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59.ネイド・シラーの転落。

 もどかしい気持ちを抑え、その日の授業が終わる。

 馬車の発着場に着くと、フレッドの姿が無く、公爵家の馬車が待っていて、公爵家の騎士の一人が駆け寄ってきた。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様。旦那様が、今日はお嬢様をお連れするようにと。……ネイド・シラーという少年を屋敷で保護しております」


 え、もう?!

 フレッドもうちの騎士達も優秀過ぎ!


「ありがとう、フレッドは屋敷に戻っているの?」

「ええ、戻って参りましたよ。かなり汚れてしまっていたので、代わりに私がお迎えに上がりました」


 汚れた? なんだろう。

 とりあえず、そう、と頷いて、アイザック王子とビアンカと共に馬車へと乗り込む。

 フローラとヴァルターも一緒だ。


 着替えを済ませ、お父様の所へ行くと、危ないことをとこっぴどく叱られてしまった。

 しょぼん。


 アイザック王子達の待つ応接間へ案内されると、フレッドもそこで待っていた。


「お嬢様」


「フレッド! ネイド・シラーを見つけてくれたんですって? フレッドは怪我とかしていない?」


 私が駆け寄ると、フレッドがふわりと笑みを浮かべる。


「はい。ネイド・シラーの事で、先に少しお話しておこうと思います」


***


 ネイド・シラーが馬で逃走したことで、学園周辺での目撃情報がかなりあったらしい。

 ネイド・シラーは、そのまま伯爵家に向かいかけ、途中で向きを変えて、学園から一キロほどの森の中へと逃げこんだらしい。

 冬になると、狩猟大会も行われる森だ。森の中には、幾つか狩猟小屋もあるから、そこに逃げ込んだのだろうと推測された。


 フレッド達が森へと向かうと、悲鳴が聞こえ、急いで駆け付けたところ、破落戸(ゴロツキ)のような男たちが複数名、小屋をこじ開けようとしていたらしい。


 破落戸は騎士団で捕縛し、現在屋敷の騎士団寮に捕らえているそうだ。

 ネイド・シラーもそのまま保護し、こちらも騎士団寮の別室で保護しているそうだ。


「とりあえず、案内致します。参りましょう」


***


 ネイド・シラーが保護されていた部屋は、武骨な雰囲気の質素な部屋だった。

 木製の古びたテーブルに簡素なベッド。

 部屋の中にトイレもあるが、外から鍵を掛けられるようになっているらしい。


 ネイド・シラーは泥だらけで、部屋の隅で膝を抱えて震えていた。


 アイザックが、口を開く。


「ネイド・シラーだな? 私はメルディア王国第一王子、アイザック・フェロー・ド・メルディアだ。話を聞かせて貰えるな?」


 ネイドはビクリと肩が跳ね、大げさな程にぶるぶると全身を震わせた。


「も……申し訳御座いません!! お許しください、申し訳ございません!!」


「謝罪を受けるかは、話を聞いてからだ。嘘偽りなく、正直に洗いざらい吐け」


 ネイド・シラーはつっかえつっかえ、震えながら、話し出した。


 ネイド・シラーは、厳しい家に育った。

 優秀だったこともあり、親の期待も大きかった。

 家では真面目に過ごしたが、その反動で、悪い仲間とつるんで、裏では万引きをしたり、平民に暴力をふるったりと、悪さをしていたらしい。

 魔物の見た目が好きだというネイドは、その悪い仲間に誘われて、魔物の違法取引に手をだしたのだそうだ。

 あの日、リベルタ商店の一本奥の路地にある建物の一室で、魔物を買い受ける手はずになっていたらしい。


 だが、取引が成立したと思った直後、一気に自警団がなだれ込み、驚いたネイドは窓から逃走したのだそうだ。

 飛び降りた先にあったのが、二人並んで歩けないほどの細い路地だった。

 大通りに向かい走ったところ、丁度道を塞ぐようにシャーリィが大通りを覗いていたので、そのまま突き飛ばし、逃走したらしい。


 パーティーの日、見知らぬ少女に声を掛けられ、ネイドのした悪事をすべてもみ消してやると言われたのだそうだ。代わりに、アイザック王子に罪を擦り付けろと言われたと。


 無理だと断ったが、それなら家にバラすと言われた為、親に知られることを恐れて、従ってしまった。


 そして、パーティーの翌日、休み時間のたびに悪さをしていた仲間たちと共に、人のいる場所の茂みや木の陰で、わざと聞こえるように、アイザック王子が事件に関わっていたらしい、と話して回ったのだそうだ。馬車に駆け込んだことは知らなかったそうだから、後から誰かが便乗して追加されたのだろう。


「見知らぬ少女……。小柄で茶色い髪? このくらいの長さの?」


「そう、です……。ええと……。色は、このくらいで……」


 ネイドが指したのは、自分が着けていたリボンタイだった。

 少し暗めの、ダークブラウン。


 これまた情報量が少なくて、確証は無いけれど、シャーリィを小屋に閉じ込めた少女なのかもしれない。


「すみません、何でも話しますっ。だから、助けてくださいっ! 俺、おれこのままじゃ消されます……っ!!」


 ネイドは必死の形相で、アイザック王子に縋りつく。


「可哀想だが、君のしたことは犯罪だ。罪を無かったことにすることは出来ない。後は司法に任せることになる。魔物違法取引に王子である私に罪を擦り付けようとした罪……。決して軽くは無いだろう。馬鹿なことをしたもんだな……」


 アイザック王子の言葉に、ネイドは絶望の色を浮かべると、土下座のような恰好で、子供のように声を上げて、号泣した。

 

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価・誤字報告、有難うございます!

ちょっと脳みそが駄目ぽ。誤字がちょっと大分アカン感じです;;

ご協力ありがとうございますtt

次は帰宅後、21~22時に投稿予定です。

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