45.メルディア学園入学です。
あれ以降、あんなに毎回アイザック殿下を交えた勉強会に顔を出していたラザフォード殿下は、ぴたりと顔を出さなくなった。
ほんと、何が気に入らないのか。私が良いつってんだから良いじゃんね。
……まさか、ラザフォード殿下、私の事……?
……。
……いや、無いな!! ナイナイナイ。
多分、何か地雷でも踏んだんだな。大人げない。
だからいい年こいてチャラインなんだよ。
まぁ、元々ラザフォード殿下は苦手だったし、ちょっと物足りない気はするけれど、絡まれても面倒だし、そのうちほとぼりも冷めるだろう。
さて。頭切り替えよう。
ただいま、季節は春。五月の半ばで御座います。
この世界、日本と違うのは、学園の入学時期が六月なこと。
私、アウラリーサは六月生まれ。
因みにアイザック王子は八月、ビアンカは十月生まれ。
同い年だけど、私が一番年上だったりする。
私も、アイザック王子もビアンカも、ついにゲームの舞台となる、メルディア王立貴族学園に入学する日が迫っていた。
名前の通り、貴族の為の教養だったり、交流に必要な知識だったり、領地経営の為の経済学だったり、貴族としての付き合い方を学ぶ、そういう学園だ。
残念ながら侍女は身の回りの世話をするから連れて行けるけれど、フレッドは連れていけないんだそう。ショックだ……。この世界に来てから、ずっと一緒だったもんね。
私がしょぼくれていると、フレッドが眉を下げて笑い、「門のところでお待ちしておりますから」って慰めてくれた。
私とビアンカは、今年は一月早く王宮に居を移すことになった。
学園終わってから王宮に上がって王妃教育受けてそこから公爵家、だと、私とビアンカの負担が大きいからっていう王妃殿下の配慮。
だから、学園へは、アイザック王子と一緒に王家の馬車で向かうことになる。
できればお断りしたいけれどやむを得ない。
まぁ、公爵家の馬車使っても激目立ちは一緒だから、諦めよう。
制服が届いたり、教科書やノート、ペンを準備したり、やることはいっぱいあった。
王妃殿下と国王陛下から、入学のお祝いにと王家の刻印入りのペンを頂いた。
後は、淑女の嗜みの扇。
これはちょっと特別製。入学祝いをおねだりして、お父様に用意して頂いたもの。
ビアンカとお揃いだ。
準備は着々と進み、そして、入学を迎える日がやってきた。
***
当日、私はアイザック王子とビアンカと、三人で王宮の馬車で学園へと向かった。
後続の馬車に、アイザックの従者、リティ、オーサが乗っている。
馬車を降りると、めちゃくちゃ注目が集まった。
アイザック殿下の横には、お揃いの髪型にお揃いのリボンを着けた私とビアンカ。
皆興味津々なのだろう。
ビアンカは意外にも堂々とふるまっていて、ちょっと安心した。
ゲームの舞台、メルディア学園は、凄くおしゃれで綺麗な建物だった。
すっごく広い。
馬車を下り、上級生の案内で、講堂に向かう。
見知った顔が幾つかあった。
「まぁ、アウラリーサ様。ご機嫌よう。そちらの方は?」
「ご機嫌よう、マリアール様。アネット様。アヴィゲイル様。わたくしの妹のビアンカですわ」
「ご機嫌よう。ビアンカ・ブランシェルと申します」
「マリアール・リコッシュですわ」「アネット・ブランケルと申します」「アヴィゲイル・フレッサーですわ」
ビアンカのことを尋ねられ、私は幼い頃からビアンカと育ってきたこと、男爵家から養子に迎え入れたことを話す。元平民だったことは伏せておいた。わざわざ言う必要も無いしね。
アイザックも、数名の男子生徒に声を掛けられ、話し込んでいる。
程なく、カランカランとベルが鳴らされ、入学式が始まった。
新入生代表は私。単に私が筆頭公爵家の娘だからってだけ。
貴族全員が通うからなのか、入学試験は無し。でも、実力テストは、入学式の後にやるそうな。
なので、クラス編成も実力テストの後だって。準備とか要らないのかな。
すごいマッタリ感。
粛々と入学式が進み、数名ずつ教室へと連れていかれ、そのまま実力テストになった。
私はAクラス。残念ながら殿下とビアンカはBクラス。別れちゃった。
がり勉してたおかげか、私は首席になった。前世じゃ考えられない快挙だ。
教室に入ると、視線がこっちに集まる。
「ご機嫌よう、アウラリーサ・ブランシェルと申します。一年間よろしくお願いいたします」
私が少し腰を落とし挨拶をすると、皆立ち上がって挨拶を返してくれた。
「ご機嫌よう、アウラリーサ様。わたくし、ヴェロニカ・グランドルと申します」
見事な金髪に鮮やかな青い目。気の強そうなアーモンドアイ。
……あれかー。あのメイナード夫人の姪っ子……。
ツンっとした雰囲気がめっちゃ似てる。
この子私の事敵対視してるっぽいなぁ。
謙虚に見せてはいるけど、目が好戦的。
「イグナーツ・メイナードです」
眼鏡を掛けた青白い顔のひょろりとした少年が立ち上がり、会釈をする。
またメイナード夫人絡み! メイナード子爵の子息か。
似てるわー。顔立ちがそっくり。
無表情で、ちょっと何を考えているかわからない顔。
でも、自分の母親を断罪した私に、いい印象は無いんだろうな。
「ヴァルター・サグラモールだ」
……こっちは辺境伯子息か……。ゲームの中の攻略対象だ。
引き締まった体つき、精悍な顔立ち。赤銅色の髪。琥珀色の瞳。
見た目筋肉な感じなのに、Aクラス。ちょっと意外。
「フローラ・ジェニーですわ。よろしくお願いいたします」
頬を赤くして、はにかみながら挨拶をしてきたのは、ジェニー伯爵令嬢、フローラ様。
やだ可愛い。
ゆるふわのハニーブラウンの髪に若草色の瞳。
Aクラスは、私を入れてたった五人。
たった五人だけど、何このメンバー。
先行き不安でしかないんだけど。
フローラとは仲良くなれそうだけど、他はこの先、ちょっと不安になった。
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