魔法披露会【始】
「フィオナ、ちょっといいかな」
ある日の朝、僕はフィオナを呼び止めた。
「どうしたの?ヘルン」
「フィオナは悪魔王だよね?」
「うん」
「ということは、魔神から力を得ていると思うんだけど」
「そうだね」
「神族側について、力が奪われたりしないの?」
「ん〜、分からないけど」
「可能性が無くはないかな」
「なるほど、じゃあ、ちゃちゃっと僕の魔力に塗り替えちゃおうか?」
「...?どういうこと?」
「フィリアにもしたんだけど」
「魔神の代わりに、僕が力を与えるんだ」
「...え?」
フィオナは目を丸くした。
「正確には、フィオナの魔力器官に干渉して、好きな魔法の適性を悪魔王程度まで上げる」
「ほ、ほぇ...」
「でも、いいの?私は悪魔王だよ?」
「フィリアにも言ったけど、味方の戦力はあればあるだけいい」
「僕は家族を信じてる」
「それに、悪魔王レベルに上げたところで、僕を倒すことなんて出来ないよ」
「悪魔王レベルでは勝てないなんて...そんなこと言えるのはヘルンくらいだよ」
「ははっ、フィオナの魔法が気になるから、早く始めよう」
「あ、うん」
「フィオナは何属性の魔法が好き?」
「うーん、一応、私の得意な魔法は水属性魔法だけど...」
「お、いいね」
水属性魔法は、魔法属性の中で最も習得者の多い魔法であり、それ故に上級魔法のレベルが高い。
それは、固有魔法を除き、最も強い魔法は水属性最上級魔法だと言われるほどだ。
「今は、どのくらいの魔法が使えるの?」
「ふふ、悪魔王だからね、最上級魔法まで使えるよ」
「おお!それは楽しみだ」
「じゃあ早速、儀式を始めよう」
「う、うん、ちょっと緊張するな」
「大丈夫、痛くないから」
「目を瞑って、澄んだ水を想像するんだ」
「わかった」
フィオナの頭にそっと手を置く。
僕も目を瞑り、清らかな水を思い浮かべる。
艶やかな水が、自分の周りを囲むような感覚に陥った。
フィオナの魔力器官を感じ取り、そこに先程のイメージを乗せた自分の魔力を流し込む。
程なくして、フィオナから悪魔の魔力が消えた。
「終わったよ、フィオナ」
「もう終わったの!?」
「何も変わってない気がするけど...」
「まあ、とりあえず」
「適当な魔法を空に打ってみて」
「絶対に空に打ってね」
「え、あ、うん」
フィオナは戸惑いながら、空に両手をかざした。
「アクアジェット!」
フィオナの大きな詠唱の直後、空に水の柱が出来たかのように、凄まじい勢いで水が噴出された。
アクアジェットは上級魔法ではあるが、比較的簡単な魔法で、もちろん、通常このような威力は出ない。
「な、なにこれ!私、アクアジェットを詠唱したよね!?」
「なんか、僕が力を与えると、威力に強化がかかるみたいなんだ」
「えぇ...確かにこれは地上に向けては打てないや...」
「ま、まあ、上手くいってよかった」
「その力は、人間、神族、家族、何より自分のために使うんだよ」
「分かった、私、みんなを守るために頑張る!」
「うん、フィオナが修行すれば、今以上に強くなれる」
「自分のペースで頑張ってね」
「うん、ありがとう!」
「じゃあ家に戻ろうか」
「あ、あのさ、ヘルン」
フィオナが急にモジモジしだした。
「ん?どうしたの?」
「よ、良ければでいいんだけど、私もヘルンのことお兄ちゃんって呼んでいいかな」
「ほら、私、1番年下みたいだし」
こちらの目をチラチラ見ながら恥ずかしそうに話すフィオナは、出会ってから一番可愛かった。
「うん、いいよ」
フィオナの顔が急に明るくなった。
そんなに喜んでくれるのか...
家に帰ると、何やら魔法の話で盛り上がっているようだった。
「お姉ちゃん達は確かに強いけど、魔法の展開スピードなら負けないよ!」
「まあ、氷属性魔法は使える人がまず少ないからね〜」
「威力では私には勝てん」
「みんな、楽しそうな話してるね」
「あ、ヘルン、フィオナ、おかえり」
いい事を思いついた!
