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48/109

48.思ったよりもかわいい方でした。

 とにかく、謎のヒロイン登場は想定外だった。

 ビアンカの矯正が上手く行ったから、ゲームの攻略対象がアイザック王子の側近になったとしても、私に害はない、そう思っていたけれど。

 ここで攻略対象を野放しにしたら、巡り巡って断罪ルートに入りそうな気がする。


 悩むところではあるんだよね。

 あのシャーリィに攻略対象ズが陥落するとは思えないけれど、この先は未知数だ。


 とりあえず、一番近くにいる攻略対象、辺境伯子息、ヴァルター・サグラモールに接触してみよう。

 極力攻略対象とは関わりたくなかったが、ヴァルターは嫌な感じはしなかった。

 Aクラスに入るくらいだし、頭が良いなら流石にあれには靡かない気がする。


 翌日、案の定、馬車を下りると、待ち構えていたようにシャーリィがどどどどどっと効果音が付きそうな勢いで向こうから走ってきた。


 まさかあのまま激突するつもりか?

 私が扇に手を伸ばそうとしている間に、ビアンカがぱっと前に出て、両手を広げ遮った。


「止まりなさい!! それ以上殿下に近づけば、警邏を呼びます!!」


 ビアンカの声に、とっさに数名の男子生徒が動き、シャーリィを押さえる。


「ちょっと、何するの!? わたしはただ、王子様にご挨拶しようとしただけよ!!」


「王子殿下にそんな勢いで近づいたら、幾ら学園の中だって殿下に害を為そうとすると判断されて斬り捨てられても仕方が無いんだぞ? 何を考えてるんだ君は!」


「害なんてないわ!! 王子様と仲良くなりたいだけよ!」


「はぁ? 馬鹿じゃないのか?! 自分の立場考えろよ!?」


 ぎゃんぎゃんと押さえた男子生徒とシャーリィが言い合っている間に、そばに居た生徒が、しぃ、とした後、どうぞ行ってというように校舎の方を手で示す。


 有難う、と小さく頭を下げたところで、騒ぎを聞きつけた警邏が駆けつけてくれた。


 遠巻きにする生徒に紛れるように、その場を離れる。


「ビアンカ、さっきは偉かったわ。勇敢だったわね。怖かったんじゃない?」

「ちょっとまだどきどきしてます」

「ビアンカに守られるとは思わなかったな。ありがとう」


 ビアンカは照れくさそうに、少し誇らしそうに笑った。


***


 ビアンカとアイザックと別れ、Aクラスの教室へと入るとすぐにフローラが声を掛けてくれる。

 フローラが手を振ってくれるのを見て、ほっとしてしまった。


「ご機嫌よう、アウラリーサ様!」

「ご機嫌よう、フローラ様。ご機嫌よう、皆様」


 ――ん?


 教室に足を踏み入れたところで、違和感に気づく。

 昨日は居なかった男子生徒が二人。


 私の視線に気づいたらしい。彼らが私に近づいてくる。


「やぁ。入学式に間に合わなくてね。一日遅れてしまったよ。アウラリーサ・ブランシェル公爵令嬢、だね? 私はヴァイゼ・ルキア・ヴィ・シュトルク。気楽にヴァイゼと呼んでくれたまえ」


