

「デスボルト」

アイシーが放つ冷気を切り裂くように、アイシーに向かって一筋の光となり突撃する。

その瞬間が、僕のデスボルトが初めて弾かれた時だった。

僕の光速の攻撃に、同等の攻撃を当てて防ぐとは...

やるな。

だったら、防ぎようのない強力な魔法を、高速で、大量にぶつけるしかない。

「ヘルフレイム」

「デスインフェルノ」

「デスミティオライト」

ほぼ同時に繰り出される各属性最大火力級の魔法。

炎魔法と死神固有魔法という悪魔特効の魔法は、アイシーによる対抗の魔法を消し去り、アイシーに大きな損傷を与えた。

「流石ね、神王になったというのも納得だわ」

血でドレスを所々赤くしながら、アイシーが呟いた。

「でもね、私も負ける訳にはいかないの」

「アイスブリザード」

震える声で彼女が放ったその魔法は、僕が初めて関係を持った人間が使った魔法だった。

威力は悪魔王級、例の彼女のものとは比べ物にならない強さだが、弱った体で放った魔法で、僕を傷つけることは出来なかった。

大量の氷が吹き荒れる中僕がアイシーの目の前まで行くと、アイシーはまた魔法を構築しようと手を伸ばした。

「もう、やめてくれ、アイシー」

「僕の仲間にもその魔法を使った女性がいたんだ」

「これ以上、苦しまないでくれ」

僕の目から、自然と涙がこぼれた。

アイシーとハネストが被ったのか、ハネストに似た人が苦しむ姿を見たくなかったのか...

僕のそんな姿を見たアイシーは、持ち上げていた手を下げ、話し出した。

「そう、あなたの仲間にも氷魔法を使う人が居るのね」

「じゃあ、私があなたの仲間に入るのは無理そうね」

そう言うと、アイシーは手中に鋭く長い氷を生成し、自らの胸を刺した。

「え...」

「私はね、魔神なんてどうでもいいのよ」

「ただ、誰かの為に何かをしたかっただけ」

「でも、それももう出来そうに無いわ」

「なら、せめて私は、あなたの為に死にたい」

「彼女にも、よろしく言っておいて」

そう言い残すと、彼女の目から光が消え、身体の端から徐々に崩れていった。

「待っていてください」

彼女が落とした一粒の涙を握りしめ、僕は別の悪魔王の所へ飛んで行った。


アイシーを止めたことにより、ヴァルキリーとシャドーナイトの激減は緩和された。

しかし、既にヴァルキリーの数は三十を切り、シャドーナイトも二百を切った。

悪魔王は残り三人。

ヴァルキリーダンスは強力だが、使える回数に制限がある。

ヴァルキリーとシャドーナイトの牽制によって単体撃破を出来るのは後一人くらいだろう。

ピストスと呼ばれていた話の通じそうな悪魔王は残しておこう。

となれば、後は、風魔法で暴れている厳つい男か、毒魔法でヴァルキリーを少しずつ蝕み続けている顔色の悪い女性の悪魔王だ。

毒魔法使いの方は置いておいても大丈夫だろう。

まずは、ヴァルキリーに大ダメージを与えている風魔法使いを殺ろう。


そう決めた瞬間、目の前にその風魔法使いの悪魔王が現れた。

「次は俺だろ?」

「だから俺から来てやった」

「ヴァルキリーを振り払ってくるとは」

「相当な実力者なようで」

「お前に向かって行ったら追いかけてこなくなったからな」

「そういう命令なんだろう?」

「はい、僕と戦っている間は邪魔されませんよ」

「そうか、それはいい、楽しめそうだ」

銀髪で鍛え抜かれた体を持つ男は、メノスと同じような強い口調だが、その言葉の重みが違った。

「メノスは殺られて当然だが、アイシーも殺られるとはな」

「神王も意外と強いみてぇだ」

「そうですね、なので、和解してもらえると嬉しいんですけど」

「恐らく自分の方が強いのに和解をしようとするとは、珍しい奴だな」

「そうですか?、僕としてはなるべく力を使いたくないんですけど」

「ほう、まあ、俺は和解してもいいんだがな」

え、意外〜...

「いいんですか!?」

「したくてもな、出来ないんだ」

「俺達は魔神様に力を貰っている」

「裏切ってしまえば、力を失ってしまう」

「そうなれば、俺はどうせお前じゃなくても、他の神に殺られるだろう」

「そうですか、なら、戦うしかありませんね」

「ああ、なんか、すまんな」

「あ、そういえば、お名前は?」

「俺はヤブランだ、お前は?」

「僕はヘルフェン・カリタスです」

「良い名だ」

「素晴らしい戦いをしよう」

「もちろん」

ここまで読んで頂き、ありがとうございます!

1週間毎日投稿5日目!残り2日も頑張ります!

次話は、2025年10月21日に投稿します!

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