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27.断罪ルートに行きますか?

「ビアンカッ!?」

「へぇー、おじさんが公爵様? あたし、ビアンカっていうの、よろしくね!」


 うわぁ。


 慌ててビアンカの口を押さえるマークさん。

 口元にぐーを当てて気絶しそうなクロエさん。

 目を点にして口が開いちゃってるお父様。

 笑顔のまま凍り付くお母様。

 昔流行ったどこぞのスナギツネみたいな顔になっちゃってるカシー兄様。

 多分私は魂抜けたみたいな顔になってたんじゃなかろうか。


「ビアンカッ! 申し訳ございません、申し訳ございませんッ!!」

「や……やっぱりこのお話は無かったことに! とても公爵家のお屋敷にお仕えできるような娘では御座いませんっ!」


「なんでっ! お父さんもお母さんも今日から公爵様のお屋敷に住まわせて頂くって言ってたじゃん!?」


 そうだけどそうじゃない。

 ろ……六歳児だもんなぁ……。花売りの仕事してた割にこの辺の良識は無いのか、この子……。


 う……うーむ。

 凍り付いて固まった家族に代わり、お願いした元凶の私が出るべきだろう。うん。


「ご機嫌よう、ビアンカさん。私がアウラリーサよ」


 じたじたマークさんの腕の中で暴れていたビアンカが、ぱっとこっちを見て笑う。


「あんたがアウラリーサ? アウラリーサって呼びにくいね。アウリーって呼んでいい? あたしのことはビアンカで良いよ」


 あんたって。うーん。このままじゃ王子の妃なんて無理だ。


「ビアンカ。私の事はお嬢様とお呼びなさい。それからタメ口も駄目です」

「はぁ? 何言ってんの? あんたがあたしと友達になりたいって言ったんでしょ?」


 必死にビアンカを黙らせようとするマークさんを手で制す。


「とりあえず、あなたと二人でお話がしたいわ。お母様、お父様。ビアンカを連れて行きます。良いですか?」

「あ、ああ……」


 虚脱気味に頷くお父様。

 私はビアンカの手首をつかむと、自分の部屋へと向かった。


「ちょっと、何よ……」


 不満げな声を上げるビアンカを無視して部屋に入る。

 用意していたドレスは上げられないな。

 今のこの子にそんなもん渡したら、調子づくのが目に見えてる。


 リティに目配せして、部屋の外に下がってもらう。

 女の子同士でも危ういと思ったのか、扉は少し開けてある。


「……ふぅーん。アウラリーサって、ちっちゃい頃は痩せてたんだ? 意外ー」


 ふふふっと意地悪気に笑うビアンカ。

 ……この子も転生者なのか。

 これは……ざまぁ系……?

 に、なるよなぁ、多分。なんかお花畑臭がぷんぷんする。


「そうね。()()ならないように努力しているもの」


「ん? ……待って、あんた自分が太るって知ってるの?」


「ええ。私も転生者だもの」


「うそっ! バグかと思ったらあなたも転生者なの?! そっかー、ゲームと内容が違っててびっくりしちゃった。まさか悪役令嬢がお屋敷に招いてくれるとは思わなかったもん」


「とりあえず……。ゲームのストーリーを知っているなら話は早いわね。良いの? あなた」


「良いのって、何が」


「決まってるじゃない。今のままならあなた、間違いなくざまぁルートよ?」


「??」


「悪役令嬢系の小説とか読んだことないの?」


「悪役令嬢系? 小説や漫画は見ないなー。ゲームはよくやったけど」


 ……おぉぅ……。

 ヒロインがざまぁされるケースの小説見るたびになんで毎回ヒロインこういうざまぁされる事するんだろと思ってたけど、そもそもコミックや小説読まない子ならゲームの流れ通りって思いこむってのもあるのかも……。


「小説の受け売りだけど、転生した乙女ゲームの世界で調子に乗ったヒロインが悪役令嬢陥れて逆ハー狙って最後は逆に断罪されて牢屋行き、死罪になったり修道院行きになったり奴隷に落とされたりするネタよ」


「え、うそなんで?! だってヒロインに転生してるんだよ?! 主人公が死罪とか意味わかんないんだけど!」


「転生した時点でもうゲームじゃないからじゃない? リアルだもの。しかもヒロインが逆ハーなんて狙ったら、普通に国家反逆罪まっしぐらよ」


「噓でしょ……」


「普通に考えてみてよ。国のトップになる王子や官僚が学歴の低いビッチに入れ込んで税金使い倒して挙句に勝手に俺様法案適用しちゃったらどう思う? 挙句そのビッチを王妃にするなんて言い出したら。そんな女が王妃になったら、外交で今のあなたみたいな事を、海外のお偉いさんにしでかすってことよ?」


「国交断絶、暴動起こるわね……」


「そういうこと。どうせあなた、貧しい平民のヒロインが公爵家に引き取られて意地悪なアウラリーサに虐められ、王子様に慰められて恋に落ちるなんて妄想して舞い上がってたんじゃないの?」


「ぅっ……」


「わかった? あなたには選択肢があるわ。一つ。このまま突っ走って『ざまぁされて断罪ルート』。二つ目は平民に戻って大人しくしている『お話始まりませんルート』。三つめは、私が提示する本気で王妃になる努力をして『皆に認められる王子とのハッピーエンド』よ」


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