魔法披露会【終】
「フィリア、頼みたいことって?」
「私の魔法の披露はまた今度にして欲しいのだ」
「え、どうかしたの?」
「いや、その...」
僕が急に披露会を開いたから、準備が間に合わなかったのかな。
悪いことをしたな...
「ごめん、じゃあ今回は・・・」
「恥ずかしいのだ!」
僕の言葉を切り裂くように、フィリアが顔を赤くしながら強く言った。
「皆に魔法を見せるのが恥ずかしいのだ...」
...え、なんで?
「なにかあるの?」
「私は、これまで威力だけで場面を乗り越えてきた」
「だから、皆のように発動スピードも早くないし、繊細なものでも、感動するようなものでもないのだ」
柄にもなく恥ずかしがっているフィリアを見ると、申し訳ないけど笑みがこぼれた。
「威力も立派な技術だよ」
「威力だけで悪魔王にまでなったのなら、なおさらだ」
「もしみんなに見劣りすると思うなら、修行をすればいいだけ」
「誰も笑ったりしないから、フィリアの全力を見せてよ」
フィリアは若干迷った様子を見せたあと、決心したように、水晶に右手の人差し指の先を向けた。
「わかった、では見るがいい」
「ちょっと待ってぇ!」
途端に後ろからフィオナの必死そうな声が聞こえた。
「私もお姉ちゃんの魔法見たい!」
フィオナは、本当に姉好きなようだ。
「そのために起きてきたのか、呆れたヤツめ」
「だって!見たいじゃん!」
「まあいい、そこでじっと見ておけ」
フィリアは再び水晶に体を向き直し、魔法を打つ体勢を取った。
「では行くぞ」
「私の中でも最高峰の魔法」
「ダークデストロイ」
フィリアがそう唱えると、少しの間の後、フィリアの手の指先に闇魔力で出来た小さな球体が出来たかと思うと、それは破裂したかのように弾け、僕らの視界は一瞬にして奪われた。
周りに急速に広がる深い黒に輝く光に、その場のみんなが見入った。
それはかつて数百世界を征服した凶悪な悪魔王が使ったとされる、一発で世界を滅ぼせる魔法。
小さな黒き輝きが一瞬にして爆発し、その光が届く場所では、とてつもない圧と闇の魔力で、残るものなど何も無いと言われている...
まさかそれを、目の前で見ることが出来るとは...
フィリアの力の評価を考え直さなくては。
「ど、どうだった...?」
「いや、水晶の、力の吸収力を信じていたけど、それでも一瞬ヒヤッとしたよ」
「フィリアが仲間でよかった」
ハネストとヘレナも頷いた。
フィオナは、自慢げに息を吐いた。
「確かに、威力に関して僕から言えることは何も無い」
「後は、発動スピードと魔法の制御だけど、この魔法は危険すぎるから、僕が居ない時は練習しないでね」
「あぁ、もちろんだ」
披露会を終え、みんなに集まってもらった。
「いや、みんな本当に凄いよ」
「ここにいるみんなは、出会った時から異彩を放って居たけど、今はその時の何倍も強くなってる」
「自分の身を守るためにも、これからも修行に励むように!」
フィリアは静かに頷き、他の三人は元気よくはーいと応えた。
「じゃあ、そろそろ家に戻ろうか」
「みんな疲れただろうし、しっかり休んでね」
「え?」
ハネストが不思議そうな声を漏らした。
「ヘルンは魔法を披露しないの?」
「え...」
「確かに、お兄ちゃんの魔法見たい!」
「ヘルンの魔法か、気になるな」
「フィリアお姉ちゃんよりも強いんでしょ!?見てみたい!」
「えー...」
「んー、じゃあ、この水晶が耐えられるギリギリの魔法にするよ?」
「全力でやっちゃったらバシレイアが滅んじゃうし」
「え...」
ハネストとヘレナが一瞬固まった。
「まあじゃあ、やるかぁ」
「お兄ちゃん頑張れー!」
「うん...」
さて、どんな魔法にしようか。
みんなに安心してもらう為にも、それなりの魔法を見せなければ。
んー、でも威力ゴリ押しの魔法を見せるのも面白くない。
見た目もいい魔法かぁ...
