武装王女
ハヌリーロ宮殿の広場に兵士達が集まっていた。
「皆の者、待たせたな!」
黄金の鎧を纏い、破邪の剣「クイーナ」を引きずりながら兵士達の前に現れたのはユフラである。
「聞けぇ、兵士共よ! アンドマンの安否が分からぬ今、我等自身でアナーク王国を守らねばならぬ!」
兵士達は各々の武器を掲げ「うおおおっ!」と雄叫びを上げた。
「王女様! ギデハ一味が攻めて来ました!」
門番の一人が負傷しつつもユフラの前に歩み寄って来た。
「大丈夫か?」
「私の事はいい。それより、恐ろしい奴だ。たった一人で門番を次々と」
負傷した門番を数人の兵士が治療室へと運んだ。
「奴がギデハ一味?!」
血にまみれたギュンノ将軍が宮殿に入ってきた。
「皆の者、下がれ!」
ユフラはギュンノ将軍の前に立ちはだかった。
「これはユフラ王女、随分と勇ましい格好ですな」
「ギュンノ将軍か? この黄金の鎧と破邪の剣『クイーナ』でお前を葬ってくれよう」
ユフラは「クイーナ」の鞘から剣を抜き取ろうとするが、柄を1㍉も引き抜く事が出来なかった。
「どうされましたかな? 国王夫妻であられたご両親が亡くなられ、急に王位を継ぐことになった心中、お察し致します」
「黙れ!」
「無駄あがきはおやめなさい。さあ、ギデハ大公にアナーク王国を譲るのです」
ギュンノ将軍はユフラを捕縛しようとした瞬間、彼等の耳に聞き慣れ無い爆音が飛び込んできた。
「なっ、なんだ? このけたたましい音は!」
黒地にオレンジ色のラインが入ったフルカウリングのオートバイが塀を越えてギュンノ将軍の前でターンして、土煙を彼に撒いた。近くにいたユフラにも少し掛かった。
オートバイに跨っていたのは?
「何? セラドルの邪念空間から生きて出てきたとは」
ギュンノ将軍は土煙を気にすることなく、剣をオートバイに向けた。
「アンドマン、無事だったか?」
「サティル博士、門番達が大変です! ギデハ一味は僕が引き受けます」
サティル博士は数名の兵士を引き連れて宮殿の門へと駆けていった。
「アンドマンよ、ギュンノ将軍は私が成敗してくれる」
ユフラはヨロヨロしながら、剣が抜けぬまま「クイーナ」をギュンノ将軍に向けた。
アンドマンはオートバイのエンジンを切り、ガソリンタンクの給油口をポンと叩いてバックルに戻した。そう、「メタニックス」同様アンドマンベルトのバックルを変形させていたのである。因みにオートバイは「アンドピューマ」
「王女様、僕が見届け人になります。見事、ギュンノ将軍とやらを討ち果たしてくださいませ」
ユフラは「クイーナ」を落としてギュンノ将軍をチラッと見た。
「ギュンノ将軍、その王女様を斬れるものなら斬ってみろ」
アンドマンがバックルをベルトに装着させると、ユフラが背後に駆け寄って来た。
「助けて、アンドマン」
ユフラはアンドマンにしがみつき、ギュンノ将軍は剣を振り上げた。
「アンドマン、死ねえ!」
ユフラの左手の爪が鋭く伸び、アンドマンの頸動脈を狙っていた。が、その左手に矢が突き刺さった。
「ウギャー! 誰じゃ?」
ギュンノ将軍が動揺したのをアンドマンは見逃さなかった。
「ユフラ王女の真似はもうやめろ!」
アンドマンは矢が放たれた方向を差した。
「何?」
「そんな馬鹿な」
ユフラが弓を左手に、もう一本の矢を右手にギュンノ将軍や鎧を纏ったユフラを凝視していた。
アンドマンは戻ってきたマントを装着し、しがみついていたユフラを容赦なく振り払った。
「この無礼者め!」
ギュンノ将軍の剣をアンドマンがバックルを変形させた「シャイニングブレード」が受け止めた。
