追い詰められた夫人
ガゾラ城のギデハ大公の私室にガエーヌ夫人が入ってきた。
「あなた、ギュンノ将軍が破れました」
うなだれるガエーヌ夫人をギデハ大公は優しく介抱し、ソファーに寝かせた。
「ガエーヌよ、お前の懐刀であるギュンノが死んでさぞ辛いことであろう」
ギデハ大公はドアの外側に気配を感じた。
「何だ? 今ガエーヌが臥せっている。手短に話せ」
「セラドル神官の遺体が発見されました」
ガエーヌ夫人はショックの余りに気を失った。
「検死は?」
「今から取り掛かるところです」
「ワシも立ち会う」
ギデハ大公は自室を出ていった。
「フッ! セラドルまで死ぬとは。どいつもこいつも役立たずばかりだ」
ガエーヌ夫人はムクッと起き上がり、テーブルの黒い蒸留酒をグラスに注いで一気に呑んだ。
「くあー! ギデハはいい酒飲んでんなあ。うっ」
ガエーヌ夫人はグラスを落とし、ノドを抑えた。
「やはり呑んだか」
ギデハ大公が部屋に戻ってきた。
「あなた、検死の立ち会いは?」
「ワシが立ち会うまでもない。貴様が兄夫妻に飲ませた毒薬を半分に希釈してある」
ガエーヌ夫人は先が長くない事を悟った。
「どうして?」
「貴様はワシよりギュンノに信頼を寄せていた。ワシに近づいたのは、アナーク王国の王位継承権があると見込んだからであろう」
ガエーヌ夫人はひたすら首を横に振り、ギデハ大公の足元にしがみついた。
「ガエーヌ、貴様に最後の機会を与えよう」
ギデハ大公は袖口から小さな緑色のガラス瓶を取り出し、ガエーヌ夫人に手渡した。
「解毒剤じゃ」
ガエーヌ夫人は瓶のフタを外し、一滴残らず解毒剤を胃袋に流し込んだ。
「はあはあ、助かりました」
「貴様を助けたのはアンドマンを始末してもらうためだ」
ガエーヌ夫人は床に座り込み、ギデハ大公に深く頭を下げた。
「兵や武器は好きなだけ使え。アンドマンをこの城へ入れるな」
「はっ! 全てはギデハ大公の御為に」
「アンドマンを始末してくれれば、ハヌリーロ宮殿の財宝はくれてやる」
「誠でございますか?」
「ワシはアナーク王国の王位継承権を得る。地下資源を他国に売り、富と文明をアナーク王国に」
「ご立派でございます」
ガエーヌ夫人は体調がよくなったのか、左手の爪を長くしギデハ大公に突きつけた。
「流石は我が妻。解毒した途端に殺意を示すとはな」
ギデハ大公の短剣がガエーヌ夫人の左脇腹に当たっていた。
「あなたこそ、アナーク王国を治めるのにふさわしい」
ガエーヌ夫人は左手を引っ込め、甲高い笑い声を残して姿を消した。
「フン、毒をも自らの養分としたか」
ギデハ大公は衛生兵を呼び、毒入りの酒だと告げて始末させた。
「ギデハめ、手の込んだ事を。とにかく、アンドマンを始末せねば」
自室に戻ったガエーヌ夫人は、ギデハ大公に飲まされた毒を自らの養分とし、新たな能力を生み出していた。
「これで、毒を我がものと出来た」
ガエーヌ夫人は左手を白い毛で覆わせた。
「おお、毒によって死にかけた事で、我が血に眠る太古の白狐が目覚めたぞ」
ガエーヌ夫人の高笑いが狐の鳴き声へと変わり、ガゾラ城内に響いたのである。
「キューン!」
いつもご愛読いただき、ありがとうございます。
ガエーヌ夫人の企み、ギデハ大公にはバレバレだったみたいです。
ギデハ夫妻は心休まる時ってあるのかな? って感じですね。
次回、我らがアンドマンを襲うのは、毒によって新たな能力を得たガエーヌ夫人。
ガゾラ城の兵士を率いて襲い来るガエーヌ夫人と、アンドマンはどう戦うか?
さあ、今回もやります。
アンドマン・スペックその13
アンドグローブ・・・特殊革製でアンドスキンが触れる事で、火炎放射や高圧電流、光弾などを放つ。
まだまだ暑い日が続きますので、くれぐれも御身体を大事にして下さい。
今作の他、
良寛さんにはなれない
阪下駅のおにぎり屋
先輩を高杉クンと呼んだ夏
もお読み頂けたら、嬉しいです。
次回もお楽しみに!




