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戦場に咲く純白の薔薇【終】〜漆黒の救世主〜

地上の王、ミスリルゴーレム...

大きな岩に頭と手足をつけたような、ミスリルで出来た身体には、下手な攻撃は意味を持たない。

何を考えているかも分からず、襲われて耐えた場所は、国単位でも無い。

絶対的な力。

おもしろい。

異常を抑えるのは僕の守護神としての仕事だ。

でもそれよりも、僕は既にイレーネを気に入っている。

この国を潰させる訳には行かない。

ハネストや、アンドレイアさん、受付嬢の人、宿の人、この国に住む人達の居場所は僕が守る。

みんなの前で力を振るうのは、これが初めてだ。少し派手にやっとこうか。

「デスサイズ」


兵士達が必死に魔物を倒し、ゴーレムの足止めを測っている中、突如として戦場一面が暗くなり、黒い靄が立ちこめた。

「な、なんだこれは」

「新しい敵か!」

皆が動揺する中、空に広がる深い黒から一人の青年が降りてくる。

その青年は、黒く豪華なローブを纏い、右手に大きな鎌を持つ。

その青年は一言も話さずに、その大鎌をミスリルゴーレムに振るう。黒い雷と共に振るわれた大鎌は、ミスリルゴーレムの硬い体を一刀両断した。

これで、守護神としての力は認めてもらえるかな。

魔物もやってもいいけど、僕が全てをやってしまえば、人間の人達が弱くなってしまう。

人間の人達で対処可能なことは、なるべく任せるようにしよう。

負傷した兵士さんの救助と体力回復だけしてあげようかな。

「アナスタシス」

そう青年が唱えると、傷を負った者、身体の一部を失った者、その場に居た全ての人間の怪我と体力が回復した。

純白の戦姫、ハネスト隊長も、その例外ではなく、数分後には勇ましい彼女の声が戦場に鳴り響いた。

氷属性の魔法が付与された剣を持ち、戦場を駆け回る彼女は、まだ成人手前とは思えない剣技で魔物を次々断ち切った。その姿に、部下の兵士や、遠くから見ている国民でさえも勇気づけられた。

数刻の格闘の末、イレーネは魔物の大群の襲撃に打ち勝った。

その戦いでは、死傷者も、怪我人すらも出なかったという。

えぐれた草原しか残さなかった戦いにも見えるが、その日確かに、漆黒の救世主という名がイレーネの国に知れ渡ったのだった。


初登場は、こんなものかな。

結構格好良かったんじゃない!

黒い雷と共に目標を切り裂く、死神固有魔法デスボルト、初めてだったけど、成功してよかったぁ!

でもこれからどうしよう。式典より先にみんなの前に出ちゃったからなぁ。

怒られるかなぁ。

まだ一応ほとんどの人には僕がヘルフェンだとはバレてないけど、式典に行けば流石にバレるだろうし、多分ハネスト達イレーネ軍にはバレてるんだよな...

ローブは違えど、最初に会った時に変装し忘れてたし、普通に顔見られてるし。

気づいてないといいなぁ。

でも騙しとくのも違うよな...あんなに良くしてくれてるのに騙すのは守護神として如何なものか...

どうしたものか。

最後になるかもしれないし、街を歩きながら考えよう。

そう思い、今日も泊まった冒険者協会の宿を出ると、案の定というか、嫌な予感はしてたというか、ハネストが居た。

「お、おはよう!ゴザイマス」

「ヘ、ヘ、ヘルンサマ」

あー、これ絶対バレてる...