「僕は異世界の人間だ。お前達の礼儀など知ったこっちゃない!」
アンドマンはギュンノ将軍の剣をなぎ払い、彼に一太刀浴びせた。
「おのれ、魔風の舞を受けてみよ!」
ギュンノ将軍は髪を逆立て瞳を赤黒くさせて、剣に念を集中させることで竜巻を起こし、アンドマンへと移動させた。
「うっ、なんて風力だ!」
弓矢を持ったユフラはアンドマンの無事を祈りつつも、鎧を纏ったユフラに挑んでいった。
「偽物のくせに生意気な!」
鎧を纏ったユフラは「クイーナ」を拾おうとするが、粒子状になって弓矢を持ったユフラに纏わりついた。
「なんだと!?」
鎧を纏っていたユフラは無防備になってしまった事に動揺した。
「おお、まさしくアナーク王国を統べる者の証じゃ」
門番達の搬送を終えたサティル博士が弓矢を持つユフラを見るよう、周囲に促した。
「矢張りな」
アンドマンは竜巻から脱出し、ギュンノ将軍にブーツ底からのガトリング砲を浴びせた。
「こしゃくな!」
ギュンノ将軍は剣で全ての弾丸を弾き返したが、かえって彼の周囲で爆発が起きてしまった。
「アンドマン、偽物のユフラは私に任せよ!」
弓矢を持つユフラは金色の粒子に身を包まれ、軽いながらも丈夫な黄金の鎧を装着し、輝きを増した「クイーナ」の鞘から剣を軽々と引き抜いた。
「何故だ? あんなに重かった剣を奴は軽々と?」
「往生際が悪いぞ!」
黄金の鎧を装着したユフラは、もう一人のユフラに「クイーナ」を向けた。
「さあ、どちらが本物のユフラか、勝負だ!」
アンドマンは「どう見ても、今鎧を纏っているほうが本物だろう?」と思いながらも、ユフラに委ねる事にした。
「ギュンノ将軍、お前の相手はこのアンドマンだ!」
「貴様の骸を供養塔に備え、パウマやワグルらの慰みにしてやる」
ギュンノ将軍は剣から妖気を発し、周囲を異空間と化した。
「また何とか空間か?」
アンドマンはアンドセンサー(触角)で目の前のギュンノ将軍が幻像であることを確信した。
「出てこい!」
アンドマンは何の気配も感じない事に不安を覚えた。
「うっ!」
アンドマンは左肩に鋭い痛みを感じた。
「スーツのおかげで傷つかずに済んだか? 否これは囮!」
シャイニングブレードがアンドマンの意思に関係なくギュンノ将軍の攻撃を防いだ。
「何? どうして見破った?」
「僕が知りたいくらいだ」
アンドマンはギュンノ将軍の剣を押しのけた。
「感じる。シャイニングブレード!」
アンドクリスタルが七色の光を発し、アンドセンサーが金色になった。
「行くぞ! ギュンノ将軍!」
異空間に雷雲が発生、アンドマンはシャイニングブレードを掲げて雷槌を当てさせた。
「剣撃の神が宿ったみたいだ」
アンドマンは痺れを感じつつも、そのエネルギーをシャイニングブレードに集中させて、まばゆい光の剣にした。
「そこだ!」
アンドマンはシャイニングブレードを一振りして、周囲に稲妻を走らせた。
「何の! たかが雷如きで」
ギュンノ将軍は剣で稲妻を受け、それを薙ぎ払うと今度は剣から火炎を放射した。
「ブレードハリケーン!」
アンドマンはシャイニングブレードをバトンのように回し、突風を起こして火炎を防いだ。
同じ頃、黄金の鎧を纏ったユフラはクイーナを発光させて、もう一人のユフラに照射した。
「クイーナの光よ! その者の真の姿を照らせ!」
クイーナのまばゆい光に、もう一人のユフラは目を覆うしか出来なかった。
「おのれぇ、小娘の分際でぇ!」
ついに真の姿を現したのはガエーヌ夫人である。
「ヒレンエに化けて私に眠り薬入りの茶を飲ませたのはお前であろう!」
