古き仲間と新たな友
開こうとする瞼の隙間から、鋭い日差しが目を刺した。
周りには壊れた建物の残骸が広がり、人影を思わせるものなどなにもなかった。
一人はいつぶりだろう。
そういえば、神王化はどうなった!?
体に異変はない。変な感覚もない。
デスサイズを出してみよう。
「デスサイズ」
そういつも通り唱えて出てきたデスサイズは、知っているものでは無かった。
デスサイズの周りに漂っている黒い魔力の濃さが全く違う。
飲み込まれそうになるような無限の漆黒に、僕はしばらく魅入られた。
その時、一枚の白い羽が、目の前でひらひらと舞った。
崩壊して間もない都市に鳥が居るはずがない。
不思議に思っていると、ふと、背中に重みと温かみを感じた。
まさか...
僕の背中には、二枚の大きな翼が生えていた。
真っ白で艶やかなその翼は、死神に生えるべきで無いもののように思えた。
これが神王化...
意識がハッキリとしてきたので、バシレイアに戻ることにした。
本当は今すぐにでもハネストを蘇生させたかったが、別世界で人間であるハネストを蘇生させると、バシレイアに戻せなくなる可能性があるから、我慢した。
ヘレナも心配してるだろうし、早く帰らないと!
次元世界を通り、バシレイアに戻ると、バシレイアの大地から放たれる神族の魔力の濃度が上がっていた。
守護神が決められた世界の大地からは、悪魔の侵入の妨害や、能力を低下させる効果を持つ神族の魔力が放たれるのだ。
そして、その魔力の濃度は、その世界の守護神の強さによって決まる。
僕は神王化を通じて、莫大な力を手に入れたようだ。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
早く帰りたい一心で、僕は無意識のうちに転移魔法でヘレナの待つ家に転移していた。
ドアを優しく叩き、中に入ると、ヘレナが飛びついてきた。
「遅いよ!お兄ちゃん!」
「ごめんね、色々あって」
「怪我してない!?」
「大丈夫だよ、僕はヘレナが居る限り、絶対に死なない」
まあ、怪我なら一瞬で治るから無いだけなんだけどね。
「ヘレナ、大事な報告がある」
「ん?どうしたの?」
「ハネストのことは覚えてるよね?」
「もちろん、もしかして、会えるの!?」
「まだ確実じゃない」
「けど、今から僕が生き返らせる」
「本当に!?」
「うん、今回の戦闘で神王化条件を達成したからね」
「生命の蘇生が出来るようになったはずだ」
蘇生の魔法については、文献も何も読んだことはないが、鮮明に脳内に刻まれていた。
出来る気がする。
何が起こるか分からない、外でやろう。
収納魔法からハネストを出し、草原の上にそっと降ろした。
ゆっくりとハネストに両手をかざし、詠唱する。
「ソテイラ」
メネシスの数倍の魔力消費...
これが、生命に干渉する、神王にしか許されない魔法。
「眩しい!」
ヘレナは光の強さに耐えられずに、手で目を覆った。
ハネストの体と魂を結び付ける。
魔法は滞りなく発動された。つまり、ハネストの魂はまだ体に残っていた。
後は、魔法を完成させるだけ。
急激な魔力消費と魔力吸収により、意識が飛びそうになる。
あと少し、あと少しで、また、ハネストに...
残った魔力は、僕を死神として生きさせる限界の量だった。
体力的にも、もう魔力吸収は出来ない。
地面に倒れかけたその時、僕の手に、温かいものが乗った。
それは、数年ぶりに見る、ハネストの手だった。
「ハネスト!」
大粒の涙が目から溢れ出る。嬉しい涙。暖かい涙。
よかった。本当によかった...
「ヘルン、そんなに泣かないで」
「ずっと待ってた、ヘルンと会えるのを」
「なんでだろうね、出会ってそんなに経ってないのに」
「本当にずっと待ってたんだからね」
「遅いよ、ヘルン」
「ごめん、ごめん」
「これからは守るから」
「幸せにしてみせるから」
「そこまでしなくてもいいよ、私がヘルンと一緒に居ることを選んだんだから」
「わかった、僕らは死ぬまで、いや、死んでもずっと一緒だ」
「うん、約束だよ」
「あー、体が動かないなぁ」
「完全回復には、多少時間がかかるから」
「ゆっくり動かしていこう」
「なるほどね」
「ハネストお姉ちゃん!」
「ん?え、ヘレナ!?」
「大きくなったね」
「ハネストお姉ちゃんが頑張ってくれたから、魔物さんを呼ぶ時間が出来たの」
「本当にありがとう!」
「ならよかった」
「お兄ちゃんを一人にしないでくれてありがとうね」
「ヘルンは寂しがり屋だから」
「僕をなんだと思ってるのさ」
「へへ」
「僕はちょっと休むよ」
「ハネストも休んだ方が良い」
「えー、せっかく起きたのにまた寝るの?」
「ゆっくり寝て、起きたら、一緒にまた旅に出よう」
「分かったよ...」
丸一日近く寝たようで、起きたのは昼だった。
体力、魔力ともに全回復し、あんな魔法を使ったのにも関わらず、僕の周りに異変はなかった。
唯一変わったことは、起きたら、ヘレナとハネストの二人が待ってていてくれたことだった。
久しぶりの三人、それは僕にとって、幸せを具現化したものだった。
「おはよう、ヘルン」
「おはようお兄ちゃん」
「おはよう、ヘレナ、ハネスト」
「大分体が慣れてきたみたいだね」
「うん、まだ走ったりするのは厳しいけどね」
「後は時間の問題だね」
「僕はやらなくちゃいけないことがあるから、家で待っててね」
「やらなくちゃいけないこと?」
「うん、もう一人、蘇生しなくちゃいけない人がいるんだ」
「え?」
また草原の上で蘇生魔法を発動する。
「ソテイラ」
二回目なのもあり、即座に倒れそうになることはなかったが、普通にとんでもなく疲れた。
今度は、僕は、蘇生した人に体を支えられた。
そう、僕は、元悪魔王フィリアを生き返らせた。
「これはどういうことだ?」
「どういうこともなにも、僕があなたを蘇生させた」
「何故だ?私は別に生を望んでいないぞ」
「それは、退屈だから?」
「まあ、そうだな」
「なら問題ない、僕と一緒に来れば、絶対に退屈しない」
「ふふ、ははは、やっぱりお前は面白いな!」
「いいだろう、お前について行ってやる」
「退屈させたら許さないからな」
「あぁ、大丈夫だ」
「ていうか、ちょっと、眠い」
「お前は大人なのか子供なのか分からんやつだな」
「まさか私が人をベッドまで運ぶ日が来るとはな」
「そこの家には僕の、二人の仲間、いや、家族が居る」
「仲良くしてね」
「ほう、面白そうだな」
目が覚めると、一階のリビングが騒がしかった。
一階へ降りると、ハネストとヘレナが、フィリアと仲良く談笑していた。
「仲良くなったのは良いけど、二階にまで声が聞こえるよぉ」
「おぉ、起きたか」
「おはようヘルン」
「おはようお兄ちゃん」
起きる度に僕への呼び掛けの声が増えることに、僕は少し心が踊った。
「おはよう、みんな」
恒例の予定ガン無視早々投稿です!(もはや週の真ん中で小説を書かなくちゃと焦っている自分がいる...)
次の投稿は本当に2025年9月21日18時になると思います!
楽しんで貰えると嬉しいです!
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