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二度目の旅立ち

気持ちのいい陽光の差す朝、僕は冒険者協会に向かって歩いていた。

そう、アンドレイアさんに呼ばれたのだ。

はぁ、どうなるんだろう...

各国の軍隊に並ぶ戦闘力を持つ冒険者協会は、どの国でも大きな権力を持っており、目をつけられたら普通には生きられない。

まあ最悪、冒険者協会の本部の人に正体を明かすか。

色々想像しながら歩いていると、ハネストとばったり会った。

「お、ヘルンじゃん、体調悪そうだけど大丈夫?」

「あ、ハネスト」

「今、アンドレイアさんに呼ばれてて、冒険者協会に向かってるんだ」

「なるほどね、ついて行くよ」

「大丈夫だよ、ハネストも忙しいだろうし」

「それこそ大丈夫だよ、私はもうイレーネ国軍じゃないからね」

「ほぼ無職状態ってわけ」

「え、じゃあ、どうやって稼ぐの?」

「え、ヘルンに養ってもらう」

「え」

「まあ、貰おうと思えば、守護神教からお金は出るけど、旅をするとなると継続的な収入は見込めないかな」

「そもそも守護神が移動し続けることなんて普通ないからね」

「なるほど」

「守護神であるヘルンが声を掛ければほとんどの組織がお金を支援してくれるだろうけどね」

「それはしたくないな」

「報酬に貰うのはまだしも、僕は奉仕されるような人間じゃないし」

「まあ、人間ではないよね」

「そういう事じゃないよ...」

「とりあえず冒険者協会に行こう」

「アンドレイアさんを待たせる訳にはいかない」

「そうだね」


ハネストと話していると、冒険者協会にはすぐ着いた。

すると、協会の扉の前にアンドレイアさんが居た。

「おう、よく来たな」

「急に呼んですまなかった」

「いえ、大丈夫です」

「なんだ、ハネストも居るのか」

「それなら話が早い」

「ちょっとこっちに来てくれ」

そう言うと、彼は自室である会長室に僕らを案内してくれた。

「そこに座ってくれ」

「はい」

アンドレイアさんは、僕らを客用の数人用の椅子に座らせ、彼は机を挟んで向かい側の椅子に座った。

「話に入りたいところだが、まずは、今日呼び出しに応えてくれてありがとう」

「いえいえ」

「お前の事を冒険者協会本部に連絡したんだ」

「はい」

「そして、お前の処分が決まった」

「お前は、冒険者協会で保護する事になった」

「もちろん、本人が希望するならだが」

ありがたい話だ。冒険者協会が背後に居れば、動きやすい。

「そうして貰えるとありがたいです」

「分かった、上に伝えておく」

「ところで、お前、漆黒の救世主って呼ばれてないか?」

「え...」

なんでバレたんだ。誰かに見られてたのか。

「図星みたいだな」

「心配するな、密告者なんて居ない」

「俺はお前と戦ったからな」

「何となく分かっただけだ」

「なるほど...」

アンドレイアさんなら、良いかな。

「そこまで知っていられるなら、もうバラします」

「何をだ?」

「僕の本当の名前、ヘルンじゃありません」

「僕の名前は、ヘルフェン・カリタス、死神であり、この世界の守護神です」

「えぇぇえ!言っちゃうの!?」

アンドレイアさんも、ハネストも、目を見開いて驚いている。

「まじか、いや、本当ですか」

「はい」

「確かに、それならあの力も頷ける」

「この事を冒険者協会本部に伝えるのも、隠すのも、アンドレイアさんの自由です」

「ただ、一つだけ」

「僕が取る行動は、常に、この世界を想っています」

「分かりました」

「イレーネ冒険者協会会長、アンドレイアは、守護神様のお心のままに」

「ありがとうございます」

「では、そろそろ失礼します」

「出口まで送らせて頂きます」

「あ、後、ハネストにも言いましたが、僕にはタメ口で構いません」

「アンドレイアさんは、僕が何者であっても僕の恩人です」

「分かった」

アンドレイアさんに見送ってもらい、街に出た。

そういえば、さっきからハネストが黙っている。

顔を見ると、なんだか寂しそうだった。

「ハネスト、どうかしたの?」

「いや、もうすぐこの国を離れるんだなって思って」

「残ってもいいんだよ?」

「いや、行くよ、私」

「それが私の役目だもん」

「じゃあ、最後に良い事して行こうか」

「何するの?」

「パトロールだよ」


パトロールと称されたイレーネ観光。

ハネストにもう一回イレーネを回ってもらいたかった。

それに、僕もまだイレーネを回りきれていなかったので、都合が良かった。

屋台で食べ物を買ったり、お店に入ったり、僕らはイレーネを満喫した。

「ヘルン、これ、パトロールなの?」

「楽しければいいんじゃない?」

「確かにね!」

楽しい時間は、すぐに過ぎるものだ。

いつの間にか日は沈みかけ、夜が僕らを包み込もうとしていた。

「ヘルン」

普通に歩いていた時、急にハネストが口を開いた。

「今日はありがとう」

「私が寂しそうだったから、誘ってくれたんだよね」

「今日は、ほんっとうにに楽しかった」

「いいんだよ、僕もイレーネをちゃんと回ったこと無かったし、僕についてきてくれる為にここを出るんだから」

「ここを出るのは寂しいけど、私、ヘルンの役に立てるよう頑張るね」

「ありがたいけど、自分を第一に考えてね」

「わかった!」

「あ、ねえねえ、あのレストラン美味しいよ!」

「美味しそうだね、行こうか」

「うん!」


次の日の朝、僕らはイレーネ国の門を潜り、外に出た。

ハネストと一緒に出ては疑われてしまうので、ハネストに変装魔法を掛けた。

アンドレイアさんから貰った偽の身分証を持った彼女の正体は、もはや僕と冒険者協会の一部の人しか知らない。

「ばいばい!イレーネのみんな!」

彼女はそう元気を出すように小さく呟くと、僕に出発を促した。

「移動手段はどうする?」

「この世界の生態系とかも知りたいし、普通の馬車で行こう」

「分かった」

「どっちの方を向いていく?」

「左に行けばメガロス帝国、正面の方に行けばサスティナ王国、右に行けば君が来た森だね」

「サスティナ王国は、イレーネ王国が目をかけてる国だから、動きやすいかもね」

「メガロスの方は一回行ったし、サスティナ王国の方に行こうか」

「了解!」

「よし、じゃあ馬車を出すね」

「うん」

今回僕が創造した馬車は、至って普通のものだった。

「今回は普通だね」

「言ったでしょ、普通って」

「いや、ヘルンの普通は信用出来ないからさ」

え...ショック

「ま、まあ、行こう」

「ハネストって馬車の操縦出来る?」

「やり方は知ってるけど、得意じゃないというか、苦手というか...」

「何回も崖から落ちかけたというか...」

「うん、僕がするね」

「お願いします...」

馬と言っても、僕が創造した魔力で出来た馬なので、操縦するのは容易かった。

草原に囲まれた道を馬車でゆっくり通るのは、想像以上に気持ちの良いものだ。

あぁ、こんなのどかな生活が続けばいいな〜。

あ、これ、伏線みたいになっちゃった?

そう思ったのも束の間、道端に一人の少女が現れた。

その見た目には見覚えがあったが、それによって出来た思いは、驚きと面倒臭さだった。

はぁ、平和に過ごしたいだけなのにな...


お盆休みの終わりに従って、投稿時間を変更させて頂きます。

次話は、2025年8月27日18時に投稿します!

ご意見、ご感想、お待ちしております!

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