11.当面自力でがんばります。
「んはぁ~~……」
ただいまセクシーショットでお届けしています。
バッチンバッチン叩かれて、べそべそだった私、お父様にだっこされて部屋へと戻るなりドレスを引っぺがされ、現在リティが手当てをしてくれているところ。
ちなみにお父様とお兄様は、男性は入室禁止って追い出された。こんなにちっちゃくてもレディ扱いなのねー。
脱いでみたら、大きなミミズばれが重なり合って、マスクメロンの模様みたいなことになってるし、腕には痣がいくつもできていた。さっきは気づかなかったけど、転んだ拍子に、足も少しひねったみたい。
シュミーズにかぼちゃパンツ姿でカウチソファーに寝そべって、全身薄緑色の軟膏を塗りたくられているんだけど、これが凄い。
塗った瞬間、メントールっぽい感じでスーッとするんだけど、なんと塗った直後に腫れも痛みも引いていって、ものの十分程度でマスクメロンみたいになってたミミズ腫れも、びんたでおたふく風邪みたいになってたほっぺたも、綺麗に赤みも腫れもひいて、痛みもほとんど消えてしまった。
何でも薬草を魔石と一緒に薬液に漬け込むと、こういう薬になるらしい。
すごいな魔術! 現代の科学を超えてるよ!
炎症を鎮めるみたいで、ぱんっぱんになってた筋肉までほぐれて体がめちゃくちゃ軽い。
ついでに優しくマッサージなんかもしてくれるから、極楽極楽。
「それにしても、メイナード夫人がお嬢様にあんなことをなさっていたなんて……。侍女である私が真っ先に気づかなくてはいけないことでしたのに。申し訳御座いません、お嬢様……」
リティがめちゃくちゃしょぼくれる。
「うーん……。ねぇ、メイナード夫人は一年前から私の家庭教師をしていたんでしょう? 記憶を無くす前の私は、リティやお母様たちに何も言ってなかったの?」
「お恥ずかしい話ですが、鞭で打たれたとは、初日に仰っていました。ですが、失敗をしたり、間違った時は、罰として手を鞭で叩くのはどこの家庭でもあることなんです。メイナード夫人は厳しい方と評判でしたから……」
つまり、普通のことって認識だったのね。
「でも、あの様子じゃ、今までも散々叩かれてたと思うよ。怪我はしてなかったの?」
「それが、今日のようにお怪我をなさっていれば、私もすぐに怪しいと気づいたのでしょうが、お怪我をなさっていたこともなくて……。恐らく薬を使っていらしたのでしょうが、まさか夫人が高価な薬を使って証拠を隠滅までして、お嬢様に暴力を振るわれるなど、思いもよらず……」
私も前世で子供の頃、悪さをするとごつんってげんこつ落とされた記憶があるもんね。
こんなに効果の高い薬があるなら、授業の後に薬塗っちゃえば、証拠は残らないわけか。
しかも、虐待しといて高い薬を使って傷の手当てをしていた、なんて普通やらないもんね。
意味がわからないもの。それなら初めから暴力なんて振るわないだろう。お金の無駄だ。
でも、最初は手だけ、そこから少しずつ、エスカレートしていったのなら。
やりすぎたことで薬を使い、それが証拠を隠滅できると気づいてしまったら。
そしてそれが『当たり前』と、アウラリーサが思ってしまったのなら。
家族やリティが気づかないのも無理はないのかもしれない。
「まぁ、もう済んだことだよ! 切り替えよう! リティももう落ち込まないで? とりあえず、今後の事を考えなきゃ」
「――今後、ですか?」
「そう! あんなク……夫人でも、一応授業はしてくれてたっぽいもの。夫人をクビにしたからって、すぐに次の家庭教師なんて、早々見つからないんじゃないかな。だからって、公爵家の令嬢が、何もしないわけにはいかないでしょ? 仮にもアイザック殿下の婚約者なんだし」
まぁ、アイザックとの婚約は解消させてもらうにせよ、教養や知識は必要だろう。
それに、私自身、せっかくなら色々学んでみたい。
小さいうちの方が覚えるの早いっていうし、何でも学べる環境なんだ。やりたいことは、山ほどある。
うーん。
マナーやダンスはお母様に相談してみようかな。
知識はある程度なら、自分で勉強できるんじゃないだろうか。せっかくあんな書庫があるんだし、活かさない手はない。
ルーチンを決めようかな。
一日の流れのToDoリスト。よし。
「リティ、紙とペンを持ってきて?」
「畏まりました。お嬢様」
***
集中をしたいからと、リティには下がって貰って、一人自室の机に向かう。
紙はゴワついて書きにくいけど、仕方がない。
頭に浮かぶまま、まずはやることを書き出していく。
朝起きたら、まずは運動だね。
お散歩も良いけど……。その前に、あれだ! ラジオ体操!
あれ、真面目にやるとめちゃくちゃ全身の筋肉を使うって聞いたことがある。
体力のないアウラリーサにはピッタリじゃなかろうか。
それから、庭の散歩。
慣れてきたらジョギングを始めてもいいかもしれない。
で、ご飯を食べて、書庫で読書。
そうだな……。書けるようにもならなきゃだから、日記をつけるか。寝る前には、日記。
午後から、お母様にお願いして、マナーや作法。
後は、使用人。顔と名前を憶えて、仲良くなりたい。
そしたら、お散歩や書庫に行くとき。
ご飯の時の給仕係。
出会った使用人に挨拶、してみよう。仲良しの基本は挨拶からっていうしね!
護身術を教えてくれそうな人、お父様にお願いしてみるか。
なんか居そうだし。公爵家の影。隠密的な人。
そしたら、午後はマナーと作法、護身術。
夕飯を食べたら、お風呂に入ってまた読書。で、日記を書いて、就寝。
うん、いいんじゃない?
新しい家庭教師が見つかるまで、当面自力で頑張ろう。
ブックマークにいいね、評価、有難うございます!!
はゎゎゎ、全部のお話にいいねつけて下さった方が…!
めっちゃ嬉しいですー!!
10話をほんとは今日の21時に投稿予定だったんですが、うっかり朝の9時に投稿しました…。
やーらーかーしーたー;
もーいいわってんで21時の分書き上げての投稿です。
明日の朝は上げられないかも…。(お仕事ェ…)




