ヘレナの居場所
神王就任式が終わり、家の前まで帰ると、何やら家の中が騒がしかった。
不思議に思いながらドアを開けると、ハネストとヘレナが思いっきり飛び込んできた。
「わぁぁ」
びっくりして情けない声が出てしまうと、それを見ていたフィリアが大笑いした。
「二人とも、どうしたの?」
「え、だって今日は神王就任式だったんでしょ?」
「まあそうだけど」
「なら、いっぱいお祝いしなきゃ!」
「そうだよ、ハネストお姉ちゃんとフィリアお姉ちゃんとで、ケーキも作ったんだよ!」
「なるほど、そういう事か」
「みんな、ありがとね」
「じゃ、ケーキみんなで食べようか」
そーしよー、とまるで双子のようにハネストとヘレナが声を上げ、みんなで大きなケーキの乗った食卓を囲んだ。
「こんな大きなケーキ、作るの大変だったんじゃない?」
「まあ、大変といえば大変だけど、そうでもなかったかな」
「フィリアの身長が高くて助かったよ」
「そうだろうそうだろう!」
得意気に喜ぶフィリアには、もはや悪魔王を思わせるものは何一つ残っていなかった。
「それに、ヘレナも器用で、飾り付けとか、ホイップとかはヘレナがやってくれたの」
「そうか、凄いね、ヘレナ」
「へへ〜」
「ハネストお姉ちゃんも、ケーキ冷やすの凄かったの」
「ちょっとヘレナ!恥ずかしいからやめてよ〜」
そんな、笑いで包まれるお祝い会は、ハネストとヘレナがお腹いっぱいになって寝た事で幕を閉じた。
二人をベットまで運び、再び食卓に戻ると、フィリアがワインを片手に思いにふけっていた。
「大丈夫?フィリア」
「ん?あぁ、問題ない、少し昔のことを思い出していただけだ」
「昔のこと?」
「あぁ、私にも親友が居た頃のな」
「その親友は、神魔戦争で死んだよ」
「もうあんな時間は来ないと思っていたが、まさか人間と共に仲良く卓を囲む日が来るとはな」
「おっと、少し語りすぎてしまったな」
「要するに、今が幸せってことだ」
「それならいいけど、話したいことがあったらいつでも話してね」
「自分だけで考え込まずに」
「今は仲間がいるんだから」
「お前、よくそんなクサい事を平然と」
「ふふ、まあいいだろう、何かあればその時は話すよ」
「うん」
「あ、そういえば、フィリアに聞きたいことがあるんだ」
「ほう、なんだ?」
「ヘレナの素性について」
「なるほど」
「ヘレナは、フィリアと同じ、僕が殺した元悪魔だ」
「だろうな、そんな気はしていた」
「そして、一回、悪魔じゃなくなってからも悪魔に攫われかけた」
「ほう」
「多分、ヘレナの魔物と対話する能力を手に入れるためだと思う」
「あぁ、そういえば、悪魔王時代に聞いたことがある」
「たしか、貴族のお嬢様に、魔物と対話する力を持つものが居ると」
「貴族?」
「あぁ、悪魔にも、代々強い悪魔を排出する名家がいくつかあるんだ」
「じゃあ、ヘレナはもしかしたら、悪魔の名家のお嬢様かもしれないと?」
「珍しい能力だからな、可能性は非常に高い」
「なるほどな...そりゃ、上級悪魔が迎えに来るわけだ」
「となると、これからも悪魔が来る可能性があると?」
「可能性としては大いにあるだろう」
「ただし、お前を倒してヘレナを奪還するなど不可能に近いだろうがな」
「それに、悪魔軍最上位に位置していた私も居るしな」
「その可能性は無いと言っていいだろう」
「しかし、お前も私も居ない時を狙われれば、どうなるかは分からん」
「ハネストだけでヘレナを守るには限界がある」
「前にも来て失敗したのなら、今度はより高い戦力で来るだろうからな」
「そうだね、やっぱり、家の中に居れば安全というのを作りたいよね」
「どうしたものか...」
「お前も国を作ってはどうだ?」
「国?」
「ほら、ハデス様もいくつかの世界を束ね、国を作っているだろう?」
「まあ」
「もうお前も神王なのだ、バシレイアだけの守護神というのも無理があるだろう」
「数世界を束ねる神に、悪魔も迂闊に手を出しにくい」
「なるほどな、良いかもしれない」
「少し考えてみるよ、相談に乗ってくれてありがとう、フィリア」
「あぁ、ゆっくり考えるといい」
「おやすみ、フィリア」
「おう、おやすみ」
次の日、僕はハデス宮殿へ来ていた。
「ハデス様との面談予約がしたくて」
「最近よく来られますね、ふふ」
「はい、まあ」
受付嬢に笑われて、少し恥ずかしかった。
いつも通りハデス様の事務室に入ると、ハデス様が嬉しそうに紅茶とお菓子を出してくれた。
「最近よく来てくれますね!ヘルフェン君」
「これは、お友達になれたということで良いのでしょうか!」
「はい、僕達は元から、同族であり、仲間であり、戦友です」
「おぉ!私は今大変嬉しいのですよ!」
見てれば分かります...
