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75.変化しながら時は流れる。

 翌日から、私は学園に復帰した。

 ヴェロニカが言った通り、翌日には、既に学園中にアイザック王子と私の婚約が解消されたこと、私とフレッドが婚約したこと、フレッドが叙爵し、伯爵位を賜ったことが、知れ渡っていた。


 学園に着くなり、質問攻めにされてしまう。

 聞かれたら、一応正直に答えておいた。


 元々ビアンカとアイザックはお互い恋い慕っていたし、私はその二人の恋を応援していたと。

 私も殿下ではなく、幼い頃からずっと傍にいたフレッドを思慕していたと。


 女の子って恋バナ好きだよねー。

 何だか脚色されて、物凄くドラマチックな話になっているみたいだ。


 ビアンカは、随分と学園でのあたりが強くなったらしい。

 が、それも妃としての修行だと、ケロリと笑って見せていた。

 今のビアンカを見て、過去のビアンカを信じる人は居ないだろう。


 当然のことだが、賛否両論、私に対しての、否定的な意見も多かった。

 それがまかり通るなら、平民でも王族になれることになってしまう。

 殿下に対して不敬ではないか。

 王族を軽んじる行為だ。


 ご尤もだと思う。そこは反論は出来ないから、そうですねと頷いておいた。

 それでも、陛下は認めて下さったし、ビアンカは、本当に頑張ったと思っている。


 王妃教育を軽んじるようなことを言ってくる人には、講師をお招きして、疑似体験をして貰った。

 決して楽にできるものでは無いから、釘を刺す意味を込めて。

 

 ヴェロニカも、面白そうだから体験してみると参加した。

 きちんとビアンカも受けていることを証明するために、ビアンカも参加させた。


 山と積まれた参考書と、小さな事まで指摘を受けることで、食らいついてきたのはヴェロニカだけ。

 毎日やっているビアンカは、鬼気迫る勢いでこなしていく。

 私も久しぶりに受けて、身が引き締まる思いだった。めちゃくちゃきつい。

 それが当たり前になるのだと悟った者は、早々に脱落し、逃げ出していった。

 これで、ビアンカも少しは認めて貰えたんじゃないだろうか。

 


 先日の試験では、アイザック殿下もビアンカも、なんと学年十位以内に食い込んだ。


 一位はヴァイゼ殿下。二位が私。三位はヴェロニカ。そして、Aクラスのイグナーツと並び、アイザック殿下は七位。ビアンカも八位につけてきた。


 来年は、きっとAクラスに移動になるだろう。


 学園で、もう一つ変わったことと言えば、シャーリィの突撃が無くなったこと。

 アイザックにも、本当に偶然会った時だけ、嬉しそうに挨拶に来ていた。


 お昼休みに見かけたら、シャーリィは女の子たちに囲まれて、楽しそうに笑っていた。

 囲んでいる女の子たちは、目をキラッキラさせて、きゃっきゃきゃっきゃはしゃいでいる。

 何をしているのかと思いきや。


「それでそれで?!」

「どうなりましたの!?」


「一瞬油断をしてしまったヴァルター様を、敵は見逃さなかった! 『おりゃぁっ!』『しまったぁーっ!』。ヴァルター様の剣が宙を舞う!」


 シャーリィの白熱の演技。扇を手に、身振り手振り。剣を振るように両手で扇を掴み、振り下ろす。

 そしてすぐに、ぱぁんっと手を弾かれたように振って、指をひゅーんっと流して見せる。


「でも! そこに駆け付けたのは、アウラリーサ様! 剣を弾かれたヴァルター様の脇を、びゅんっと駆け抜けて! 『やぁぁ!』『うわあ!』、目にも止まらぬ早業で、アウラリーサ様は、男の剣を弾き飛ばし、えいっと男の喉を突く! 男はその場に倒れ伏した」


 がくり、と項垂れて見せるシャーリィ。すぐにぱっと顔を上げる。


「アウラリーサ様は、崩れる男を一瞥し、優雅に扇を広げたの」


 女生徒に囲まれて、シャーリィが、バサっと扇を広げ、口元を隠す。体を斜に構え、周囲の女生徒へと流し目をして、ぱさり、とストロベリーブロンドの髪を払い、フっとニヒルな笑みを浮かべた。


「『誰に、下がっていろと仰ったのかしら? ねぇ? ヴァルター様?』」

「「「きゃーっ!」」」


 ……私の黒歴史を広げていた。


 ちょっとあの時は、ハイになってたんだよ……。

 調子に乗りました、ごめんなさい。お願い忘れて。


 何故か学園内に女生徒の有志による私のファンクラブが出来たと聞いたときは、なんでじゃと思ったけれど、コイツのせいだった。

 女の子のお友達が出来たようで、何よりだ。ゥン……。





 あれから、リヒトと一緒にいるシャーリィを見かけることも増えた。

 まだまだマナーはてんでなっちゃいないが、以前ほど酷くはなくなったんじゃないかと思う。

 ヴェロニカは、ヴァイゼ殿下と二人で過ごすようになった。

 私は王妃教育から解放され、公爵家へと戻ってきた。

 ビアンカは王宮で、真面目に王妃教育を頑張っている。


 程なく叙爵の儀が行われ、フレッドは正式に、伯爵位を賜った。

 フレッドに与えられた名は、フレッド・リノ=シュヴァリエ伯爵。

 与えられた領地、ハーヴィストは、学園長だったクロムナード侯爵家が代々治めてきた土地だ。

 民の為、ハーヴィストを引き継ぐか検討されたけれど、新たにシュヴァリエ伯爵としてやり直すことになった。

 現在は国王陛下のお計らいで、国から派遣された政務官に領地の事を任せている。

 一年後を目途に、フレッドが領主として、領地を運営していくことになる。


 フレッドは、お父様に付いて、領地経営を学んでいるところ。

 私は、フレッドの力になれるように、ハーヴィスト領について学んでいる。

 残念ながら、このハーヴィスト領、元学園長が魔物の密売に加担するくらいだから、裏では悪いことも大分してきたみたいで、治安はあまりよくないみたい。

 これから良い街に変えていかないと。


 アイザック王子は、半年が過ぎるころには、ぐんっと背が伸びて、フレッドに追いつきそうな勢いだ。

 私も少し、背が伸びて、少しはフレッドに釣り合うようになったかな。


 私達の記憶から、謎のままの女の事は風化していき、そうして。


 後数日で、私達が二年に進級する日が、近づいていた。

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価、有難うございます!

次は夜、21時頃、投稿予定です。

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