21.悪い子だったら戦います。
危なっかしくぴょん、ぴょんっと石を渡っていると、フレッドが手を差し伸べてくれた。
「転ぶと、危ないので」
「そうね……。じゃ、慣れるまでお願い」
「畏まりました」
フレッドと手を繋いで、ぴょんぴょん、石を渡る。
フレッドの手は大きくて、温かくて、何だか胸がぽかぽかする。
お子様じゃなかったら、好きになっていたかもしれない。
「アリー、こっちにいたんだ? ……何やってんの?」
石の上で足を止めて、声のした方へ視線を向けると、カシー兄様とカインが近づいてきた。
「あ。カシー兄様。体幹トレーニングです! 兄様は剣のお稽古、終わりですか?」
「タイカン? ああ、うん。……ふぅん、楽しそうだね。僕もやっていい?」
「はい! あ、それじゃ、兄様、アリーと遊びましょう?」
私はぴょんっと石を下りて、フレッドの手を解くと、石の並んでる端に行く。
「私はこっち、兄様はあっちです。で、ぶつかったらじゃんけん。負けた方は走ってふりだしに戻って、相手の陣地に先に着いた方が勝ちです!」
「ジャンケン……? ふりだし? 陣地?」
おぉぅ……。通じなかった。
「これがぐー。ぐーは石です。で、これがちょき。ハサミです。で、ぱーは紙です。石はハサミよりも強くて、ハサミは紙より強いです。紙は石を包んでしまうので、石より強いです。じゃーんけーんぽんっで、どれか一個を出します」
ふんふんふん、と兄がぐー、ちょき、ぱーとやってみる。
釣られたカインとフレッドもぐー、ちょき、ぱーっとやっている。
「練習しましょ! いきまーす、じゃーんけーん」
手をふりふり。兄と騎士二人も、ふんふん、っと手をふりふりする。
「ぽんっ」
私がぱー、兄とフレッドはちょき、カインがぐーだった。
「この場合は、誰も勝っていないので、やりなおし、『あいこ』です。あーいこーでしょっ」
面白いね、今度は音頭に合わせて、皆じゃんけんをする。
私とフレッド、兄がちょき。カインがぐー。
「あっ」
カインがオロっとしてる。
「カインが勝ちですね!」
「へぇ、面白いですね」
「こんな遊び、よく知ってるね?」
――あっ。またやっちゃった。仕方がないから笑ってごまかす。
「コイントスより面白いかも。よし、アリー、遊ぼう!」
「はいっ!」
兄はすぐにルールを覚え、カインとフレッドも交ざって、4人で遊んだ。
一時間ほど遊んだら、兄は座学があると部屋に戻っていった。
私も汗をかいたから、お部屋に戻ることにする。
「私も今日はお部屋に戻るわ。フレッドも戻って頂戴」
「畏まりました」
***
お部屋に戻り、汗を流してから、私は机に向かっていた。
ビアンカの居場所は分かった。
どうやって行くかは、とりあえず、報告を待つしかないかな。
手が届きそうで届かない、何とももどかしい。
ビアンカに会ったら、どうしよう。
んー。
紙を一枚手に取って、思いついたことを箇条書きにしていく。
いい子だった場合。
こっちはすでに構想済み。
するすると、書き出していく。
……うん。一人、使用人が必要だな。
できれば、平民の下働きの女の子。
文字の勉強用の鉄筆と蝋板。
紙がそんなに安くないから、文字の練習は基本木の枠に流し込んだ黒い蝋を入れて固めた蝋板を使う。
この蝋板、タブレットっていうんだよね。
色々用意をしてあげたい。
――でも。
もしも、ビアンカが、小説によくある、どうしようもない子だったら。
脳裏に浮かぶのは、あっという間に傷が治る薬。
あんな感じで、魅了とかを使うような子だったら?
人を陥れて、あざ笑うような子だったら。
話の通じない、そんな子だったら。
いい子であると信じたいけど、もしか、万が一、億が一、そんな子だったら。
その時は、ビアンカと戦おう。
そうして、アイザック王子には、もっといい子を探してあげよう。
どうのこうので私、あの王子様、嫌いじゃないんだよね。
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