それにしても、やはりこんな大きな宮殿に一人というのも寂しいだろうな。
ちょくちょく顔を見せることにしよう。
「それはそうと、私にお話とは?」
「はい、実は僕、バシレイアを中心に、数世界を束ねた国を作ろうと思いまして」
「なるほどなるほど」
「それについて、ハデス様に助言を頂きたく思い」
「そうですね、ヘルフェン君も神王ですからね、国を作ることは当然と言えば当然でしょう」
「助言ですか...強いてあるとすれば、守りきれない数の世界を国に入れないことですかね」
「一つの世界でも奪われれば、国としての格が落ちます」
「そうすれば、一気に叩かれ、最悪全ての世界が滅びます」
「なるほど」
「では、とりあえず、現在守護神が居ない世界を、僕が引き受けたいと思います」
「まだまだ先の話ですけどね」
「そうですね、それが良いでしょう、そうして頂けると、人手不足のこちらとしても助かります」
「相談に乗って頂き、ありがとうございました」
「いえいえ、私たちは友ですからねっ」
「ではまた」
「はい、お待ちしています」
家へ帰り、ハデス様との会話の内容をみんなに簡単に話した。
「ヘルンが数世界の頂点に...」
「やっぱりヘルフェン様の方が良いのかな」
「ハネストは何を馬鹿なことを言ってるの」
「君たちは今まで通りで良い」
「じゃないと、僕が落ち着かない」
「うん、分かった!」
「その国の中心は、この世界、バシレイアだから、拠点はこの世界になる」
「だから、みんなは世界を移動する必要は無いよ」
「な、なるほどぉ、分からない...」
「まあ、特に変わったことをする必要は無いってことだよ」
「なるほどね!」
「まあ、私は守護神防衛隊だからね!ヘルンが目指す道は我が道と同じなり!!」
「ヘレナも付いて行く!」
「私も行ってやっても構わん」
「うん、ありがとう」
「でも、みんなに何かあってはいけないからね」
「僕もこの家をあまり離れるつもりは無いし、バシレイアには僕の師匠もいる」
「この世界が一番安全だよ」
「そういえば、ヘルンの師匠ってどんな人なの?」
「ん?とても良い人だよ」
「シュッツ・カリタスって言う人でね、人前では厳格な面持ちを頑張って作ってるらしいけど、普段は結構賑やかな人で、優しくて」
「シュッツ・カリタスって...慈愛の女神の?」
「え、あ、うん、知ってるの?」
「知ってるも何も、めちゃくちゃ有名な神様じゃない」
「そうなのか...凄いのは知ってたけど、人間にそこまで広まっているとは...」
「シュッツ様がこの世界に居るの!?」
「あぁ、うん、数年前からね」
「えぇぇぇえ!」
師匠の謙虚さにはつくづく驚かされる...
次話は、一応2025年10月5日に投稿します!(恐らく水曜か木曜には出します)
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