表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ王子〜輪廻の輪に乗り損なった俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/101

45・準備というものは


 二日後、俺は祖父じい様の商隊に参加するための書類を作成、自分からの要望を添えて了承をもらった。


その書類をヴェズリア様に提出するために王宮の執務室を訪れる。


「お前は本当に行商に行くつもりなのか」


はあ、父王がウゼェ。


なんでここに居るんだよ。


 この人、自分が修行のために他国に行ってる間に両親が亡くなってるので、すごく心配性なんだ。


気持ちは分かるけど、いつまでも子離れ出来ないと困る。


「ええ、申し訳ありませんが妹たちのことはよろしくお願いします」


俺のことより姫たちや母さんを守って欲しい。


「あ、ああ、それは分かっておる」


「陛下、それくらいで」


ほら、ヴェズリア様にも怒られた。





「でも、コリルバート。


この日程は、少し厳しいと思いますが」


父王はまだ部屋には居るが口を挟まず大人しくしている。


「ええ、そうなんです、ヴェズリア様。


でも、弟たちも連れて行きますし、娘、大鷲のテルーも使えるのか、やってみたいことが多くて」


テルーは普通の魔獣にも負けないくらい大きい。


でも魔獣の森の中で問題なく動けるか、それを確認したかった。


 父王にもグリフォンの散歩空域を確認しなきゃ。


まだブスッとした顔してるから、後にしよう。




 ヴェズリア様の執務室を出て廊下を歩きながら考える。


「テルーを王宮と俺との間の連絡係にしたいんだよな」


王宮の受け取り係を誰にするか、今、悩み中。


 まず、グリフォンが嫉妬するので父王とヴェルバート兄は除外。


母さんとヴェズリア様は忙しいのでやっぱり除外。


ギディは同行するので王宮にいないし、あとはエオジさんくらいなんだけど。


「俺は護衛だからついて行くぞ」


って言ってるし。


「あ」


一人いたわ。




「じいちゃああああん」


「なんじゃ、コリル」


俺は厩舎に飛んで行った。


「今度、小さな商隊任されてさ、森へ行くんだ」


「おお、聞いとるぞ」


厩舎のゴゴゴたちが俺たちの話を聞こうとするのか寄って来る。


お前たちも可愛いなあ。


「その時にテルーを呼び寄せて、手紙を渡して、王宮に届ける実験がしたい」


「ほお」


じいちゃんは興味深そうに手を止めて、俺と一緒に運動場の休憩所へ向かう。


ギディがすぐにお茶をセッティングしてくれた。




 俺は時間があれば出来るだけテルーに乗ってる。


グリフォンが居ない時間を見計らって飛ばせているから時間は限られるけどね。


餌はテルーが自分で狩りが出来るから問題はない。


なんていうか、俺の魔力で防御結界を発動して守り、テルーの風魔法で風を操って飛んでる感じ。


グリフォンと同じ風魔法を使うのは、大型の魔獣の特徴だろうって、じっちゃんが言ってた。


俺の風魔法も安定してきたしね。


 じっちゃんは研究のために十日に一回くらい、俺に付いてきてテルーの様子を見ている。


だからテルーもじっちゃんには慣れてるんだ。


俺がテルーで飛んでる間はツンツンも一緒だし、グロンは巣の近くでギディを乗せて、エオジさんと一緒に餌集めしている。


案外、グロンとギディの相性が良くてビックリだよ。


ゼフは最近、祖父じい様のところに貸し出されてることが多いので、帰ってきたらいっぱい褒めて甘やかすようにしてる。


 そうすると、日頃から荷物運びをやってるゼフが一番道を知ってるんじゃないかな。


ちょっと子供っぽいところはあるけど、ゼフは基本的に素直で大人しい。


荷運びの仕事も好きで、俺がいなくてもデキル子だ。




「問題はテルーが王城に近づく際にグリフォンに見つからないかということかな」


俺は腕組みしながら考える。


「ふむ、テルーは巣には戻れるじゃろ。


なら、王城ではなく、わしが巣に顔を出して受け取ればええのではないか?」


「えー、でもそれじゃあ緊急用の通信代わりにならないよ」


じいちゃんは俺の困った顔を見て笑う。


「コリル。 お前がやりたいことは分かるが、何事も急ぐな。


テルーもまだ子供だ。 これから一つずつ覚えていけばいい」


「あー」