「おはようございます、ハネスト」

「気づいてるんですよね、僕の正体」

「えぇ...なんの事だか...」

「あぁ、やっぱり、気づいてないフリは無理かぁ...」

「イレーネ軍隊長ハネスト・アレキサンダー及びイレーネ軍全員、昨日の戦いの救世主については、何も知りません!」

「ハネスト...」

この気持ち、師匠に教えてもらったものに似ている。

心が暖かくなるのに、目に涙が浮かぶ。

懐かしさのような、嬉しさのような。

自分の居場所の美しさに感動する感じ。

「ありがとう」

僕は初めて、師匠以外の、人間に抱きついた。

前世では医療器具の関係上、母親にすら抱いてもらった覚えがない。

初めて触れる人間は、師匠とは少し違う、それでも心地よい暖かみだった。

「へ、ヘルン!?大丈夫!?なんで泣いてるの!?」

「大丈夫ですよ、これは嬉しい時に出る涙だから」

「僕ね、ハネストになら話しても良い気がします」

「僕のこと」

二人の周りに隠蔽魔法をかけた。

「これで他の人には聞こえない」

「ハネスト、僕、実は、守護神ヘルフェンなんです」

「...え?」

ハネストは目を丸くして驚いていた。

あれ?

「気づいてたんじゃなかったのですか?」

「え、いや、ただ、強い人だけど、それを隠したいのかなって思っただけだよ...」

「え...」

「え...」

「つ、つまり、ヘルンが守護神ヘルフェン様ってこと?」

「ですか?」

「まあ、そういうことになります」

「えぇぇぇえ!」

「え、どうしよう!守護神様にタメ口で話してたなんて!今までの無礼をお許し下さい!」

「いいんです、そのままで」

「僕はそのままのハネストが好きですよ」

「えぇ、わ、わかりました、あぁ、いや、わかったよ...」

「でも、流石にヘルンもタメ口にしてくれないかな」

「分かったよ」

「このことに関しては、まだ誰にも言わないで欲しい」

「もちろん緊急時はその時に一番の行動を取って欲しいけどね」

「わかった」

「それと、相談があるんだけどさ」

「うん」

「守護神の式典に出る時って、顔隠してても良いのかな」

「あぁ、うん、良いと思うよ、みんなもそうまじまじと見ることはしないだろうし」

「良かった...僕、普通の人間としてこの世界を回りたいんだよね」

「そうすることで、見ることが出来るこの世界の顔もあると思うから」

「なるほど...じゃあ私、一緒に行くよ」

「もちろん、ヘルンが良かったらだけど」

「え!?それは来てくれるに超したことは無いけど、軍隊はどうするの?」

「守護神様には、守護神防衛隊っていう、まあ秘書兼護衛みたいなのが付けられるんだけど、私もそれに推薦されてるの」

「本当は断る予定だったんだけど、守護神様がヘルンなら、なろうかなって」

「守護神防衛隊は、完全に守護神様の管轄だから、旅について行っても問題ないと思うよ」

「もしそうなるなら、本当に嬉しいよ」

「私も、ヘルンと一緒に居れるのは嬉しいよ」

「これからもよろしく、ハネスト」

「うん、よろしくね」


式典もすぐそこまで来てるけど、僕には気になることがもう一つあった。

あのミスリルゴーレム、頭の後ろに魔法陣が描かれていた。

つまり、誰かが召喚した可能性が高い。

あの規模のミスリルゴーレムを召喚できるとなれば、その人自体が“異常”なのかもしれない。

とにかく、これからは気を抜かずに来たる最悪に備えよう。


その晩、街の各地に張り紙がされた。

《イレーネに来た災難から人々を救うために降臨された救世主様、感謝を述べるため、イレーネ王室までお越し頂きますよう、よろしくお願いします》

あぁ、どうしようかなぁ。

とりあえず、式典の後にしようか、でも、あまり待たせるのも良くないかなぁ。

あー、どうしよう。

ん〜。

あ、でも、イレーネの国王に正体を言っておいた方が、後々動きやすいかな。

まだイレーネ周辺を回りたいし、イレーネはこの辺りの国では強い力を持ってるらしいから、助けを得られるかもしれない。

うん、行こう!

イレーネ王の城へ!


次話は、2025年8月24日12時に投稿します!

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