39.七歳になりました。
「明日の王妃教育はお休みにしましょう」
王宮に通うようになって、もう少しで一ヵ月。
お父様とお母様が領地にお戻りになるまで、後数日に迫ったある日、王妃様に呼び出され、そういわれた。
きょとんとしていると、王妃殿下が可笑しそうに笑う。
「ヴェルハルトから聞いたわ。明日はあなたのお誕生日なのですってね。もうじき公爵夫妻とも暫しお別れでしょう? だから、明日はゆっくり家族とお過ごしなさい」
……あー。そんなこと聞いたような気がする。そっか。アウラリーサ、六月生まれなんだ。
「ありがとう存じます。王妃殿下のお心遣い、心より感謝申し上げます。お言葉に甘え、明日は家族と過ごさせて頂きます」
そっか。ちゃんと成長してるんだ。
『私』がこの世界に来て、アウラリーサになってから四ヵ月。
明日でアウラリーサは、七歳になる。
***
「おめでとう、アリー!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます、お嬢様!」
「有難うございます!!」
朝早くから、使用人たちが飾りつけをしてくれて、今日は屋敷の使用人達、皆集まってくれて、私を祝ってくれる。
最初は、お友達を呼ぶべきか、家族で話し合ったんだよね。
でも、私はアウラリーサのお友達を覚えていないし、カシー兄様曰く、『あれは甘い汁を吸おうと近づいて来てるだけの害虫でアリーの友達とは言えない』と仰っていたから、それなら呼ぶ必要ないよねってことで、今日は家族と屋敷の使用人達に祝って欲しいとお願いした。
そんなわけで、料理人から下女、馬丁まで、皆集まってくれている。
五十人ちょっと居るから、大広間もそこそこの人数で、家族だけのパーティでも、ちっとも寂しくない。
使用人達も、皆工夫を凝らして、心のこもったプレゼントをくれた。
料理場の使用人達は大きなケーキを、庭師のマシューは私の好きな花を集めた可愛いブーケを、ビアンカのお母さんのクロエは薔薇の花を刺繍したハンカチを。ビアンカのお父さんのマークは薬草園のハーブと薔薇を使ったサシェを。執事のウォルターさんからは新しい異国の本を。ビアンカからは、押し花の栞を、リティからは手作りのうさぎのぬいぐるみを、フレッドはお花の髪飾り。
修繕係のドニーは、新しい金属板をプレゼントしてくれた。穴の開いていない歪みのない銀色の金属板で、綺麗に磨かれてぴかぴかしてる。握りのところもピンク色に染めた革を綺麗に巻いてあった。
他にも沢山。
一人一人、手渡しでプレゼントをくれて、嬉しくて飛びついてしまった。
嬉しくて嬉しくて、泣きながらお礼を言った。
カシー兄様からは、ブローチを、お母様からはドレスを、お父様からは、ずっと欲しかった子犬。
真っ白でふわっふわなの。名前はシャリシールってつけた。愛称はシャリー。
今習っているカルトゥール語で、雪の意味。
陛下にお願いをしてくれたそうで、王宮に連れて行って良いらしい。
それから、ずっとお預けだった護身術の先生を王宮に派遣してくれたんだって。
楽しみだ。
「お嬢様、第一王子殿下と王弟殿下がお見えになりました」
「アウラリーサ、来てやったぞ!」「やぁ、アリー、今日は一段と綺麗だね~」
「まぁ、アイザック殿下、ラザフォード殿下!」
アイザック殿下は大きな花束を、ラザフォード殿下からは数種類の、勉強に使えるカードを頂いた。
「ほんとはねぇ、僕も花束か宝石でもプレゼントしようかと思ったんだけどね~。アイザックのプレゼントよりも豪華になったら、アイザックの立場が無くなっちゃうでしょ?」
ひそっと声を潜めてそんなことを言うラザフォード殿下に、思わず笑ってしまった。
パーティはとっても楽しかった。
アイザック殿下にお父様、ラザフォード殿下ともダンスをしたし、今日は特別だから、フレッドともダンスを踊った。
フレッドはダンスが上手で、聞いたら実は子爵家の三男坊なんだって。
ビアンカもアイザックとダンスを踊れて嬉しそうだ。
使用人たちは、平民のお祭りで踊るダンスを披露してくれた。
楽器が得意な使用人たちが数名で、素朴で陽気な音楽を奏でてくれて、くるくる回って踊る。
フォークダンスみたい。
私も教えて貰って一緒に踊った。
お父様やお母様、お兄様も一緒に踊る。
アイザック殿下もラザフォード殿下も、楽しそうに踊っていた。
最初は恐れ多いと恐縮しまくりだった使用人達も、最後は一緒に笑っていた。
ああ、もう、私、本当にこの家、好きだわ。大好き!
楽しい時間は、あっという間に過ぎて行って、その日私はたくさんの贈り物に囲まれて、眠りについた。
そして、数日後。
お父様達が、領地に戻る日がやってきた。
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