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96.これってとてもまずいんじゃ?

「あ、もう一つ。殿下。ヴァイゼ殿下とユーヴィン様は、一日遅れて入学なさったんですが……。何かご存じですか?」


「ああ、それか。ヴァイゼ王子は予定よりも一日到着が遅れたんだ。それで公務がずれ込んでね。入学が一日遅れたそうだ。ユーヴィンが遅れた理由は分からないな……」


「ユーヴィン様は前校長の紹介でヴァイゼ殿下の側近のようになっているそうですが……」


「一応、宰相も噛んでいたのか確認してみるよ」


 ふと見ると、ビアンカがとろんとしている。

 いけない。


「ごめんね、ビアンカ。本調子じゃないのに枕元でわいわいと。少し休んで?」


 頭――は、打ってるんだった。首も痛めてたはず。うん。

 私はそっとビアンカの腕を撫でた。

 ふにゃ、とビアンカが笑う。


「大丈夫です。でも、ちょっと眠いので……少し、眠りますね」


「ええ。ゆっくり休んで?」


 私はビアンカの頬にキスを落として、ベッドの脇を離れた。


「ビアンカ。私も父上のところへ行ってくるよ。直ぐに戻る。ゆっくり休んでくれ」


 ベッドに横たわるビアンカに少し覆いかぶさるようにして優しく囁いたアイザック殿下が、すっとビアンカに顔を寄せた。


「――殿下っ」


 一瞬間が空いて、ビアンカが真っ赤になって小さく抗議する。


 ……あー。

 背中に隠れて見えなかったけど。これは、やっぱりアレですか。

 張り合ったんですか? 張り合ったんですね?


 ははは、っと楽しそうにアイザック殿下が笑う。

 お子様の癖にやるな……。殿下。


 ちらっとフレッドを見上げると、バチっと目が合った。


 うわぁっ!


 もぉっ! 殿下のせいで変に意識しちゃうじゃないか!!


「……アイザック第一王子殿下。このことは父上に報告させて頂きますから」


 カシー兄様、お怒りです。笑顔が怖いです。なんかやばいオーラが出ている気がします。


「なっ。ヴェルハルトを出すのは卑怯だぞカシュオン! ビアンカは私の婚約者だ! 愛する婚約者にお休みのキスをして何が悪い!」


「殿下。カシュオン様。ビアンカお嬢様がお休みになれませんからその辺で……」


「むぅ……」

「すまん」


 小さく苦笑を浮かべ、フレッドが窘める。

 下唇を突き出して拗ねる殿下とぺこりとビアンカに頭を下げるカシー兄様。


 カシー兄様はアイザック殿下を押しのけて、さっきまで私が座っていたベッド脇の椅子へと腰を下ろし、ビアンカの手を取って優しくぽんぽんと手を叩いた。


「私は父上たちが戻るまでここにいるよ。ゆっくりお休み」


「はい。カシー兄様」


 ふにゃりと笑みを浮かべて頷いたビアンカから、すぐに寝息が聞こえ始める。


 私達は、そっと部屋を後にした。


***


「とりあえず、私は一度公爵邸に戻ります。ヴェロニカ様もお嬢様に連絡を取ろうとなさっているかもしれませんから」


「ええ、分かったわ。何かあったら使いをやって頂戴」


「畏まりました」


「私は、父上のところへ行ってくる。ヴェルハルト――ブランシェル公も恐らく父上のところだろうし、ストムバートも父上の所にいるはずだ」


「よろしくお願いいたします」


 部屋を出ると、扉を守る騎士の他に、騎士が二人と最初に案内してくれた女官が一人、扉の向こうで控えていた。

 案内の為に待っていてくれたみたい。


 アイザック殿下は騎士の一人を従えて去っていき、フレッドは一度私に騎士の礼を取ると、もう一人の騎士に案内されて王宮を後にし、私は女官に案内されて、用意して貰った部屋へと向かう。


 王族の私室のある区域の一角とか、恐れ多いんだけど、ビアンカのこともあるからと、陛下と王妃殿下が計らってくれたらしいから、ご厚意に甘えさせて貰う。


 侍女を一人つけてくれたから、湯浴みを手伝ってもらい、用意して貰った夜着に着替え、食事は部屋へと運んで貰った。

 お茶を淹れて貰ってから、侍女には下がって貰う。

 一人になってから、私はガウンを羽織って、机に向かった。


 机の上には、ペンもインクも便箋もシーリングワックスも揃っている。流石。


 羽ペンの先を、トントンと便箋に当てる。


 ビアンカを突き落とすように命じた人物は、何故そんなことをしたんだろう。

 アメリアは、ラヴィニアに命じられたって言っていた。

 ラヴィニアに命じたのは、ユーヴィン? それとも、まだ他に誰かいる?

 本当にラヴィニアはそんなことを命じたんだろうか。

 『あの方』については、ラヴィニアが知っているはず。

 ただでは済まないなんて、知らなきゃ出てこないだろう。

 となると、鍵はラヴィニアか。

 

 ここまで書き出して、ふと気づく。


 ラヴィニアは、何故クラスメイトに温室のことを話したんだろう?

 ユーヴィンがビアンカを誘ったのは想定外だったのかな?

 それとも別の意図があった?


 いや、待てよ?


 この状況、ラヴィニア、危ないんじゃない?


 しまった! フレッド、屋敷に帰しちゃった!!

いつもご拝読・いいね・ブクマ・誤字報告感謝感謝ですっ!

すっかり遅くなりました……。

暑くなったり寒くなったりで、気温差に身体が付いていけない今日この頃、皆様ご自愛くださいませ……。

昨日よりは幾分マシだけどまだ体調がイマイチな為、次の更新、早ければ明日の朝8時くらい、遅いと夜10時前後には投稿したい……っ! ちょっと予定は未定ってことでひとつ……。

すみませんっ><;

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