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3.悪役令嬢でした。

 アウラリーサ・ブランシェル。

 乙女ゲーム、『メルディアの白雪姫』に出てくる悪役令嬢だ。


 貴族の通うメルディア王立貴族学園を舞台に、男爵家に引き取られた元平民の『ビアンカ・ネーヴェ』が、学園で淑女のスキルを上げつつ、次々起こる事件を攻略対象のイケメン達と解決していくストーリーになっている。


 そして、アウラリーサ・ブランシェルは、メインルートである王太子アイザック・フェロー・ド・メルディアの婚約者だ。


 でも、このアウラリーサ、貴族は通う義務のある学園という設定なのに、学園には通っていない。

 病気を理由に領地に引きこもっているのだ。

 自分は一切動かず、人に命じてヒロインである『ビアンカ・ネーヴェ』をあの手この手で陥れようとしてくる、物語のラスボス。


 事件イベントをクリアすると、動画になり、薄暗い、どこかの一室のシーンが映し出される。

 ぎこちないオルゴールの音色と、失敗を告げる低い男の声。沢山のぬいぐるみとビスクドール。

 報告を聞いて嘆く声は、儚げで愛らしい。でも、サラリと流れる髪やテーブルに置かれるカップといった末端だけが描かれて、『美少女』を匂わせるだけで、その全貌は終盤まで出てこない。


 失敗をした『手下』を、ちょっと拗ねたような口調で、何でもない事のように残酷に始末する。

 例えば、失敗した令嬢を部下に命じてそのまま引きずって行って暖炉に投げ込むだとか、飲ませそこなった毒を無理やり口を開けさせて少しずつ口に流し込むだとか。


 アウラリーサこえぇぇぇ!!ってなった。


 作中、しくしくと泣きながら『こんな体じゃなかったら』と漏らすから、病弱設定かと思いきや、実はこのアウラリーサ、実はものすごい巨漢――三百キロ超えの超肥満令嬢なのだ。

 自力で動けないくらい太っているから、出てこられない、が真相だった。


 脳内で勝手に美少女と変換されての最後のシーンはほんと衝撃的だった。


 イケメンを何人も侍らせて、キングサイズのベッドにどっかりと座り、テーブルいっぱいのお菓子に囲まれ、ぐちゃぐちゃと汚らしくお菓子を頬張りながら、あの超かわいい声で、最初は悲し気に、徐々にヒステリックに目を血走らせ、王太子妃の座は渡さないと甲高い声で絶叫しけたたましく笑う姿は、狂気を孕んで、夢に出そうなくらいに恐ろしかった。


 ちなみに、どのルートでもアウラリーサはラスボス。最後は必ず婚約破棄からの死罪になる。


 ……いや、何があったよ?



 変わりすぎでしょうよ。美形遺伝子どこ行っちゃったのよ。病む要素なんてどこにあったんだ?

 現在めっちゃ美少女で、お父様もお母様もお兄様もあんなにスリムで、家族も使用人も皆あんなに優しいのに。

 


 ――私もいずれ、ああなるの? そう考えたら、ぞっとした。


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