シラけた宴
王女ユフラが治める「アナーク王国」の北東にある「ガゾラ城」の大広間に宴の準備が整っている。主賓席の二席と末席は空いているが、その他の三席にはガエーヌ夫人の片腕であるギュンノ将軍
「パウマの奴め、何をダラダラしているのだ?」
ワグル中尉は目の前のご馳走にヨダレを垂らしていた。セラドル神官は「下品な」とばかりに視線を外した。
「もう王女側を陥落させて戻って来てもいい時間だ」
セラドル神官はトランプのようなカード数十枚を懐から取り出し、目を閉じてカードを切ったあとにテーブルに並べ始めた。
「何を占っておる? パウマが負けるとでも思っておるのか?」
嘲笑うワグル中尉をギュンノ将軍が諌めた。セラドル神官の表情が強張ったからである。
「パウマが死にました」
ワグル中尉は大笑いしてテーブルを叩いた。
「セラドルよ、ご馳走を前に手元が狂ったのではないか?」
「空腹の方が気が極まる。ギュンノ将軍、何やら異質な気配を感じます」
「宴は中止だ。ワグル、好きに食え」
ギュンノ将軍は「ついてまいれ」と言う代わりにセラドル神官のカードに指を差した。セラドル神官は左手を並べたカードにかざすと、サッとカードをまとめてギュンノ将軍と共に大広間を出ていった。
「フン! どいつもこいつも気取りやがって」
ワグル中尉は数人分の料理と酒を全て平らげて部屋に戻り、武具を解いてベッドに飛び込み大いびきをかいたのである。
皆様、いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作の敵役である「ギデハ大公一味」は何故ユフラ王女を狙うのか?
そしてアンドマンとどのような戦いを繰り広げるのか? そのアンドマンはどうなったのか?
それはまた、次回以降のお楽しみにと言うことで。
本作同様、
「良寛さんにはなれない」
「阪下駅のおにぎり屋」
「先輩を高杉クンと呼んだ夏」
もお読みいただきたく、次回もお楽しみに!