ヘレナはうちの子です!
神王就任式以降、特に何事もなく死神としての業務に当たっていた。
少し時間のかかる任務を終え、昨日は夜遅くにベッドに入った。
一階に降りると、いつも通り賑やかで、いつも通り平和だった。
「おはよう」
「あ、おはよう!ヘルン!」
「お兄ちゃんおはよー」
「昨日は遅かったようだな、ヘルン」
「あぁ、うん、簡単な任務だったんだけど、数が多くて」
「異常というのはそうも沢山生まれるものなのか?」
「いや、バシレイアだけならそんなことはないんだけど」
「今神族は絶望的な程に人手不足で、みんな色んな世界を飛び回って仕事してるんだ」
「なるほどな、神族も大変だな」
「まあね」
「世界を越えるのってどんな気持ちなの?」
「ん〜、世界によって結構色々環境って変わるから、その差に慣れるのに気力を使うかな」
「バシレイアは神の世界と言われるくらい神族との関係が深くて、環境とかも気が使われてるからね」
「ここまで整った世界はなかなか無い」
「そうなんだ、私は幸運だったんだね」
「そうかもしれないね」
「まあ、今日は特に任務は無いよ」
「なら、お兄ちゃんに魔法見てもらいたいなぁ」
「お、いいよ、ついでに二人の魔法もどうなってるか見たいし」
「今日は全員魔法訓練だ!」
「おー!」
「じゃあ、私先に練習しとくね!お兄ちゃん達はゆっくり来てよ!」
「分かったよ」
「ヘレナももう完全にヘルンの弟ね」
「はは、僕たちはみんなもう家族だよ」
「まあそれもそうか」
ヘレナに言われた通り少し雑談していると、突然外からヘレナのものと思われる叫び声が聞こえた。
成長した僕は、叫び声が終わる頃には外に出ていた。
瞬間移動からのピントのズレを直すと、そこに広がる景色に心の奥から燃え上がった。
数十体の上級悪魔と見られる者達が、ヘレナを連れ去ろうとしていた。
「あなた達!また来たの!」
「お嬢様は返して貰うぞ!」
これが、ヘレナが元々身を置いていた貴族の奴らか。
ヘレナを見ると、怖がった目で今にも助けてくれと叫びそうな顔をしていた。
デスサイズを出し、今にも悪魔に鉄槌を下そうとした時、後ろからフィリアの響き渡る声が聞こえた。
「お前ら!その子を離せ!」
悪魔達は一瞬固まり、フィリアの方を見た。
「悪魔王様!?」
「神との戦いで戦死なさったのでは!?」
「そうだ!その神が今お前達の前にいるこのヘルンだ」
「え」
「こやつは上級悪魔も多数居た九万の軍隊を一撃で滅ぼし、私さえも倒して蘇生させるようなやつだ」
「お前達が何人居ても勝てる相手では無い!」
「分かったらさっさとその子を離して立ち去れ!」
「そ、そういう訳には...」
「ちなみに、私もヘルンの下についているぞ」
「お前らがこれ以上続けるなら、逃げる間もなく消すぞ」
「申し訳ございません!こ、今回は引いてやる!です...」
「何?殺してやっても良いんだよ」
「僕は非戦闘員の悪魔は殺らないと決めた」
「だけど、僕の周りの人に手を出すやつは殺す」
「死ぬか、もう来ないと誓うか、選べ」
「も、もう来ません!」
「良いだろう」
「最後に言っておく、ヘレナは僕の家族だ、そっちの上に伝えておけ」
「了解しました!」
リーダーらしき悪魔がそう叫ぶと、悪魔達は早々と帰って行った。
怒りに任せてデスサイズを出したため、体に疲労が溜まり、デスサイズを消すと意識が遠くなっていった。
目を覚ますと、薄暗くなった草原の上で、三つの顔が僕を覗き込んでいた。
「どういう状況?」
いや、悪魔と対峙していた時のお前が、いつもと違いすぎてな。
起きたらどちらになっているのか気になったのだ。
確かに、その間の記憶が薄い。
「デスサイズに乗っ取られてたんだ」
「悪魔達はどうなったの?」
「お前の言葉に怖気付いて逃げたわ!はは!」
