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16.国王陛下に謁見します。

 お父様のエスコートで、馬車を下りる。

 目の前には、大きなお城。


 ふわぁぁぁ……!


 ブランシェル公爵家の屋敷も、お城みたいだって思ったけど、規模が違った。

 めちゃくちゃ高いしでかい。お城の入口に上がる階段だけでもやたら広い。

 ぱらぱらと、貴婦人や紳士が出入りしている。

 こんな広い階段必要あるのか?


「アリー? 行くよ?」


 笑いを堪えたようなお父様の声に、はた、っと我に返る。

 そうそう。観光に来たんじゃないんだ。

 謁見ね、謁見。


 ぅー、もう、笑わないでよ。恥ずかしいじゃん。


 つん、と顎を上げて、お父様と手を繋ぐ。


「エスコートしてくださいな。お父様」

「身に余る光栄です、私の可愛いお姫様」


 お父様ったら、気障。格好いいから許すけど。


***


 謁見の間、みたいなところに行くのかと思ったら、案内をしてくれた紳士が連れてきてくれたのは、会議室みたいな部屋だった。長いテーブルに椅子が幾つも並んでいる。

 え、何されるんだ? 私。

 お父様を見上げると、にっこりと笑ってくれる。

 ここで間違ってないのか……。

 紳士に促され、お父様に抱えられて、椅子へ腰を下ろす。

 すぐに侍女さんがお茶を淹れてくれた。

 美味しそうなお菓子も並べてくれる。

 お父様の前には、ワインの入ったグラス。

 朝から酒? 国王陛下の謁見前に?

 こっちの人は朝からでも良くお酒を飲んでる。グラスに一杯程度だけど。


 しばらくお父様とお菓子を頂きながら雑談をしていると、騎士服に身を包んだイケメンが来た。

 目が合うと、にこ、と笑みを向けられて、思わずもじもじ照れてしまう。

 お城の騎士さんも格好いいなぁ……。筋肉質がたまりません……。


「国王陛下がお越しになりました」


 ふぁッ!?


 慌てて頬張っていたお菓子をお茶で流し込み、急いでソファから飛び降りる。

 お父様も、ス、っとソファから立ち上がり、恭しく頭を下げる。

 はわわわわ。えと、えと、そうだ、カーテシー!


 いつもの、ちょんっとするカーテシーじゃなく、何度も練習した、深いカーテシーをする。

 不格好だけど、今はこれが精いっぱい。

 お子様だから許して。

 どうかガチョウに見えませんように。


 カツン、コツンと足音が聞こえる。

 ――ん? 足音、多くない?

 衣擦れの音、複数の足音。

 え、何、なんか怖いんですが!!

 まだ、顔は上げちゃだめだ。

 怖いのもあるし、足がそろそろ限界!

 ひーっ。足がぷるぷるする!


「よい。楽にしたまえ」


 落ち着いた、耳に心地の良い声。

 お父様が、体を戻す気配がする。

 っほ――。

 ギブ状態になってた私、お父様に倣って足を戻し、体を起こした。


 うわ……。


 貫禄のあるおじさまが五人。

 中でもひと際風格のある、一目でそれとわかる、白いお鬚を上品に蓄えた、がっしりとした体躯の初老の男性が、こちらを見て、微笑んでいた。


 この方が、国王陛下――?


 なんか、凄い雰囲気。知性を伺わせる深みのある瞳。敬う、って、こういう感覚なのかもしれない。

 畏まらずにはいられない。

 気品に威厳、品格。纏うオーラが違うというより、一目で格が違うと感じさせる空気。

 ああ、なるほど。この方は、『王』なんだ。この雰囲気は、王者の風格。


「メルディアを照らす黄金の太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます。ヴェルハルト・レナン・ブランシェル、お呼びにより馳せ参じました」

「国王陛下にご挨拶申し上げます。ブランシェル公爵が娘、アウラリーサ・ブランシェルと申します」


 もう一度カーテシーでご挨拶。


「態々呼びたててすまなかった。かけたまえ」

「失礼いたします」


 陛下が、上座に当たるらしいひと際豪華な、テーブルの短い方の席に腰を下ろすのを待って、お父様と並んで腰を下ろす。


 残りの四人も順番に挨拶をして、椅子に腰を下ろした。

 つまり、この人たちは、国の偉い人、ってことなのかな。


「アウラリーサ嬢。何故呼ばれたか、父上から聞いているかな?」

「はい。わたくしが、メイナード子爵夫人から受けた暴行に対しての訴えを取り下げて欲しいと父にお願いをしたからかと存じます」


 国王陛下が目を丸くする。

 おじさん達もざわついた。


 ――ん? え、何? 受け答え、なんか間違った?


