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105/109

105.ユーヴィン・ストムバートの計画。

 無事パルエッタ伯爵夫妻とラヴィニアを連れ、王宮へと戻ってきた。

 パルエッタ夫妻はそのまま国王陛下の元へ、馬車を襲った連中は皆一般牢に、ユーヴィンとラヴィニアは貴族牢へと入れられた。

 ヴァイゼ殿下は一旦パルエッタ夫妻と一緒に国王陛下に謁見をするらしい。フレッドも一緒に報告に上がるそうだ。

 私は部屋に戻り、湯浴みをして汗を流し、着替えを済ませ、応接室へと案内をされた。


「アリー」「アリー様!」

「ヴォニー! フローラも!」


 通された応接室には、ヴェロニカとフローラの姿があった。

 私が駆け寄ると、ソファーに座っていたヴェロニカとフローラも駆け寄ってくれた。


 ぎゅっと手を握り合う。


「あなたという子は……。また無茶をなさって……っ!」

「ご無事でよかったですわ!」

「二人とも、何故王宮へ?」


 ヴェロニカとフローラに手を取られ、ソファーに腰を下ろす。


「わたくしはヴァイゼ殿下からお話を伺いまして……。アリーに早くお伝えしたくて、アイザック殿下に登城を願い出ましたの」

「わたくしも、書類を纏めて気づいたのですが、ラヴィニア様が危ないのではとご報告に」

「まぁ」


 ご……ごめんね、何の報告もしないで一人で突っ走っちゃって……。


「ヴァイゼ殿下と、お話を致しましたわ。あの方は黒幕では御座いません。イグナーツ様から頂いた魔道具もお渡しして参りましたわ」


「ええ、わたくしもそう思います。助けて頂きましたの」


 ヴェロニカの言葉に、頷く。

 詳しいことはヴァイゼ殿下がお見えになればすべて分かるだろう。


「わたくしは、先ほどヴォニー様から伺ったことも合わせて書類を纏めさせて頂きましたわ。先ほど女官にお渡しをした所です。学園内で起こったことは認めさせて頂いたので、何かお役にたてると良いのですが……」


「ありがとう、フローラ!」


 話をしていると、ノックの音が響き、扉が開けられる。


「アイザック第一王子殿下、並びにシュトルク王国第一王子ヴァイゼ殿下、お見えになられました」


「やぁ。待たせたね」

「夜遅くに集まって貰ってすまない」


 私達はソファから立ち上がり、カーテシーで出迎えた。


 アイザック殿下とヴァルター様、ヴァイゼ殿下とフレッドが部屋の中に入ってくる。

 私達の向かいにアイザック殿下とヴァイゼ殿下が並んで腰を下ろし、フレッドは私の後ろに、ヴァルター様はアイザック殿下の後ろに控えた。


「とりあえず、ラヴィニア・パルエッタとユーヴィン・ストムバートの聴取は明日行われることになったよ。ユーヴィンは廃嫡だそうだ。ストムバートは宰相を辞任して、爵位を返還すると言っていたのだけれどね。彼の能力を失うのは痛手になるから、二階級の降格となるそうだ。下位の文官として一から出直すそうだよ」


 アイザック殿下の言葉に頷いた。

 ヴァイゼ殿下が、するりと長い足を組む。もっさり少年から、キラキラ王子様に戻っていらっしゃる。

 サラサラのグレーの髪に銀の瞳。


「私の方も片付いたから、全て打ち明けるよ。ヴォニー。心配をかけたね。すまなかった」

「とんでもございません……」


 じわり、とヴェロニカの瞳に涙が浮かぶ。

 ふっと優しく笑みを浮かべ、ヴァイゼ殿下が話し始めた。


「実は留学の少し前にね。側妃腹の第二王子を担ぎ上げたい一派が、メルディアに向かう際に私を襲い消そうとしていることが分かってね。その対応に追われて、入学が遅れてしまったんだ。表向きは公務としたけれど」


 うわぁ……。お家騒動……。

 継承権争いかぁ……。


「弟は先代の国王に似て気性が荒くて野心家でね。調べるうちに、入学の少し前から、メルディアの王弟、ラザフォードと頻繁に手紙のやり取りをしていることが分かった。弟を担ぎ上げていた主戦派の連中の中に、どうもラザフォードと結託して魔物の密輸に関与して弟に金を流している奴がいるってところまでは掴んだんだ」


 なんと……。


「最初はラザフォードも傀儡で、その背後に別の上位貴族がいるのでは、と思っていたのだよ。当初その黒幕として名が挙がっていたのが宰相のストムバートと元学園長のクロムナード侯爵。ストムバートはいくら探しても怪しいところが出てこなかったから早々に外れたのだけれど、この時には既にユーヴィンは何らかの関与をしているのではと疑っていた。前学園長の後ろ盾を求めているのかな?って程度ではあったのだけれどね。でも、基本彼は常に学園内では私の傍に付き従い、これと言った動きは無かった。影を一人つけていてね。彼がラヴィニア・パルエッタと懇意にしていることは分かっていたのだけれど、ひそかに愛を育んでいると思われていた。アメリアにしても、何かを渡す仕草はみせたものの、渡していたのは菓子のつつみだった。――菓子に見せかけた金貨だったみたいだね」


 あれか――!

 お代官様の山吹色のお菓子!

 おぬしも悪よのう、のあれ!

 転生者ェ……。そんなベタなネタを仕込むとは……。


「二学年に上がってからかな。ユーヴィンが段々私の名を使い、好き勝手に動き出したんだ。自棄を起こしているようだったから、このまま泳がせておけば自分から尻尾を出すかと思って。ヴォニーが帰りの馬車でアメリアの自白のことを伝えてくれて、イグナーツの魔道具を委ねてくれたから、恐らく動くのは今夜だろうと踏んで、影に探らせたら、帰宅後すぐにユーヴィンが屋敷に冒険者を雇い入れていたことや、私の名を使いシュトルクの兵を集めていることが分かった。彼の計画では、破落戸に扮した冒険者に馬車を襲わせて、ラヴィニアを救出する振りをしてラヴィニアと王宮の騎士を殺害、シュトルクの仕業にさせて戦争に持っていくって筋書きだったんじゃないかな」


 私がまったりお風呂に浸かっている間に、かなり色々あったらしい……。

 何だかいたたまれない。


「だから、私もヴォニーを送り届けてすぐにストムバートの屋敷に向かったんだ。彼のポケットに魔道具を忍ばせて、のらりくらりと居座ってやって、その間にシュトルクの兵は皆捕らえて、私の部下と入れ替わったんだ。因みに私はストムバートの屋敷を出てから馬車の中で着替えて、ユーヴィンがパルエッタの乗る馬車に向かう時に部下の一人と入れ替わった」


 そして、あの場面に繋がるわけ、とヴァイゼ殿下はにこにこと、満足そうに笑った。

いつもご拝読・いいね・ブクマ、有難うございます!!

本日は午後から出勤。ちょっと投稿遅くなりました。

次は夜。9時か10時くらい、投稿予定です!

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