よし、自分で作ろう!
華麗で、壮大で、力強い...
程なくして、僕の納得のいく魔法を思いついた。
「よし、じゃあいくよ」
みんなが少し姿勢を直した。
召喚魔法、創造魔法、死神固有魔法、光魔法を組み合わせた、究極の、神の魔法。
「ヴァルキリーダンス」
詠唱が必要な魔法ではないが、なんかかっこいいから唱えた。
発動スピードでヘレナに負ける訳にはいかない。
詠唱が終わる時には、僕の背後に7体の壮大なヴァルキリーが立ち並んでいた。
光り輝く鎧と純白のドレスで身を包み、静かに指示を待つ姿は、まさに神の騎士という言葉が相応しかった。
その女神のような優しい顔は、絶対的な力から来る余裕のようだった。
ヴァルキリーが放つ光は、とても死神の魔法とは思えないものだった。
「目の前の水晶に一撃を加えろ」
そう指示すると、ヴァルキリーは踊るように水晶との距離を詰め、閃光のような剣撃を与えた。
水晶はその攻撃を受け止めきったが、流石に持ち堪えられなかったのか、水晶は粉々に砕けた。
手で空を振り払うと、ヴァルキリーは消えた。
「どうだったかな」
後ろを振り返ると、みんな、意識があるのか分からないくらい気が抜けた顔をしていた。
急にハネストが動き出すと、みんなも徐々に意識を取り戻し始めた。
「い、いや、凄すぎて意識飛びかけたよ私」
「ヘルンってやっぱり神王なんだね...」
「やっぱりって何...」
「私を倒した時よりもさらに強くなっているようだな...」
「これに勝てる悪魔王を私は知らないけど...」
フィオナが驚きを隠せない様子で言った。
「お兄ちゃんに魔法を教えてもらうってもしかしてとんでもない事なんじゃ...」
ヘレナが戸惑いながら言った。
「いいんだよ、僕の師匠だって、何も出来ない僕に一から教えてくれた」
「今度は僕が誰かに教える番だ」
「わ、私も、ヘルンお兄ちゃんに教えて貰いたい!」
フィオナが目を輝かせて言った。
「良いよ、まあというより、ここにいる全員、僕の魔法の指導を受けてもらう」
「最終的には、悪魔王と一対一で対峙しても、僕が行くまで生き残れるくらいにはなってもらいたい」
「なるほど」
みんなが了解したのを確認し、家に帰った。
「みんな疲れただろうし、今日の夜ご飯は豪華に行こう」
「おー!」
「僕が作るから、みんなはゆっくり休んでおいて」
「いや、手伝うよ」
「大丈夫、今みんなは魔力切れに近い状態にある」
「この世界は、いつ危険が来るから分からないんだ」
「今は休んで欲しい」
「分かった」
フィリアはソファに腰掛け、ハネスト達は寝室に向かった。
僕は料理が好きだ。
前世では出来なかったから、何かを作って誰かに喜んでもらうのが嬉しい。
数刻後、料理が完成した。
サラダ、スープ、メイン、パンを机に並べ、みんなを呼ぶと、お腹がすいていたのか、みんなすぐに席に着いた。
みんなでご飯を食べると、全員すぐに寝てしまった。
そんなに全力を出したのか...
はぁ、明日から任務続きかぁ...
暖かい飲み物を片手に、机の上で頬杖をついていると、料理中に思い出していた昔の記憶が、再び頭を飽和させた。
いつの間にか、その支配者さえも、睡魔に支配された。
次の日目を覚ますと、何故かみんなに見られていた。
「どうしたの?」
「いや、寝てるなーって」
「なにそれ」
みんなで一笑いしたあと、僕は家を出た。
さ、今日も頑張るか!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
次話は、2025年10月17日18時に投稿します!
累計PV1000達成を祝して、今日から1週間、毎日1話投稿!(投稿時間がズレる可能性があります、ご容赦ください)
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