「そんなにお互いの魔法が気になるなら、魔法披露会でもしようか」
「一人一人が自分の中で最上級の魔法を練習して、披露するんだ」
「ちょうどフィオナにも力を与えたところだしね」
「いいね!」
「お姉ちゃん達には負けないんだから!」
「元悪魔王を舐めるなよ?」
「よし、じゃあ明日開催だ!」
「え、早くない?」
ハネストが少し不満げに言った。
「明日から任務が立て続けに入ってるんだ...」
「あ、なんかごめん」
翌日、フィオナ、ヘレナ、ハネスト、フィリアの順で魔法を披露することとなった。
「僕が用意した、力を吸収出来る水晶に向かって魔法を打ってね」
「小さく見えるかもしれないけど、放たれた力は全て吸収できるくらいの高性能なものだから、全力をぶつけていいよ」
「じゃあ、最初はフィオナ、まだ僕の魔力に慣れないかもしれないけど、出来るだけでいいからね」
「うん、頑張ってみる」
フィオナの丁度半分くらいの大きさの水晶に、フィオナは遠くからゆっくりと手をかざした。
「アクアプリズン」
最上級魔法、その中でも上位のアクアプリズンを使えるのか。
期待以上だ。
一瞬にして、フィオナの目の前に数十人は入ることの出来る大きさの領域が構築された。
そして、領域内で鋭い水の刃が降り注いだ。
威力も、展開スピードも、申し分ない。
やはり、レベルが高いな。
魔法を終わらせると、フィオナは少しよろけながら戻ってきた。
「どうだった?」
「凄かったよ!フィオナ」
「予想以上だ!」
「良かった...」
フィオナはそのまま寝てしまった。
「私がベッドまで運んでくる」
そう言い、フィリアがフィオナを担いで家まで歩いていった。
程なくしてフィリアが戻ってきたので、早速ヘレナに披露を促した。
「私は全属性それなりに使えるけど、みんな使ってないみたいだし、炎魔法を使うね」
フィリアの顔が少しピクっとした。
元悪魔だもんね...そりゃ怖いだろうな...
「じゃあ行きます!」
「ヘルフレイム!」
元気よく詠唱したその魔法は、僕が初めて悪魔と対峙した時に使った魔法だ。
懐かしいな。
ヘレナは、相変わらずのとてつもない早さの展開スピードで、昔の僕程度の威力のヘルフレイムを僕らに見せた。
「どうだった!?お兄ちゃん!」
「うん、大分成長してるみたいだね」
「昔の僕と同等の威力が出ているし、何より展開スピードが早い」
「これからも修行していけば、もっと早く、強いものに出来るはずだから、頑張ってね」
「はい!師匠!」
師匠...
なんだか吹き出してしまった。
「じゃあ、次はハネストだ」
「リハビリは結構前に終わったし、よく魔法の練習をしていると聞いてるからね」
「楽しみだよ」
「もう!そんなにプレッシャーかけないでよ!」
そう言いながらも、ハネストの目には闘志が宿っていた。
そんなに必死なんだ...
また少し吹き出してしまった。
「行くよ!」
「アイスナイト!」
ハネストがそう叫ぶと、ハネストの後ろに氷で出来た巨大な騎士が現れた。
大きさもそうだが、隙の無さや絶対的なオーラから、その騎士の強さは瞬時に分かった。
冷徹に見えるその態度には、主を守ることしか考えていないようだった。
その騎士は、水晶に魔法で出来た斧で重い一撃を与えると、僕らの前から姿を消した。
「ハネスト、今のは...」
その魔法は、僕も知らない魔法だった。
「なんか、森の中で魔法の練習してたら、急に体に衝撃が走って、気付いたらこの魔法であの騎士さんを召喚してたの」
加護系のものだろうか。
何にしろ、素晴らしい!
「凄いな、ハネストは」
お世辞でもなんでもない、純粋な心の声だった。
「ふふ、そーかなー」
「じゃあ最後にフィリアかな」
「それなのだが、少し頼みたいことがある」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
次話は、2025年10月19日18時に投稿します!
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