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円卓会議の後に

 ハヌリーロ宮殿の「協議の間」の中央に直径2メートル位の円卓がある。


 北向きの壁にアナーク王国の国旗が飾られ、その真下の席にユフラが、残りの7席にはサティル博士とその嫡男、代々王族に仕える重臣4名、そしてユフラと対面する席には桃馬がいた。


「トウマ、激戦後で疲れているところに協議に参加させてすまぬ」

「いえ、部外者である僕に発言の機会を与えていただき、有り難く思います」


 ユフラは協議の進行をサティル博士に委ねた。


「先の戦いにおいて、黄金の鎧がユフラ様をお認めになった。つまり、次期国王としてユフラ様が承認されたと言っていい」


 桃馬は「鎧はあなた方より偉いんですか?」と心でツッコんだ。


「そこで、ユフラ様に正式に王位についていただき、アナーク王国を治めて」

「お言葉ですが、ユフラ様には王位継承のための儀式や祈祷などを受けていただかなければ、先代国王陛下が思いの他、早く身罷られ」


 重臣達は思い思いの発言をし、協議は混乱し始めた。


「やめよ! 子供の話し合いか!」


 ユフラの一声で場が鎮まった。


「トウマ、そなたの意見を聞きたい」

「僕は違う世界から来た者です。それを前提に聞いて欲しいんですが、ギデハ一味がいつ攻めて来るか分からない状況で、ユフラ様に帝王学、つまり国王としての教育をしている余裕は無いと思います」


