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私立光ヶ丘学院  作者: ひがしゆ
2章
22/23

第六話「すれ違い」

雪白翼視点



最近は全然美影と杏里と話していない。

いつもどこかに行ってしまって俺だけ一人だ。



ここ3年がおかしかったのだ。普通つまらない事が当たり前で今のような刺激を貰うことなんて何一つなかった。



何かを求めてしまう自分を見ては今の生活が当たり前だと思い込んでしまっている。そんな自分でいいのか、今のままでいいのか、そんなことを考えてしまう。




最近は杏里とも一緒に帰らなくなりいつも用事があるといい美影とどこかへ行ってしまう。


今日こそは2人で何をしているのかを突き止めようと彼らの後を追う。



すると校庭で何やら話し込んでいた。



木の影からそっと2人を見ていれば後ろからコソコソと声が聞こえた



振り向いてみると



「押さないでよ聖羅ッ…俺やっぱり無理だって言ったじゃん…帰りたい」



「なんでなんで!杏里さんが快く俺たちを歓迎してるって言うのにお前は帰る気か!」



暮人の背中を聖羅が押し、2人で言い合いをしている姿であった。正反対に見える2人が入学後もこうやって一緒にいることに少し安心した。


そして俺が目に入ったのか聖羅はこちらを見て大きく手を振る。


まずい…



「翼さーん!!こんにt…グ…」



大きい声で自分の名前を呼ぶ彼の口を手で覆い2人を押して木に隠れる。何故こうしたのか俺だって分からない。


でも杏里達に俺が見ている事を知られたくなかったから。



「急になんですか!死ぬかと思いました

!!!」


少し怒っている聖羅を見ては苦笑いを浮かべ謝る。


「ごめんね…あまり大きい声を出されたくなかったから。」


「俺まで巻き込むのは本当にやめて欲しいんですけど…」



「だからごめんってば。暮人くんと聖羅くんだったよね」



暮人の方はなんで俺まで…って言う顔をして俺の方を睨んでくる。怖い怖い。


そんな会話をしていれば美影と杏里がこちらに近寄ってくる。



バレてる?



いやそんなことは無い…が少しドキドキしながら2人にしーっと合図をし杏里達が通り過ぎるの待つ。



通り過ぎればほっとし安堵のため息を零す。



「翼さん喧嘩したんですか?杏里さんちと」



「聖羅…そういうのストレートに聞くとか馬鹿なの…?」



聖羅のド直球な質問に少し驚く。



「喧嘩なんてしてないよ。ただ2人の様子を見ていただけだよ。」


「スパイみたいにコソコソしてましたけどね…」



暮人が優しげのない言葉を自分に向け放てば少し泣きそうになり。



いや確かにコソコソはしてたけどスパイはないじゃん!


…なんて心の中で呟く。



「違うってば!本当に様子を見てただけだよ。2人が何してるのかなぁってさ!」



スパイやら喧嘩やら色々言われたため少しムキになってしまう。



「杏里さんと美影さんユニット組んでアイドルするみたいですよ。それで俺達も誘われちゃって!」


ね!暮人! そういい暮人の方を向く聖羅



2人がユニットを組んだ…?