「え、僕は一体何を...」
「お兄ちゃんかっこよかったよ!」
「まあ、いつものヘルンが1番だけどね」
「なんかあの時は、この世の支配者って感じだった」
「まあ、そう言ってもいい存在ではあるしな」
「も、もうやめてよ...」
「おぉ、ここまでの変わりようだと、乗っ取られていたというのは本当のようだな」
「はぁ、とにかく、ヘレナが無事で良かった」
「助けてくれてありがとう!お兄ちゃん!」
「いいんだよ、僕らは家族なんだから」
夕食を食べ終わり、一つの案をフィリアと検討したくなった。
「フィリア、ちょっと相談に乗ってくれる?」
「二人はもう寝るといいよ」
「わかった!おやすみ!」
「おやすみー」
「はい、おやすみ」
「ゆっくり休むんだぞ」
「それで、相談とはなんだ?」
「今回の出来事を踏まえて、一つ考えたことがあるんだ」
「おう、聞かせてみるといい」
「僕が悪魔を支配する」
「正確には、悪魔と神族の戦争を終わらせて、和解するんだ」
「なるほどな、しかしそんな事、どうやってやるつもりだ?」
「それを今考えてるんだ、フィリアからも助言が欲しい」
「なるほどな」
「まあ、手っ取り早いのは、魔神を倒すことだな」
「そうすれば、悪魔に残るのは先天的な身体的能力と丈夫な体だけだな」
「抵抗しようにも魔法が使えないとなっては神族には何も出来ん」
「なるほど、その案は有力候補だね」
「後は、数人居る悪魔王との和解だな」
「悪魔王と和解出来れば、大体その悪魔王の配下もそれに従う」
「んー、難しいな」
「とりあえず、長期目標を魔神討伐にして、悪魔王との接触の機会があれば、都度和解を試みることにするよ」
「まあ、それが良いだろうな」
「相談に乗ってくれてありがとう」
「やっぱり、相談するならフィリアだよ」
「よ、よすんだ、照れくさい」
「じゃあ、僕は少しハデス様の所に顔を出してくるよ」
「あぁ、分かった」
いつも通り受付をしてからハデス様の事務室へ向かうと、少し賑やかだった。
「失礼します、ヘルフェン・カリタスです」
ノックをして入ると、そこにはハデス様と、師匠が居た。
「師匠!?」
「おい!お母さんと呼べ!」
「あら、ヘルフェン君ではありませんか」
「相談があって参りました」
「おいヘルン、お前、ハデス様の所にはよく顔を出してるそうじゃないか」
「私の所にはあれから一度も来ていないというのに」
あ、やべ。
「ハデス様には、相談に乗ってもらっているだけですよ」
「それは私ではダメなのか?あ?」
「師匠は忙しいかと思いまして」
「忙しくても、お前か来るなら何日でも予定を開ける!」
「シュッツ君、それはちょっと...」
「なんですか?ハデス様」
師匠の目がギロッとハデス様の方を向いた。
「ひぇ...」
ハデス様、可哀想...
「分かりました、今度し、お母さんの家に行きますから」
「本当か?信じるからな?絶対に来るんだぞ!」
「はい、約束します」
「じゃあまあ、今回のことは許してやろう」
「ありがとうございます」
「ところでヘルフェン君、相談とは?」
「あ、はい、一つ決めたことがありまして」
「それをお伝えしようかと」
「なるほど、聞かせてください」
「僕、悪魔を支配して、悪魔と神族を和解させます」
「え」
「え」
「聞こえませんでした?」
「悪魔と神族をわか」
「いや、聞こえはしたんだが」
「ヘルン、それは本気か?」
「もちろんです」
「なるほどな...」
師匠とハデス様は、少し考えた後、口を開いた。
「まあ、良いんじゃないか」
「はい、出来るなら、良いと思いますよ」
え?そんなにすんなりと了解する感じなの...?
次話は、2025年10月5日に投稿します!
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