ごめんよ、テルー。


俺は王宮以外でも弟たちやテルーがちゃんと役に立つってことを見せたくて焦ってた。


そうだよね、今はまだ嫌われてるわけじゃないんだから急がなくていいんだ。




 地図を広げると、いつの間にかエオジさんも来ていて、一緒に覗き込む。


「行商っていっても品物はいつもと同じ物だし、仕入れに関しても通年通りってことで、書類を渡して終わりだ」


祖父じい様の狙いは俺の顔を広めることかな。


「王太子じゃない、お前をか?」


エオジさんの言葉に頷く。


「俺は将来、平民になる」


まあ、なれなくても構わないけど、少なくとも国王にはならないつもり。


祖父じい様は俺を商人にしたいんだと思う」


跡継ぎとまではいかなくても、商売の手助けぐらいは考えているんだろう。


「そのための顔見せじゃないかな」


エオジさんは首を傾げる。


「そんなもの、二十歳の祝いが済んでからでいいだろ。


爺さん、何考えて、まだ十歳の可愛い孫を魔獣の森へやるんだ」


エオジさん、怒ってくれて、ありがとう。




 でもおそらく、もう一つ理由がある。


このブガタリアには、主な部族は七つあり、大きいものが三つ、小さいものが四つある。


大きいのは王都の祖父じい様のとこ、西の街道沿いにデッタロ先生の出身部族、東の国境沿いに一つ。


あとは王都周辺に小さな部族があるが、大抵は大きな部族に所属している。


だけど、必ずしも全部が国王に好意的なわけじゃない。


 以前、この国は力の強さがすべてだった。


「御先祖様が頭として認められていたのは、最初はちからだったと思う」


それこそ、魔獣の森で生き抜くために戦って、仲間を守ってたんだろう。


最初に森を拓いた部族の中で一番強かったのが御先祖様、初代国王陛下だということだ。


 実はピア嬢から贈られた本にはブガタリアに関するものもあった。


それが真実なのか、神話とかのお伽話とぎばなしなのかは分からないけど。


「赤い瞳って、戦闘力の高い者の証だったんだって」


初代国王陛下はきっと赤い瞳をしてたんだろうな。


 その血を引き継ぐ赤い瞳の者が武力でまさり、強い意志を持つ者を好むという魔獣グリフォンも懐いていた。


そんな時代が続いている。


エオジさんもじいちゃんも頷いてるから、そこは異論は無さそう。




 祖父じい様の部族は第二王子の俺を王太子に担ごうとしていた形跡がある。


ヴェルバート兄の十歳のパーティーでの祖父じい様の発言。


あまり王都にいなかった祖父じい様に誰かが吹き込んだとしか思えない。


おそらく、先日の祖父じい様の店に集まってた連中がそうなんだろうと思う。


「今の祖父じい様の心配は、妹のセマだ」


俺が王位継承を放棄宣言したせいで担ぎ損なった奴らが、今度は赤い瞳のセマを取り込もうとしている。


「セマを嫁に望んで王族になり替わろうとする。


祖父じい様は、そんな奴らを俺に見て来いって言ってるような気がするんだ」


相手が大人なら警戒するだろうが、子供なら本音というか、本性を見せるかもしれない。


俺としても将来、ヴェルバート兄の敵になりそうな奴は目を付けておきたい。




「赤い瞳だけで王族になれる訳じゃないぞ。


グリフォンの信頼がなければ王太子でも国王にはなれないんじゃからな」


うん、そうだよ。


だから祖父じい様は俺にもチャンスがあるって考えた。


 だけど、何故、グリフォンが王族に懐くのかは不明なんだ。


「王族だから懐くわけじゃない。 そこが問題かもしれない」


強い意志なんて曖昧だ。


思い込みの激しい正義感とか、前世でも厄介なもんだったし。


『グリフォンさえ手懐ければ、もしくは居なくなれば』


そう思う奴らが増えるのは困る。


周りが魔獣だらけの森で、グリフォンに手出しでもしようものなら何が起きるか分からないから。


なにせ、グリフォンは魔獣の森の支配者なのだ。


下手をすれば国が滅ぶ。


だから、きっと俺に他部族を自分の目で見て来いってことなんだろうな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔獣の世話をする人が、じっちゃんと書いてあったり、じいちゃんと書いてあったりして、分かりにくい。もしくは、私の読解力が無くて二人いてるのか。 [一言] 今のところ面白い。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