「それでは、ヴァイゼ殿下と呼ばせて頂きますわ。わたくしのことをご存じとは光栄です。アウラリーサ・ブランシェルに御座います。わたくしの事も、アウラリーサと」


 カーテシーで挨拶をした後、ヴァイゼ殿下の隣に並ぶ、長い髪をゆるく編み、肩へと流した少年へ視線を向けた。トレードマークの長い髪。青いリボン。鮮やかな、青い瞳。

 多分――


「ユーヴィン・ストムバートと申します」


 やっぱり。


「ストムバート宰相子息様ですね。ストムバート卿には、何度かお会いしたことがありますわ。どうぞ、アウラリーサとお呼び下さい」


「ありがとうございます。アウラリーサ嬢。私のことも、ユーヴィンと」


 挨拶が済んだ所で、ヴェロニカが近づいてきた。


「ご機嫌よう。アウラリーサ様。朝から災難でしたわね」


「あら。ヴェロニカ様はご存じで? わたくしも驚いてしまいましたわ」


「シャーリィ・バーシル、でしたわね。バーシル男爵の庶子の娘。Fクラスの最下位だそうよ」


「まぁ」


 なんかそんな気はした。


「随分と面白い娘が居たようだね。その現場を見られなかったのは残念だ」


 くすくすと楽しそうにヴァイゼ殿下が笑う。

 他人事だと思って。


「すぐに見られると思いますわ。あの子、アイザック殿下を追い回しておいでですから。ですが、あの手の子は、恐らく殿下だけに留まらないと思いますわよ? 恐らく、このクラスの殿方には、全員何かしらの行動を起こしてくるのではと考えております」


「それは楽しみだ」


 しーらないぞ~……。あの手のタイプは多分しつこいぞ?

 アイザック殿下なんて、たった二回で怯え気味なんだから。

 くすくすと笑いながら、ヴェロニカが、さりげなく、すっとヴァイザ殿下にほんの少しだけ近づいた。


「お相手がいないと、危険かもしれませんわね? すぐに、新入生歓迎のダンスパーティがありますでしょう? ヴァイザ殿下は、どなたかお約束なさった方がいらっしゃるのかしら?」


「いや、まだだよ。ヴェロニカ嬢。貴女は?」


「わたくしは、募集中ですわ」


「それは僥倖。パートナーをお願いしても?」


「光栄ですわ」


 にこにこと笑いながら胸元に手を当て、手を差し出すヴァイザ殿下。

 優雅に微笑みながら、その手を取るヴェロニカ。


 ……おぉう……。

 こんなにあっさり決めるもんなのか。


 ヴェロニカはアイザックを狙っているのかと思ったけれど。


「フローラ様は? お相手はお決まりですの?」


「それが、残念ながらわたくしも募集中ですわ。決まらなければ、兄にお願いしようかと思っておりますの」


 苦笑を浮かべるフローラ様。

 確か、パートナーは生徒でなくても構わないのだったわね。

 ……カシー兄様、浮いた話も無いけれど、聞いてみようかな?


 何の気も無しに、視線を巡らせると、こっちを見ていたヴァルターと目が合った。

 おっと。忘れるところだった。


「サグラモール様。少々お尋ねしても宜しくて?」


「ダンスの相手は決まってないぞ」


「いえ、そうではなくて……。サグラモール様、アイザック殿下の側近にご興味はおありでして?」


「は?」


「先ほど話していましたでしょう? 殿下に突撃してくるちょっと……ええ、ちょっと、な子がおりまして。学園の中には護衛は連れて歩くことができませんでしょう? 殿下も、側近候補として、あなたにお声を掛けたいと仰っておりましたの」


「本当か!?」


 うわぁ。

 ヴァルター、殿下の側近になりたかったみたい。

 顔を真っ赤にして震えている。


「殿下が、俺を……? 本当に?」


「ええ。後ほど、休憩時間にこちらにいらっしゃるそうですわ」


「そうか……。よしっ!」


 ぐっと拳を握りこんで、ガッツポーズ。

 案外可愛いじゃん。ヴァルター。

 私、ヴァルタールート、やったことなかったけど、これは確かにきゅんって来るね。

 普段、背も高くて体も大柄で、十五、六って言われても納得しちゃいそうな外見の、硬派っぽい男の子の、こういう可愛い面見せられたら。


 何となく、この子は味方になってくれる。そう思った。

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価、有難うございます!!

ちょっと遅くなっちゃいました;;

次は明日の朝、8時くらいに投稿予定です!

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