表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

二乃〖love letter box〗

作者: ももちよ

いつかこの扉をあけて、勇者様がきてくれる。そんな昔のアニメのワンシーンを何回も何回も頭のなかで反芻する。

勇者様なんて、こないのだ。だってわたしは魔法使いではない。特別な存在じゃあないのだ。わかっていても、いつか、この心の扉を開いてくれるような、この目の前の扉をあけて、ごめん、待たせたって、きてくれたらいいのに。


本日二回目の目覚め。

薄暗い部屋のベッドから起き上がるといつものドアを見つめる。今日もドアはぴったりと閉められたまま、誰かの気配もない。

ギシ、立ち上がるとスプリングが軋む音をたてて、そのまま自らドアを開ける。

とうに始業時間をすぎた時計、今日も、起きられなかった。

いや、起きなかったんだけれど。


のろのろと準備を始める。

あ、唇が切れてる、いつも気が付くと歯でむしってしまうから。そんなことするまえにリップクリームでも塗らなくちゃ…

11時ちょっと前の授業の合間までには学校に着こう、着かなくちゃ、そう決意したはずなのに、気づけばカーテンも開けないまま、安いリップクリームをくるくると何度も何度も唇に塗りつけていた。

もう、いいか。



布団は自分を守る小さな膜の様だ。

わたしは、その布団にくるまって時が過ぎ去るのを待つ。


チカチカと光るスマホが連続音をたててわたしを呼びたてる。

二乃~~やすみ?大丈夫?

ずる休みでしょ~~二乃ちゃんはやくきて~~!

何時にくるかんじ?

有難いことだとわかっている。きっとみんな休み時間なんだろうな、学校にいる所謂いつめんと呼ばれる数人がみんなバラバラに連絡をいれる。ひとりひとりに返事を送るともう一度、わたしはわたしの膜に潜り込む。



きっといつも無理をしている。

生活にプレッシャーに感じている。

心のなかには水面張力でかろうじて溢れないコップがあるようなもの、他愛ない刺激ですら、わたしのコップは溢れだして雫が目から溢れ落ちる。

ああ、いつまで、こんな毎日が続くんだろう。



いつかこの扉をあけて、勇者様がきてくれる。そんな昔のアニメのワンシーンを何回も何回も頭のなかで反芻する。

考えるのはやめよう。わたしは魔法使いではないのだから。二乃は喉の奥からあがる熱いなにかを飲み込んでまた目を閉じた。










「If Today Was Your Last Day」

わかってはいるけれど。



ニッケルバックの、ぜひ和訳を。

最高です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