6.
「…………」
皆は凛の方を見た。
「まず状況を整理したいんだけど、ここに来てからもう3日たつよね。それで…やっぱりここは元の世界とは別の世界なんだと思う。」
「でっでも、もしかしたら夢ってことも…」
「それはないんじゃないかな」
珍しい…波華にそういったのは千夏だ。
「この3日間で色々調べてみたんだけど、触覚、視覚、聴覚、嗅覚、どれも事故に会う前と変化は感じられなかった。それにね…」
千夏は右手の人差し指を立ててじっと見た。
不思議に思って見てると……
「!?」
「できちゃったんだよね」
そう言って困ったように笑う千夏の人差し指にはゆらゆらと小さな炎が浮かんでいた。嘘でしょ…千夏にはそんな超能力無いもの。こんなものを見てしまってはもう、認めるしか無くなる。ここは、あたしたちが元いた世界じゃなくて、あたしたちは勇者としてこの世界にやってきて、それで…
「じゃあ、やっぱりあたしたちは死んじゃったってことだよね」
「……そういうことになると思う。」
みんなの顔が曇る。改めてそう言われるとやっぱり思うところがある。この3日間泣いたのだろうか。それとも皆がいるからだろうか。凛は毅然とした態度で話を進めた。
「ここからが、みんなで考えたいことなんだけど、あのお姫様の言ってたこと覚えてる?元の世界に魂だけ戻るか、この世界で勇者として生きるか。……私は、この世界に残ろうと思う。」
「…っどうして?」
「ここが異世界で私たちは死んじゃったってことはもう認めないといけないと思う。だから私はせっかくなら異世界でも続きの人生を送りたい。でも、それは凄く危険なことだと思うから、みんなには強要しない。」
「そっか。凛の中ではもう決まってるんだね。」
「うん。」
そう言って苦笑する彼女は、何か後悔しているようにも見えた。
「私も、残ろうと思う。」
「わたしも」
浜菜と千夏が続く。
あたしは、どうしよう。
少し沈黙が続いてから優が話し出した。
「僕はさ、暴力とかは苦手だし、誰かを傷つけたくない。ここで勇者をするってことは、きっと戦ったりしないといけないんだと思う。だから、本当は元の世界に帰りたいって思ってた。でも、…っが残るなら、僕も残ろうと思う。」
ん?今完全に惚気けたよね?小さくて聞こえなかったけど、あいつ千夏が残るからって言ったよね。はいそこ、顔赤くしない!あぁ〜もう、ほんっとマイペースなんだから、、、
他の3人も残るらしい。
もうあたしの心は決まった。
「あたしもここに残る!勇者とか、魔法とか、よく分からないけど、危険なことも沢山あるだろうけど、みんなと一緒なんだもん。ここで帰るなんてもったいない!」
そう言って笑うと、みんなも笑い返してくれる。
凛は覚悟を決めた顔で言った。
「それじゃあ、みんな残るってことでいいかな?危険もあるかもしれない、平和じゃないかもしれない、それでも私たちはここで生きよう。今いる友を大切にしよう。」
その後あたしたちは自分たちの部屋に戻り、それぞれ明日の朝に向けて準備をすることにした。明日の朝会いたいことは、凛が伝えてくれるらしい。
「さてっと、あたしも準備するかな」
もうあたしは、後ろを向かない。この世界で生きていくと決めたから。でも、どうせならあたしの理想道理になったら良かったな、なんてね。
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