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55.捜索開始致します。

 私とフローラ、アイザックとビアンカ、それにシャーリィと、シャーリィに付き添ってきた男子生徒――リヒトと言うらしい――の六人で個室に向かう。


「それで……。何があったのかしら?」


 私が問いかけると、シャーリィは下唇を噛みしめてから、ビアンカをちらちらと睨むように見ながら、話し始めた。


「王子様を、迎えに行こうとしたんですぅ……。教室に鞄、置いてからぁ、馬車の停留所のとこに向かってたら、上から植木鉢が落ちてきてぇ。そのままにしておけないじゃないですかぁ。だから、植木鉢、片付けて、そしたらぁ、今度は上からバケツに入った水がばっしゃーんってぇ……。知らない女の子が声かけてくれてぇ。そのままじゃ、教室に入れないでしょって、着替えた方が良いって、倉庫に連れてってくれたんですぅ。でも、待っててって言われたからぁ、倉庫で待ってたらぁ、いつまで経っても、その子戻ってこなくてぇ。外に出ようとしたら、あか…あかなくてぇっ。怖いし、寒いし、呼んでも誰も来なくてぇっ」


 しゃくりあげながらえぐえぐと泣き出したシャーリィ。よっぽど怖かったんだろう。


「リヒトがっ、ぇっく、来てくれてっ。教室、戻ったら、私の教科書、ボロボロに、なっててっ。皆、知らないって……っ」


「俺も気づかなかったんです。教室に置きっぱなしになっていた鞄の中にご丁寧に戻されてて……」


「でも、何故それがわたくしのせいになりますの」


 憮然とビアンカもシャーリィをにらみ返す。でも、流石に可哀想に思っているのか、勢いが無い。


「だってあなた、意地悪ばっかしたじゃないのぉ!」

「あなたがルールを無視するからでしょう」

「だってずるいじゃないのぉ! あなたは王子様と普通にお話できるのに何で私は駄目なのぉ!?」

「わたくしと殿下は幼馴染だからですわ」

「わたしだって幼馴染だもん!」


「え?」


 思わずアイザック王子を見る。王子はこてんと首を傾げた。


「……どこかで会ったかな?」

「ちっちゃい頃、パレードで目があったんだもん! こっち見て笑ってた! 手、振ってくれたじゃないですかぁ!」


 ……それは幼馴染違うと思うよ……。

 寧ろそれは気の迷い。


「あのね。シャーリィさん? わたくしたちはいつも通り、登校しているの。勿論、ビアンカも一緒よ。あなたの上に植木鉢を落としたり、水を掛けたり、ましてや閉じ込めたのは知らない子だと言ったわね? ビアンカにはできないわ?」


「じゃぁ、誰がやったのよぉ!」


 ……流石にそれは分からないなぁ……。


 ぅぅん、と私が唸っていると、フローラがこてりと首を傾げた。


「意地悪にしては、度が過ぎてますわね……」

「……そうね」


 植木鉢は洒落になってない。


「先生には話したの?」

「言ったよ! でも、またお前かって言われた! 酷い!」


 ……ああ――……。日頃の行いか――……。


「とりあえず、あなたを呼びに来た子が怪しいわね。その子を探してみましょうか。どんな子だった?」


「ええとぉ。茶色の髪でぇ、制服着ててぇ、髪の毛はこのくらいでぇ」


 一個も参考にならなかった。茶色の髪は一番多いし、長さも一番多い長さ。背中の中ほど。

 貴族は基本髪を伸ばすから。


「……Fクラスには、居ないのね?」


「わかんない」


 ちょ。


「なぜ……」


「だってわたし、王子様にしか興味ないもん!! 女の子とも仲悪いしぃ。わかる子はリヒトくらい。文句ばっかし言ってくるから覚えた!」

「お前がろくな事しないからだろ!?」


 うーんっ!


「顔を見たら、わかるかしら……?」


「わたし、泣いてたからあんまその子の顔みてない」


 うぉいっ! 一ミリも役に立たない……っ!


「――ぁ」


 フローラが小さく声を上げる。

 ん?とみると、顎に手を当てて、じっと何かを考え込んでいた。


「あのー……。関係ない、とは思うのですが……。ほら、ピアスを買った時、魔物の違法取引があったって、新聞にも載っていたじゃないですか。時刻も丁度私たちが店を出たあたり、でしたよね?あの時、あなた誰かにぶつかっていませんでした?」


 あ。あー、うん。確か突き飛ばされたって言ってたっけ。


「うん。ぶつかられたぁ。脇の路地からお店覗いてたらぁ、後ろから走ってきて、どーんって。あいつ、謝りもしなくてぇ」


「えっと。仮に、ですよ? ほら、違法取引に、この学園の生徒が関わっていたって噂が流れているでしょう? もし、その子がここの生徒で、事件に関わっていたなら、シャーリィさんに顔を見られたと思った、とか……」


「顔なら見た! ばっちり! 多分同い年くらいだった! 良い服着てたから多分平民じゃない!」


 おー。可能性はありそうだな。


「どんな子でした?」


「茶色い髪でぇ。王子様よかちょっと小さくてぇ、目が細くてぇ、あんまかっこよくなかった」


 いや、だからさ。

 この学園に茶色い髪で身長高めの殿下より小さくて目が細い男子何人いると思ってんの。


「Fクラスには、居ないのよね? 流石にわかるわよね?」

「わかる! あったま来たから覚えてるもん! Fクラスに居たらボコってる!」


 とりま、こっちはFクラスには居ないらしい。ほっ。


「虱潰しに探すしか無さそうですわね」


「ああ。流石に看過出来ないからな」


「シャーリィさん? あなたにも付き合って頂くわ。リヒト様。あなたはどうなさいます?」


「うん! 行く!」

「俺も付き合います」


 よし、決まり。お昼休みは無理だから、次の休み時間から。捜索開始、だ。

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価、感謝感謝です!!

お寝坊しませんでした。次は夜、21時くらい、投稿予定です!

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