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49.お揃いのピアス買いました。

 休憩時間、アイザック王子とビアンカが殿下の護衛を買って出たというBクラスの生徒も二人ほど同伴してやってきた。

 幸い、シャーリィはBクラスに突撃して来なかったらしい。

 というより、FクラスからBクラスは結構距離がある。

 多分授業終了と同時にすぐ教室を出たアイザック殿下たちが逃げ切った格好だろう。


 ということは、シャーリィがAクラスに突撃してくる可能性は否めない。

 とっとと話を進めちゃわないと。


 お互いに自己紹介をしあい、椅子に腰かける。

 先にヴァルターに話していたこともあり、話はサクサクと進んだ。

 立場的に、側近として申し分ないのは、辺境伯子息のヴァルターと宰相子息のユーヴィン・ストムバードだ。

 どちらもアイザック王子の側近候補として名が挙がっていたらしい。

 ただ、ユーヴィンはヴァイゼ殿下と常に一緒にいる感じ。

 入学式も、二人一緒に欠席だったし、外交上の何かあるのかも。


 アイザックは、ヴァルターだけに声を掛けることを決めたようだ。

 アイザック王子が勧誘すると、ヴァルターは膝をついて忠誠を誓い、今後は行動を共にする事になった。

 因みに、Bクラスから同伴してきた生徒二人とも、殿下はすっかり仲良くなったみたいで、彼らも行動を共にすることになりそうだ。名前はルド様とロッツ様。どちらも伯爵令息だった。

 ビアンカも友人が出来たらしい。お昼に誘ったと言っていた。

 私も友人としてフローラを紹介した。


 お昼はこのメンバーになりそうだ。大人数。


「そういえば、お姉様は、西区にあるリベルタ商店はご存じですか?」


「リベルタ商店?」


「あ、わたくし、存じ上げていますわ。自分の色と意中の殿方の瞳の色に合わせたピアスを片方交換してつけるのが流行っているそうですわ。僅か三ミリ程度の丸いピアスなのですけれど、そこに文字を入れてくれるんですの。プレゼントする方のピアスに自分の名を彫って、プレゼントしあうのだそうですよ」


