表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/109

46.どちら様でしょう?

 適当な席に着くと、フローラがもじもじしながら近づいてきた。


「あのぅ、ブランシェル様、お隣……宜しいでしょうか?」

「ええ、勿論。嬉しいわ」


 ぱぁ、っと頬を赤く染めて、フローラが私の隣に腰かける。


「安心いたしましたわ、ブランシェル様がいらっしゃって。殿方ばかりだし、グランドール様は、少し……近寄りがたくて」


 こそっと声を潜めるフローラに、思わず笑ってしまう。

 所作は綺麗なんだけど、どこか普通の女の子!って感じで、とても可愛い。


「アウラリーサと呼んで頂戴。わたくしも、フローラ様とお呼びしても?」


「ええ、是非!」


 良かった、フローラとは仲良くなれそう。

 

 程なく担任の講師がやってきて、自己紹介と、オリエンテーションが一時間ほど。

 それから学園内の見学をする。


 学園内は、とても広く、ダンスホールは勿論、お茶会の為のサロンや、良く手入れされた美しい庭園、広大な図書館に馬術や剣術を学ぶ場もあった。


 食堂はゆったりと広く、上品で落ち着く佇まい。一階に食堂、二階はカフェになっていて、お茶や焼き菓子などがあり、在校生たちは、食後にゆっくりお茶をしたり、放課後にここでお茶会をしたりしているらしい。

 それから、個室が三室。ここは予約制らしいが、基本は王族や高位貴族しか使わないらしい。


 庭園には四阿が幾つもあって、お昼にはこの四阿やベンチや芝生で誂えた小さな丘にシートを敷いて食事を取る生徒も多いらしい。


「皆様はお昼はどうなさいますの?」


 少し躊躇いがちにフローラが皆に声を掛ける。


「……わたくしは侍女と共に個室で頂きますわ」


 扇で口元を隠しながら、ちろりと流し目でグランドール公爵令嬢のヴェロニカが答えた。


「僕は教室で。本を読みたいので」

「俺は剣術棟で食う。食事の後は騎士科の連中と稽古する予定だから」


 ヴェロニカに続いて、メイナード子爵子息、イグナーツとサグラモール辺境伯子息、ヴァルターが続く。


「アウラリーサ様はどうなさいますの?」


「Bクラスに妹がいますの。アイザック第一王子殿下と妹と取ると思いますわ」


「そうなのですね」


 ちょっと残念そうに、眉を下げて微笑むフローラ。


「宜しければ、フローラ様もご一緒にいかがでしょう?」


「よ……宜しいのですか? ですが、アイザック殿下はご婚約者で御座いましょう? お邪魔ではないかしら……」


「わたくしはフローラ様が一緒ですと嬉しいですわ」


「では、殿下と、妹様が宜しければ是非」


 頬を赤く染め、フローラは嬉しそうに笑った。

 帰りに、アイザック王子とビアンカに相談してみよう。


 お昼前に、漸く見学が終わる。今日はこれでおしまい。


「フローラお嬢様」

「シェリー、今行くわ。それでは、アウラリーサ様、ご機嫌よう」

「ええ、ご機嫌よう」

「ご機嫌よう」

「また明日」


 従者や侍女が迎えに来て、皆教室を後にする。


「アウラリーサお嬢様」

「リティ、今行くわ」


 鞄に荷物をしまい、リティへと手渡す。教室を出ると、すでにビアンカとアイザック殿下が教室の外で待っていた。


「お姉様ぁー」

「アウラリーサ、迎えに来たぞ」


「まぁ、わざわざ来て下さったのですか? ありがとう存じます。お待たせして申し訳ありません」


「気にしないでいい。こっちの方が先に終わったようだったから。今日はそのまま王宮に来るんだろう?」


「はい、その予定ですわ」


 私たちは、帰路に就く生徒たちの流れに乗って歩き出す。


「お姉様だけ、離れてしまいましたね。寂しいわ。Aクラスはいかがでしたか?」


「ジェニー伯爵家のフローラ様と仲良くなったわ。後……。グランドール公爵令嬢と、メイナード子爵令息が一緒だったの」


「うぇ……。大丈夫か? アウラリーサ」


「? その方達と何かありましたの?」


「小さい頃に、ちょっとね。グランドール公爵家からメイナード子爵家に嫁いだ夫人と、色々あったの」


「そうなんですか……」


 私の口が重いのに気づいたらしい。ビアンカが口を噤む。

 さらりとアイザック王子が話題を変えた。


「Bクラスは十二人しかいなかった。Aクラスは何人だった?」


「五人でしたわ」


「す……少ないですね」


「私も驚いちゃった」


 ビアンカと私が顔を見合わせ笑っていると、不意にアイザック殿下がどんっとぶつかってきた。


「うわっ!?」

「「きゃっ!」」

「「お嬢様ッ!」」


 ちょっとよろけたけど、ビアンカを抱きしめて何とか堪える。

 よろけた私ごと、ビアンカを片手で支えるアイザック王子。

 咄嗟に私とビアンカにそれぞれ抱き着いて守ろうとするリティとオーサ。ざわつく周囲。

 なんだ?! と思った直後、甲高くあざとい声が響き渡った。


「きゃー、ごめんなさぁいっ! やだもぉ、わたしったらドジでぇ。 あれぇー? ひょっとして、アイザック王子様? わぁー、本物ですかぁ? すごーい、めちゃくちゃ格好いい! お会いできてうれしいですぅ! あ、そだ、ぶつかっちゃったお詫びに、一緒にお食事でもいきませんかぁ? あっ、わたし、シャーリィっていーますぅ。シャーリィ・バーシル!」


 ・・・・・・。


 え?



 何これ。


 え? 何これどういうこと??




 視線の先には、ゆるふわの……。もしやこれがストロベリーブロンドってやつか?

 赤毛と金髪の中間みたいな髪と、ぱっちりとした緑の瞳の女生徒が、目うるうるさせてアイザックにひっついてる。


 バーシルって、男爵家? いや、バーシル家の貴族名鑑に子供の名前なんて無かったよね?

 ってことは庶子とか?

 で、ストロベリーブロンド? 王子にタックルぶちかまして?


 この流れは、もうどこから見てもコッテコテの王道テンプレじゃね?


 は? いや待って、ほんとどういうこと?

 ヒロインはビアンカだよね?

 じゃ、このシャーリィ・バーシルってのは??




 あの……。どちらのヒロイン様でしょう……?

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価・誤字報告、有難うございます!!

次は明日の朝、8時くらいかな?更新予定です♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