ガエーヌ夫人は全てが露見したと諦めた。
「国王継承者であるお前を生け贄とし、魔神ブーガを我が手中に収めようと思ったが」
ガエーヌ夫人は左手の爪を灰色に染めて更に伸ばして妖気を発生させた。
「見苦しいぞ、ガエーヌ!」
ユフラはクイーナの光をガエーヌ夫人に放った。が、甲高い笑い声だけがユフラらの耳に残っただけである。
「逃げたか」
ユフラがクイーナの剣を鞘に収めると、黄金の鎧と共にクイーナも光の粒子と化し、彼女から離れていった。
「サティル博士、これがアナーク王国に伝わる?」
「ユフラ様、否ユフラ女王陛下」
サティル博士を初め、周囲の者全てがひざまずきユフラに敬意を表した。
「皆の者、まずは命を落とした者達を手厚く葬るのが先じゃ」
サティル博士は兵士達に指示し、数名の兵士にはユフラの警護をさせた。
「アンドマン、否トウマよ。無事に戻れ」
ユフラは王位継承の件で重臣達との話し合いをすべきか悩みつつ、警護に当たっている兵士達との作戦会議をまずは優先させた。
アンドマンのシャイニングブレードとギュンノ将軍の剣がまさしくしのぎを削っていた。
「ギュンノ将軍、文明を望まぬ者に無理強いさせる事はあるまい!」
「愚か者には無理強いも必要じゃ!」
「文明が万能だとも思っているのか!」
アンドマンはギュンノ将軍の剣を押しのけながらも「エアコンの無い生活は考えられないけどな」と己の愚かさを受け入れた。
「今一度言う! 幸せは自らの判断と努力で手にするものだ!」
アンドマンはギュンノ将軍とは相入れられぬ事を受け入れ、シャイニングブレードを一振りさせた。
「アンドファイナルスラーッシュ!」
シャイニングブレードはまばゆい光と化し、一太刀でギュンノ将軍を粒子状にした。
「わ、私が消えるだと? 馬鹿な、百戦錬磨の私が、フハハハ!」
アンドマンは特殊遺伝子及びそれらの活性化にあらためて感謝した。
「ギュンノ将軍、これも文明の力の一つだ」
「フハハハ! これが文明だと? これはお前の異世界の妙な術ではないか。認めぬ、私はお前に負けたのではない。その妙な術にま、け」
ギュンノ将軍は砂の城が風で崩れる如く消えていった。
「僕はギュンノ将軍に勝った。だが、それでアナーク王国に平和が訪れたわけではない」
ギュンノ将軍が発生させた異空間が消えて、アンドマンは桃馬の姿に戻った。
「特撮ヒーローって、いつもこんな気持ちで怪人とか倒してたのかな?」
桃馬のもとへヒレンエが駆け寄って来た。
「トウマ殿、すぐに宮殿に戻って下さい! ユフラ様がお呼びです」
「分かりました」
桃馬はヒレンエと共に宮殿へ急いだ。
皆様、いつもご愛読いただきありがとうございます。
またまた出ました。
アンドバックルの変形アイテム「アンドピューマ」と「シャイニングブレード」、なんかギデハ一味が気の毒になるくらい、万能なアイテムですね?
プチ情報としまして、桃馬は普通自動二輪車(旧中型自動二輪)の免許取得者で、妻の咲江は大型自動二輪車の免許取得者でして、よく二人でツーリングに出かけております。
さあ、今回もやります。
アンドマン・スペックその10
アンドターバン・・・アンドブレイン保護のためのヘルメット代わりで、黒色極薄の特殊ファイバー製。
本作の他、
良寛さんにはなれない
先輩を高杉クンと呼んだ夏
阪下駅のおにぎり屋
もお読みいただきたいと思います。
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では、次回もお楽しみに!