「ヴェルハルト。そなたから聞いてはいたが、そなたの娘は随分と聡いようだな。よもや幼少の身でありながら、これほどの受け答えをするとは思わなんだ」


 あ。あ――――! しまった!

 背伸びにしても真面目に答えすぎた!

 私、まだ六歳児!

 小説とかの令嬢の口調をつい参考にしちゃってた!

 でも、正しい貴族のお子様の受け答えなんて分からない!!


 ……ま、いいか。

 やっちまったもんは仕方がない。このまま行っちゃえ。


「お褒めに与り恐縮です」


 ぺこり。頭を下げる。

 隣でお父様、ドヤ顔。


「うむ。アウラリーサ。そなたはイザベラ・メイナードの極刑を取り下げを願い出た。相違ないかな?」

「御座いません」

「それは何故だ?」


 んー……。お父様には悪いけど、正直に言おうっと。

 取り繕っても仕方が無いし。


「寝覚めが悪くなるからです」

「ん?」


 陛下がきょとんとした顔になる。


「あの方が死罪になれば、わたくしはどうしても、あの時わたくしが騒いだせいで、あの方を死に追いやってしまったと後悔をするでしょう。あの方は死んで楽になり、わたくしはこの先ずっと苦しむ、それでは本末転倒で御座いましょう?」


「ほう」


 陛下はお鬚をさすりながら、笑って続きを促す。


「正直に申せば、わたくしはもう、あの話はおしまい、で良いと思っておりました。あの方の罪は暴かれ、もう今後社交界で生きていくことは出来ないでしょう。わたくしは、お父様が怒って下さったことで怒りは収まりましたし、あの方を解雇出来て、もうお会いすることも無いだろうと思っておりましたので、それで十分だと思っております」


「うーむ、慈悲深いことだな」


「そのように大層なものでは御座いません。わたくしは以前の記憶を失っております。ですから、あの方に対し、それほど強い恨みも憎しみも覚えておりません。ですが、虐げられた以前のわたくしの為に、生きて罪を償う道を選んで頂きたく存じます」


「ふむ。――では、イザベラ・メイナードは、平民に落とし、犯罪奴隷として鉱山送り。これでどうかな?」

「異論御座いません」


 犯罪奴隷、と言っても、スラムのような質素な小屋だが、衣食住は保証される。

 男性は重労働が課せられるが、女性や子供は、決められた休憩時間まで水を飲みに行くこともできない男の奴隷に、革袋に入れた水を持って水を飲ませてやるのが仕事だ。

 奴隷同士で家庭を持つこともできるという。

 とはいえ、鉱山には魔物も出没するというし、危険も多い。

 決して楽な生活ではないだろう。

 貴族だった彼女には、重すぎる罰と思わなくはないが、ゲームのアウラリーサは人生を壊された。

 たかがで片付けるのは、違うと思う。

 彼女がしたのは、『そういう』ことだと、その身に刻んで欲しい。


 深々と頭を下げると、陛下は楽しそうに笑った。


「ふむ。では、続きは大人だけで話をしよう。アウラリーサ、折角城まで参ったのだ。アイザックに会っていくと良い。顔合わせはまだであったな?」


 ――あっ。

 そうか、婚約者様。まだ数日先と思っていたけど、居るんじゃん。ここお城だもん。


 陛下が壁際に控えていたさっきのイケメン騎士さんに合図を送る。

 騎士さんが近づいてきて、恭しく頭を下げた。


「ご案内致します」

「お父様」

「行っておいで。後で迎えに行くからね」

「畏まりました」


 小声でお父様とやり取りすると、お父様が私を抱き上げ、床に下ろしてくれた。

 さっきまで厳めしい顔をしていたおじさんたち、にこにこしてる。


 私は国王陛下、おじさんたちと順番にカーテシーをしてから、騎士さんの後に続いて部屋を出た。


 あー、緊張した。


 さて、いよいよアイザック。婚約者様にご対面だ。

ご閲覧、いいね、ブクマ、評価、いつもありがとうございます――――!!

今朝も昨日に引き続き、推移チェックします!

ブクマ397件→457件

評価53人→64人

総合評価1272pt→1484ppt

いいね→94件→105件

PV数累計47,000→56,697

日刊総合ランキング64位→52位

きゃーっww

めっちゃ上がってるー!

うれし――――!!

いつもいつもありがとうございます!

今日は週末、お仕事終わったらがっつり書くぞー!

それでは行ってまいります!


※犯罪奴隷について、加筆しました。

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