あの2人からそんな話を1ミリたりとも聞いていなかったため理解が出来なかった。



なぜこの2人が知っているのか、なぜ近くにいる自分には教えてくれなかったのか__



杏里は俺の事を邪魔者扱いしている。



聖羅が杏里を気にしているその態度に苛立ちを覚える



「そうなんだ。ありがとう教えてくれて」



喉に何かが突っかかり小さい声でそう2人に言う。

彼らの返事を待たずに家へと足を運んだ。



━━




「なんで着いてきてるのかな…?」


アパートへ付けば先程から後ろで喋り声が聞こえ俺の跡をついてくる聖羅と暮人の姿があった。



「いやなんか今1人にしちゃったらダメな感じがしたんで!」


「俺は帰ろうって言ったんです!…聖羅が全然話を聞かなくて…」




聖羅くんはいつだって僕のヒーローだよね。本当に困ってしまうよ。



「もう夜も遅いから帰った方がいいんじゃないかな?寮だったら尚更帰った方がいい」



もう日が沈み始め夜へと近づいていた。2人が寮で暮らしていたらもうとっくに外出は禁止となっているはずだ。ここの寮は厳しいことでも有名である。



「もう寮帰っても怒られるだけなんで翼さん家寄らしてもらいまーす!」



「は?」「え?」



暮人と同じような言葉を発してしまった。



聖羅という男は本当に誰も想像ができないことをする空気の読めない男だ。



「俺はいいけど…暮人くんの意見もちゃんと聞こうよ、ね?」



「…もう俺が何言っても無理なのは知ってるんで、というかこいつに着いてきた時点でもう人権がないんで大丈夫です…」



言い方に少し難があるけど…本当に大丈夫なのだろうか


そう思いながら自分の家へと入る。歓迎はしていないが2人が寄るのであれば止めはしない。



「待ってください!陰由良…って!翼さんの横の家って杏里さんの家ですか!?」



しまった。



家のドアには苗字が貼られていて「陰由良」という苗字は珍しいため確かに杏里しかいないと思う…


だがバレたくはない。



「陰由良歳三さんっていう人の家だよ。仲良くさせていただいているんだよね。杏里は駅近くに住んでいた気がする…」



自分でも誰だか知らない人の名前を使ってしまい歳三さんという名前の人に謝りながら嘘をつく。



「駅近くって遠いじゃん…杏里さんの家にも行ってみたいなぁ。翼ちゃんと暮らしてたりしたら俺許さないけど」




僕の事を好きでいてくれていて、でも俺のことは好きではなくて、なんかややこしい。どんな気持ちで君を見ればいいのか俺はわからない。


俺が翼ちゃんだって言ったら信じて杏里の事を見なくなるのかな。


なんて黒い心が呟く。



きっと俺は杏里に嫉妬してるんだ。人気だし僕のことが好きだった聖羅までもが雪白翼を忘れて杏里だけを見ることになるかもしれない


俺は杏里の人を惹きつける力に怯えてるんだ。



「ずっと翼ちゃんって言ってて不愉快なんだけど…誰なの…?」


確かに知らない人の名前をずっと相手が言っていたら不愉快でしかないよなぁ。暮人が聖羅に聞きたそうにしていた。



「翼ちゃんは可愛くて、でもかっこよくてね。雑誌とかでしか見ることが出来なかったけど小さい頃に公園であったことがあってさ、これまで俺が書いてたラブレターの感想を言ってくれたんだ。本当に嬉しかったなぁ」




ラブレター…確かに愛の言葉はあったけどあれはラブレターなのだろうか。



でも美波聖羅は小さい時から僕のことを応援していてくれた大切なファンであった。



「なんでその翼ちゃんが好きなの?」



小さい時から聞きたかったことだ。他人として質問しようとは思っていなかったが今のこの現状では他人として聞くしかない。



「一目惚れ!なんだと思う。誰もが近づけられないオーラみたいなのがあってさ。魅力が凄いんだよ!それで公園で初めて会った時沢山のことを教えてくれてさ。親が少し大変な人らしくて外に出ることもやっとらしい。そんな彼女を見て俺は助けたいって思ったんだ。…まぁもうどこにいるのかさえもわかんないけどさ」


目を輝かせて言う彼の姿を見て胸が痛くなった。



「会えなくてもきっと聖羅くんのことを大事な人だって思っていると思うよ。」



「そうかなぁ?だったら嬉しいけど!」



「聖羅がそんなに言うと俺まで気になってくる…」




無邪気に笑う君に励まされたんだ。

美波聖羅が心の救いであった。





ふと時計を見れば日はとっくに沈み夜を迎えていた。




帰る雰囲気はなく聖羅に振り回されていた暮人は近くにあったソファに背を預け寝てしまい、まだまだ元気な聖羅は先輩の部屋だというのに部屋を漁りたい放題漁りその後は伸び伸びとくつろいでいた。



「いつ帰るのかな…?」



そんな2人を見ていれば苦笑いで呟く



すると




>ピンポーン



玄関チャイムが鳴った。



ドアスコープを覗けば杏里の姿であった。


駅から逆方向にあるアパートにこんな時間に杏里が家に来るなど疑問に思ってしまう。



このまま留守にするか、聖羅達に隠れてもらうか…


考える暇もなくドンドンと外からドアを叩く音が聞こえる



「いるのは知っているから早く出てきてくれないかな?」



いないかもしれないじゃん、なんて突っ込む余裕など無くそっとドアを開ける



「ごめんごめん。ちょっと取り込み中で…要件なら外で話さない?」



聖羅は先程スマホを触っていたためこちらに集中は多分していないだろう。万が一の為に相手の返事を待たず杏里を押し外に出る。



「なに?女?」


「違う違う。そうじゃなくて今日は外で話したい気分だったからさ」



いや外で話したい気分ってなんだ…



そんな突っ込みを自分で入れては自分は杏里に怒っていることに気がつく


色々と忙しく先程の感情をどこかに置いてきてしまっていた。




「翼さん…寝てしまってすみません…そろそろか…杏里さん?」


「杏里さん?!杏里さんいんの!!!」



目が覚め、自分の声が聞こえる外に来ては暮人が杏里と目が合う。

そして杏里という名前に敏感な聖羅がすっ飛んでこちらに来る。



また俺から大切な人を奪う。

俺を置いて成長してまた俺から必要な人を奪っていく。



そんな杏里が大っ嫌いだ

不定期更新ではありますが見てくれたら嬉しいです!

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