 重臣達は桃馬に異議を申し立てをしようとしたが、サティル博士がそれを制した。


「博士、ありがとうございます。ギデハ一味を倒すまでは王女様でいていただき、一味全滅の上で王位継承されるのが良いかと」

「トウマ、私もそれが得策だと思う。今はギデハ一味全滅が何より優先させるべきじゃ」


 サティル博士は深く頷き、重臣達も桃馬への異議を引っ込めた。


「王女様、今一度お伺いしますが、ギデハ夫妻と仲直りするのは」

「有り得ぬ! これは私怨ではない。恐れ多くも国王夫妻であられ、且つ実の兄を毒殺するなど言語道断! これを許せば民に示しがつかぬ」


 桃馬はユフラの王位継承者としての覚悟を痛感した。


「分かりました。まずはギデハ一味殲滅を果たすべく、僕をガゾラ城へと向かわせて下さい」

「トウマ一人でか?」

「奴らは剣や弓矢が通じぬ相手。アンドマンの力でしか対抗できません」


 サティル博士は重臣達に「宮殿は我らで守ろう」と目線を配った。


「トウマよ、本当の敵はギデハではない。魔神ブーガじゃ」

「博士、知っていることを全てお話し下さい」

「知識に惑わされるな。我々も調査はしているが、推測の域を超えぬ」


 桃馬はとあるカンフー映画のセリフを思い浮かべた。


「分かりました。早速、ガゾラ城を攻めに参ります」

「ヤスケも連れて行け! トウマ、宮殿の事は我らに任せよ」

「僕はギデハ一味殲滅だけを考えます」


 桃馬は立ち上がってユフラに一礼した。


「王女様、僕が戻らなかったら、元の世界に帰ったと思って下さい」

「そうか、その時は妻や家族を大切にせよ。これが最後の命令じゃ」

「肝に命じます!」


 桃馬は再度ユフラに一礼してから、サティル博士や重臣達に会釈してその場を立ち去っていった。


「ユフラ様」

「サティル博士、議事進行じゃ」

「トウマの働きに褒美を与えるべきかと」


 ユフラは「すぐ戻る」サティル博士に伝えて、桃馬のあとを追った。


「サティル博士、良いのですかな? ユフラ様が辛くなるだけでは?」

「王位を継承したら、自由などなくなる。今の内にしか経験出来ない事をしていただこうではないか」


 サティル博士は宮殿の図面を広げ、兵士の配置を重臣達に提案した。



 馬小屋に向かう桃馬に声をかけたのは、薪割り小屋の前で酒盛り中のゼルバである。


「トウマよ、また戦いに行くのか?」

「ええ、ギデハ一味を殲滅しに行きます」

「もう戻らぬつもりか?」

「僕は違う世界から来た者、戦いが終われば宮殿にいる理由はありません」

「そうかのう」


 ユフラがバケットを抱え、桃馬らの元に近づいて来た。


「ワシは少し酔った」


 ゼルバはユフラに一礼し、小屋へと戻っていった。


「トウマ、少し時間をくれ」

「はい?」


 ユフラは宮殿内の小川へ桃馬を案内した。


「きれいな川だ。宮殿内に引っ張ってきたんですか?」

「五代前の国王陛下が自らお作りになられた。宮殿近くにキリム川があって、そこから水の氾濫が起きぬよう計算して作られたそうだ」


 桃馬はアナーク王国の土木工事技術に興味を抱いた。


「もうすぐ日が沈む。そこのテーブルで食事にしよう」


 桃馬はおそらくユフラとの最後の会食になるだろうと、堅いパンを覚悟して席に着いた。ユフラは桃馬の斜め前にバケットを置きサンドイッチや竹の水筒などを並べた。


「トウマ、ギデハ一味を全滅させてもこの世界に残っていたならぱ、遠慮なくこの宮殿に戻って参れ。薪割り係として使ってやる」


 桃馬はユフラらしい言い方だと思い、苦いお茶を覚悟の上で水筒を手にし、口をつけた。


「ん? ほんのり甘い!」

「トウマはまだまだ子供だからな。まさしく子供向けの茶葉で淹れた」

「あのう、アナーク王国では何歳までこのお茶を飲んでいるんですか?」

「遅くても十二歳までじゃ。大概は十歳で甘くて飲めなくなってくる」


 桃馬は「元服ですか?」とアナーク王国の民の精神年齢の高さに感服した。


「さあ、サンドイッチも食せ」


 桃馬は若干の期待をしてサンドイッチをかじった。


「柔らか! これも子供向けの?」

「左様じゃ。離乳食として作られておる」

「り、離乳食? じゃあ、三歳くらいで堅いパンを?」

「初めは歯が欠けそうになるのを覚悟しながら、牛乳と共に食べたものじゃ」


 アナーク王国の民の歯並びの良さの理由を理解する桃馬である。


「トウマ、そなたはガゾラ城へ攻め込む事に専念せよ。ヤスケも戻さなくて良い。あの馬はそなたのそばにいたいみたいだ」


 桃馬はアンドマンの能力で普通の馬でなくしてしまった事の罪を受け入れる覚悟をした。


「私に化けたガエーヌによって馬小屋にしばりつけられたことが、余程くやしかったんだろう。周りは穴や傷だらけでゼルバが困り果てておったわ」


 桃馬は「ゼルバさん、ごめんなさい」と心でお詫びした。


「ゼルバさんは何でもなさるんですね?」

「ゼルバだけではない。兵士でも炊事や掃除などをする」


 自分の業務以外、出来るだけしたくないと思う桃馬である。


「我々にはアンドマンのような力はない。だが我らとて常に修練は積んできた」


 桃馬はアナーク王国に「平和ボケ」と言う概念はないのだなと感じた。


「僕は戦いとは無縁に生きてきました。アンドマンの能力を授けられたに過ぎません」

「その力をトウマは使いこなしている。類い稀な才能があるではないか」


 桃馬は「特撮ヒーロー作品をたくさん見ただけです」とは言えなかった。


「見よ、日が沈み星が出てきた」


 桃馬は日が沈んだ反対側を見て、妻の咲江と初めての旅行先で見た満天の星空を思い出した。


「文明とやらが発達すると、星が見えなくなると聞いた」

「僕の世界はまさしくそうです」


 桃馬はサンドイッチ一個を平らげ、次の一個に手をつけた。


「あまり食べると腹が辛くなるから気をつけよ」

「はい、これでやめておきます」


 桃馬は円卓会議の前に仮眠を取り、湯にも入っていた。


「ユフラ様、とてもおいしかったです。ごちそうさまでした」


 桃馬はユフラに合掌礼拝した。


「トウマの世界での礼の仕方か?」

「食事を運んで来てくれた人、調理してくれた人、食材を作ったり調達したり獲ってきて来てくれた人、そして食材となった生き物達への感謝の礼を表しています」

「良い習慣だな。我々は恵みを与えてくれた神に感謝をしている」

「それも含まれています」


 ユフラはバケットに水筒などをしまい、席を立った。


「トウマ、縁があったらまた会おう」

「ユフラ様を初め、アナーク王国の方々の御多幸をお祈り申し上げます」


 桃馬はユフラに一礼して馬小屋へと向かった。


「見送りはせぬぞ」


 ユフラは桃馬との再会を神に委ねて宮殿に戻っていった。日がすっかり沈み、満天の星空がアナーク王国を包み込むのだった。


 

 


 


 

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。


桃馬はいよいよギデハ一味との決着をつける決意を固めました。


ユフラとは永遠の別れになってしまうのか?


さあ、今回もやります。


アンドマン・スペックその12


アンドマント・・・表側が紺色で裏側が赤色の特殊繊維製マント。

飛行するための浮力を生み出し、取り外して救助マットの代わりにしたり、全身を包んでその場から逃げる時にも使用。

テレパシーで特定の人物等を保護させたりもする。

突風を起こす事もできる。


まだまだ暑い日が続きますので、くれぐれも御身体を大切に。


では、次回もお楽しみに!

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