「まぁ。ロマンチックね。フローラ様はそういった方がいらっしゃるの?」


「残念ながらおりませんの……」


 ……失礼しました。お兄様に、聞いておいてあげるからね……。

 まぁ、フローラの気持ち次第でもあるんだけど。


「ねぇ、お姉様、もうすぐ新入生歓迎のパーティがありますでしょう? 行ってみませんか?」


 お揃いのピアスかー……。


 そういわれて、咄嗟にフレッドの顔が浮かぶ。

 ちっちゃい頃から、ずっと一緒だったからかな。

 でも、フレッドの瞳の色って、何色になるんだろう。

 茶色のような、青のような、紫がかってるようにも見えるし、グレーのようにも琥珀色のようにも見える。

 なんていうか、はっきりした色じゃないんだよね。


 ビアンカは、当然アイザック王子とお揃いで着けるんだろうなぁ。

 この場合、私どうするべきなんだろう。

 一応、アイザック王子ってまだ私の婚約者なんだよねぇ。

 でも、アイザックと交換ってのは、なんかやだ。

 ビアンカも好きな人が姉でありもうじき婚約解消予定とはいえ、別の人とお揃いのピアスなんて嫌だろうし、私もなんでそんなことせにゃならんのって思ってしまうし。


 うん。少しずつ、殿下の隣にはビアンカってのを、広めても良いかもしれない。

 表向きは私が婚約者ってなってるけど、って感じで。


 身に着けるなら、うん。フレッドの、色が良いな。

 深い意味は、無いけれど。


***


 朝に警邏に説教されたらしく、シャーリィは朝のように突撃してくることは無かった。

 が。

 ストーカーかってくらい、気づくと離れたところからこっちをじーっと見ている。

 隙あらば接触しようとしていて、お昼も偶然を装って近づいてきた。

 アイザックは只管ガン無視。

 こうなるのは予想付いたし、先に個室を予約していたから、後ろからついてくるシャーリィを無視して個室に向かう。


 どさくさに紛れて一緒に入ろうとしていたけれど、ヴァルターが「ガーッ!」っと威嚇すると、悲鳴を上げて逃げていった。


 ……ほんと、何がしたいんだ、あの子……。

 頭の中、見てみたい。


***


 放課後、馬車の所までヴァルターが送ってくれた。

 ヴァルターはこのまま騎士学科の人たちと訓練するそうだ。

 因みに、騎士学科は二学年から選択できる。つまり、全員上級生。


 アイザックにビアンカ、フローラを乗せて、馬車が走り出す。

 フローラも、ピアスじゃなく、歓迎パーティで使うアクセサリーを買いたいらしい。

 折角だから誘ってみたんだ。


 リベルタ商店は、学生たちでごった返していた。

 随分と人気があるらしい。店も綺麗で、アクセサリーや雑貨など、綺麗なものから可愛いものまで、広い店内に整然と並べられている。

 やっぱり一番人気は、ピアスみたい。

 アイザックとビアンカは、楽しそうに寄り添ってピアスを選んでいた。


「あのぉ……。アウラリーサ様? 宜しいんですか?」

「え? 何が?」

「その……。ビアンカ様と殿下ですわ……」

「ああ」


 そっか。すっかり忘れていた。

 私は周りを見渡して、こそっとフローラに耳打ちした。


「実は、わたくし、アイザック殿下との婚約は解消する予定ですの。勿論円満にですわ。表向きは一応わたくしがまだ婚約者ではありますが、何事も無ければ卒業後、ビアンカが正式にアイザック殿下の婚約者として発表される予定ですの」


「まぁ……」


 めちゃくちゃ目を見開いてびっくりしているフローラに内緒ですよと人差し指を唇に当てる。


「そうなのですね。こういっては何ですが、アウラリーサ様が傷ついていらっしゃらないようで、安心いたしましたわ。では、アウラリーサ様はどなたとピアスを交換なさるのですか? ピアスをお求めかと思っていたのですが……」


「そうね……」


 私が振り返ると、背後に控えていたフレッドが、こてりと首を傾げる。


「ねぇ、フレッド。私とピアスを交換しない?」

「は?! 私ですか?!」


 ぶわっとフレッドが赤くなった。

 わたわたしてる。やだもー、きゅんきゅん来るな!

 やっぱりフレッドしか勝たん。


「うん。フレッドって彼女居るの?」

「まさか! 私はお嬢様の護衛ですから」


 そーね。六歳からずーっと私の後ろにはフレッドが居たもんね。


 私は勝手にピアスを選ぶ。

 うーん。フレッドの色、どれだ……?


「アウラリーサ様はフレッド様がお好きなんですね」


 にこにことフローラに言われて、どきんと鼓動がはねた。

 え、ちょ、何言うの。


「え、フレッドはね、小さい時からずっと一緒で、そういうのじゃ」


「ですが、アウラリーサ様、ピアスを選んでいらっしゃる時、とても良いお顔をなさっていましたわ」


 うぁ……。私一体どんな顔していたんだろう……。


「フレッド様の瞳の色は……。まぁ、珍しい。ヘーゼルの瞳をお持ちなのですね。……この辺のお色は如何でしょう?」


 フローラが指したのは、ブラウンダイヤモンド。見ようによっては近い色に感じる。


「あ、素敵ね。……うん。似ている気がするわ」


 硬直しているフレッドの瞳の横へ、ピアスを翳してみる。うん、似てる。

 ……あれ? フレッドの瞳。ひまわり?


「フレッドの瞳の中に、ひまわりが咲いているわ」

「は……?」


 薄いグリーンの瞳の中に、琥珀色――まるでひまわりみたいな虹彩。

 気づかなかったわ。吸い込まれそう。

 ヘイゼルの瞳ってこんな色なのね。

 見る見るフレッドが耳まで真っ赤になる。


「ああ、うん。これがよさそうね。ええと、私の色は……」


 自分の色はすぐに見つかった。色味の薄いアメジスト。


「じゃ、私買ってくるわ」

「お……お待ちください!」


 ――ん?


「その……。そちらは、私が購入します……」


 真っ赤になってフレッドが指さしたのは、ブラウンダイヤモンド。


 え、いや、高いよ……?


「大丈夫よ? 私が出すわ」

「いいえ、私に購入させてください」


 うわぁ……。凄い。なんか、カップルっぽい。

 私の顔も熱くなる。


「そ……そう? ありがと……」


 ぅぅぅ。恥ずかしい。私はそっとフレッドの手にピアスを置いた。


 一緒に会計を済ませると、アイザックとビアンカは、早くもお揃いのピアスを身に着けていた。

 私とフレッドがもじもじしている間に、フローラもお目当ての髪飾りを手に入れてきたらしい。


 ほっこりした気分で、店を出る。

 と、聞きなれた甲高い声が響き渡った。


「こらぁッ!! 痛いじゃないのぉ!! 何すんのよ、戻ってこ――いッ!!」


 ……あ。

 この子の存在忘れてた。

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価、有難うございます!!

遅くなっちゃった、すみませんー!

ちょっと盛大にやらかしまして、学園に残ったはずのヴィルターを出してしまいました…。

末尾一文削除してます…(顔覆)


次は夜、20時くらいに投稿予定ですっ。

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