死神としての使命
僕の、使命...
この世界の守護神になること...
そんなのなれる訳ない。
「僕には、無理ですよ」
「前世では、自分のことすらまともに出来なかったのに」
「お前は生まれ変わったのではなかったのか?」
「それは...でも...」
「今はいいんだ、まだ時間はたくさんある」
「それに、守護神と言っても、することはそう難しくない」
「そうなんですか?」
「まあ、基本的にはな」
「ごく稀に異常な存在が生まれる」
ん?なにそれ聞いてない
「それを倒すのが、守護神最大の役目だ」
「だから、異常が発生しやすい世界や、重要性の高い世界は、戦闘能力の高い死神が守護神となる事が多い」
「この世界は、後者だな」
「そんな世界を僕が...」
「まだ信じられないだろうな」
「心配するな、訓練を終えて、立派な死神として認められないと、そもそも守護神にはなれない」
「なら、僕は訓練なんて受けたく、ない」
「それは難しい、我々は神王様に生かされてると言って過言では無い」
「神王様に背くのは、この世界から消えることと同義になり得る」
「今更何を言っても遅い」
「それに、お前には才能がある、必ず私を超える死神となるだろう」
「師匠は、ずっと一緒に、居てくれますか」
「そんなことはどうでもいいだろう」
「だめです!僕は師匠とずっと一緒に居たい」
師匠は不思議そうな顔をしていたが、僕は真剣だった。
もう、何も失いたくなかった。
「ふふ、分かった」
師匠は微笑みながら言った。
「お前が死にたくなるまで一緒に居てやろう」
「まあ、死ねんがな」
「師匠、僕、頑張ります!」
「あぁ、精々頑張れ」
「おら、もっと火力を上げろぉ!」
「まだ出せるだろう!気を抜くな!」
僕は今、魔力の最大出力向上と、魔力の蓄積限界量の底上げをするために、永遠に手から炎を出す訓練をしている。
一度始めたら、ぶっ倒れるまで炎を出し続ける。
これが地獄らしい。
でも、毎日少しずつ、炎を出せる時間と火力が伸びていく。それが楽しくて、嬉しくて、その地獄の毎日は、そんなにしんどくない。
いや、むしろ、めちゃくちゃ楽しい!
「言い忘れていたが、」
師匠、言い忘れ多いな...
「この訓練が終わることはないぞ」
ん?何か聞こえた気がする。聞き間違いかな。
「なんて言いました?」
「だから、この訓練が終わることはない」
「私でもたまにやっているからな」
「ただ、魔力を使い切るまでやるのは、今だけだ」
「そうなんですか...」
こ、これを毎日...
まあ、魔力を使い切らなくて良いだけマシかな。
そう思おう。
「さ、じゃあ今日は、魔力回復の効率化の訓練について教える」
「よろしくお願いします!」
「まず、魔力回復とは、その名の通り、自分で生成する魔力の事だ」
「死神は生気を魔力に変換して栄養にすると言ったが、自分でも魔力を生成出来る」
「凄いんですね」
「いや、全ての生き物が出来ることだ」
「だが、死神は魔力を動力として動く」
「ゆえに、魔力回復をより強化しなければならない」
「でないと、魔法を使ったらすぐに倒れてしまう」
「なるほどです」
「しかし、お前は元人間だ、自分の魔力生成に干渉することは出来ん」
「あれは生まれ持ってのものだからな」
「え、じゃあどうするんですか」
「自然から魔力を吸い取る」
「実は、自然には多くの魔力があってな、草木はもちろん、風にすら魔力が流れている」
「それを感じられるようになれば、それを吸い取れるようになる」
「ちなみに、それを出来る死神は意外と少ない、それを出来るか出来ないかで死神の格が大分変わる」
「なるほど、じゃあ、とりあえず、自然の魔力を感じるところからですか?」
「分かってきたじゃないか、自分の魔力を見つける時とそう変わらん、一度自分でやってみろ」
「分かりました、やってみます」
「外でやった方がいいだろうな」
草の生えた暖かい地面の上にゆっくりと座る。
懐かしな。ここに来て、既に数週間が経った。今でも、師匠と会った時の感動は鮮明に脳裏に刻まれている。師匠の役に立つことが、今の僕の目標だ。
さ、早く始めよう。
前回は、心を真っ暗にして、魔力を見つけた。今回は、周りに何も無いようにイメージしよう。
木も、草も、土も、風も、空気も、何も無い。
それはまるで宇宙のように。
「なかなか、難しいな」
「だろうな、今までが早すぎたんだ」
「魔力回復、お前の場合魔力吸収は、まだ必須では無い」
「ゆっくりと習得すればいい」
「私がついている、いくら倒れても、私が家まで担いでやる」
「そうですね、諦めずに頑張ります」
師匠の言いたいことは分かるけど、やっぱりちょっと残念だった。
「あぁ、その調子だ」
「それよりも、魔法を大量に覚えろ」
「基本的には私がついているが、やはり護身法を持っておかなければならん」
「まだ使えない魔法でも、しっかり覚えておけ」
「詳しくはこの本に書いてある」
そう言うと、師匠は、片手では掴めない厚さの、豪華で古そうな本を渡してくれた。
「え、これ、全部ではないですよね」
「もちろん」
「よかった...」
「全部だぞ」
「...え」
師匠と出会ってから、数ヶ月が過ぎた。魔力の出力の大きさや、消費効率、蓄積限界量など、死神としての基礎は、師匠も一応認めてくれるくらいには成長した。
だが、やはり、自然の魔力の吸収は、未だ出来ずにいる。これが出来る死神と出来ない死神で格が大きく変わるということを、改めて実感している。
「ヘルン、今日は家を空ける、留守を頼むぞ」
「何をしに行くんですか?」
「神王様に呼ばれていてな」
「えぇ、師匠何したんですか?」
「私が問題を起こすわけないだろ」
「私は上位の階級の死神だからな」
「こうしてたまに神王様に呼び出されるのだ」
「なるほど、やっぱり師匠は凄いんですね」
「はは、そうだろうそうだろう」
師匠は、この一年で随分自分の性格を見せてくれるようになった。最初に会った時の厳格な雰囲気とは違って、少し荒っぽくなったように感じる。
でも、心の奥底に感じる優しさは、今も変わっていない。
「では、行ってくる」
師匠は、普段は着ない特別な正装を着ていた。
「はい、待ってますね」
「あぁ、留守を頼むよ」
「お任せください!」
そうして、師匠の居ない、初めての異世界生活が始まった。
一日だけだけど。
息巻いたはいいものの、修行以外にすることなどほとんど無かった。
倒れるぎりぎりまで魔法を使った後、適当にご飯を食べて、ちょうどいいので家の掃除を始めた。
師匠、意外と掃除苦手だからなぁ。
今のうちにやっておこう。
とは言いつつ、家はそこまで広くないので、すぐに終わってしまった。
「暇だなー」
椅子に座ってゆっくりしていた時、突如として、大きな衝撃音とともに家が揺れた。
何事だ!?
ドアを開けて外を見ると、一人の男が、目の前に立っていた。
男の後ろの地面がえぐれている。
男の背中からは、黒い翼が生えていた。
師匠から聞いたことがある。神王と対立する存在。世界の破滅を望む者。
悪魔。
「ど、どなたですか?」
「あら、まだ人がいたのですね」
「まさか彼女に同居人がいたとは」
「彼女の情報を盗むのが目的でしたが、この子を利用するのもありですね」
「君、私に協力するか、死ぬか、選びなさい」
え...終わった...
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