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 涼風が吹き抜ける小高い丘の上、眼前には立派な壁に囲われた大きな町。中央には城だろうか、立派な建築物も見える。通りには人も多く、活気や賑わいが満ちているようだ。

 ここが私が新たに生を受けた世界、記念すべき始まりの街だ。

 

 天命を授かり、ここに英雄譚が始まる――――ただし全裸だ。


 あの自称天使バカじゃねえの。


 しかし目がよく見える。さらには引き締まった筋肉質な肉体、おぼろげな記憶ではこんな体していなかった。この世界の人はこれが平均的なのだろうか、それとも戦うために飛び切りの肉体に作り替えてくれたのだろうか。

 後者なら多少は感謝してやろうか。そんなことを考つつ、これからどうしようかと悩みながら、仁王立ちでいると背後の森から気配を感じ振り返る。


 美少女だ。しまった、英雄譚が終わってしまった。


「天使様よりおつげを受け馳せ参じました」


 返答が出来ない俺に、シスター風の銀髪ショートの美少女が少し恥ずかしそうに小首をかしげる。カワイイ、この子こそ天使と呼ぶべき存在だろう。見蕩れていたらローブを手渡してくれた。この世界の説明、サポートを任されたらしい。

 歩きつつ説明を受ける、これから教会へむかうようだ。


 天使ちゃんは神の巫女という役職らしい。神から治癒の魔法を授かって産まれ、まれにおつげを受ける。そんな人間が一定数産まれ、教会のようなものに保護される。

 この世界、病院がないらしい。教会が、怪我も病気も手ごろな寄付金で治療してくれるとのこと。神や天使がいることが当たり前で、性善説もなりたっている世界らしい、便利だが馴染めるのか不安だ。


 丘から街道に入り城壁にたどりつく。

 大きな門があり兵が数人、エルフっぽいのと獣人もいる。

 ただ、エルフは耳が長い細めのおっさんで美形ではなかった。獣人は愛嬌のあるぽっちゃりとした猫耳女性で、顔はなんとなく猫顔なかんじのほぼ人間で猫のヒゲがある。かわいい。


 これくらいならすんなり世界に馴染めそうだ、そう思っているとゴブリンがいた。

 背は140cmあるかないかの緑色だがしっかりと武装し知的な顔、堂に入った立ち姿、すました顔で天使ちゃんに会釈していた。

 

 天使ちゃんも挨拶し街へ入っていく。ゴブリンさんは俺にも会釈してくれる、辺りの兵に指示を出すゴブリンさん。できるゴブリンリーダー感が出ていてちょっとかっこいい。


 天使ちゃんの後ろにつき街を進んでいく、人は結構多い。

 犬耳の男女、土色の2mもあろうかというゴブリンと並んで歩く武装した子供、いや、ホビットとかなのかもしれない。色々いる。

 獣人も多種多様ありそうだ、街に入ってからでも、犬、猫、熊、犬かと思っていても狼だったりするのかもしれない。

 ケンタウロスもいたりするんだろうか、もしいたら見てみたい、いや乗ってみたい。美女ケンタウロスに土下座して乗せてもらいたい。

 

 しょうもないことを考えていると教会に到着したようだ。結構遠かったが疲れはない、というか疲れる気配すらない、マジで戦うために作られた肉体なのかもしれない。

 

 教会は凄く立派な建物だった、というか最初に城かと思った建物だった。

 人も多い、一般人、騎士、神官、冒険者風の集団など色々いた。

 天使ちゃんは尊敬されているようだ、神が当たり前にいる世界、神の巫女なんて呼ばれ、万人を癒す美少女、そんな人間がいたらそりゃそうか。


 人通りから外れ、騎士が守る扉を通り、通路を進む。通路も騎士が巡回している、厳重な警備である。

 

「こちらへどうぞ」

 天使ちゃんに部屋へ通された


「ここは?」


「私が普段生活している部屋です。しばらくはこちらを拠点としてお使いください」


 やったぜ。いやいや、駄目でしょ。多分。

 あれだけ尊敬される神の巫女の部屋で暮らす、突然現れたどこの馬の骨とも知れない男、刺されるんじゃないだろうか。

 

 部屋を見てもベッドは一つ。

 部屋を見渡してみると机にイスに本棚、棚にタンスに姿見鏡、そして扉。

 扉の向こうにも居住空間があるのかな?それなら大丈夫か、いや、駄目だろ。


 本棚には本が結構ある、本が凄く貴重な世界ではなさそうかな、棚にはきれいなカップや立派な皿が見え、文化を感じる。

 街の通りもゴミが気になったりもなかったし、街並み自体にも清潔感があった、不安だったが快適に暮らせる世界なのかもしれない。

 姿見鏡も元の世界の鏡と変わらない映りだな、きれいに拭いてあるようで天使ちゃんの性格がうかがえる。

 

 入口近くにあるので鏡の正面になんとなく立つと、ローブ姿のイケメンが立っていた。

 

 自称天使から天使様に昇格してやろう。

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