第三話「フェリシア」
宙美悠真視点
新しい生活が始まる時は誰にだって勇気が必要。
日本へと向かう飛行機に乗りながらそんなことを思った。
僕が向かう場所は都心の有名な学校、私立光ヶ丘学院。普通科や、アイドル科、色々な科目がある中で僕はアイドル科を勧められた。あまり人前で歌って踊ることなんてしたことも無いし不安しかない。
…でもそれと同時にまだ見ぬ世界へと足を踏み入れる高揚感もある。
空港から出ては光ヶ丘学院に向かう。生徒会長の響さんから寮部屋を貸していただけることになった。あの人は本当に優しい。
親同士の関わりがあったから連絡を沢山していた。そこで光ヶ丘の話も何度か聞いた。
「日本に帰ってきたら光ヶ丘に来て欲しい」
輝く瞳で響さんは僕に言った。初めて見る目だった。
久しぶりの日本の空気。安心感があった。
たくさんの出会いがありますように
空を見上げてはそう呟く。
空港から2時間ほど電車とバスに揺られながら光ヶ丘へ向かう。言葉が伝わらないことが何度かあり、苦笑いを浮かべた。でも日本の人は親切で、困っていた僕を助けてくれる人が多かった。
なんとか着きそうだ。
バスから降りては校舎を見る。立派な学校だ。まずは職員室へ向かわなければならないが、敷地が広いためどこなのかわからない
「転校生か?」
そっと後ろから声が聞こえた。振り向けば赤色の髪をした生徒がこちらを見ていた。荷物の多さと、こことは違う制服を着ているため察してくれたのだ。
「そうです。…職員室がどこにあるのかわからなくて…」
伝わっているのか話すだけでも緊張する…
「日本語うめぇなお前。外国から来たんだろ。俺が教えてやるよ」
外国の人に間違われてしまうのは何度もあったため慣れてしまった。多分この人は僕のことを外国人だと思っている。ちゃんと日本人の血を持っているけど何年もイギリスにいては染まってしまったのかもしれない。
「ありがとうございます。」
お礼を言えば彼の背中に付いていく。かっこいいしオーラがあって近寄り難い雰囲気をもっている。
優しいな…
イギリスにいた頃の友人とはまた違った優しさに触れた。
「ここが職員室。また何かあればなんでも聞くからよ。俺は2年の今宵美影。よろしくな」
「ありがとうございます。本当に助かりました…僕の名前は宙美悠真っていいます。その時はよろしくお願いします」
何かある時のためにと名前を教えてくれた。まだまだ不安な日本語でお礼をする。彼は微笑んで僕が職員室に入るまでいる。本当に優しい先輩だ。
職員室での話を済ませ、寮部屋で荷物を置いては、用意された光ヶ丘の制服に袖を通す。
とってもお洒落。でも結構制服に関しては自由な部分もあり、黒色や、パーカーの服を着ている生徒もいた。
制服に着替え終えては自分の姿を見る。見慣れない姿だった。寮部屋と言っても僕は一人の部屋を使用するため何も気を使わず部屋が使える。響さんは本当に良くしてもらっている。
部屋に自分の荷物を片付けていると通知がきた。
響さんからだ。
ー久しぶりの日本はどう?先生から悠真が来たって聞いたから今から時間があれば学校の中を案内させて欲しいな。生徒会室にいるからね。ー
この学院の敷地はとても広いため自分にとって助かる言葉だった。
ー響さんが良ければ案内していただきたいです。今から行きます。ー
そう送っては部屋を出て学院に向かう。
昼休みなのだろうか、たくさんの生徒が校庭にいる。昼食をとっている生徒が何人もいた。
生徒会室の場所がわからなく誰かに聞いた方が良いかと思うがやはりまだ勇気がなく話せられない。
そう思っていれば
「どうしたの?」
金髪でとても愛らしい生徒が気にしてくれたらしく話しかけてくれた。
「ああ…えっと生徒会室に行きたくて…」
ちゃんと伝わっているのだろうか…。
「俺がそこまで案内するよ!暮人も!」
元気いっぱいの笑顔でそう返してくれた。ありがとうございます、そう口にしようとした瞬間彼は僕の手を取りもう1人の生徒の手も取る。
無邪気な笑みで僕の手を取る彼が子供のようだった。 彼のおかげで先程までの不安な気持ちが全て吹き飛んだ。
「俺は美波聖羅!…そしてこの臆病者は新堂暮人!よろしく!…君の名前はなんて言うの?」
聖羅さんに暮人さん…2人とも素敵な方だ。同じネクタイの色をしているため同級生だと知る。緊張が解けた。
「美波聖羅さんに、新堂暮人さん、僕は宙美悠真っていいます。よろしくお願いします。」
なんだかとっても幸せだ。日本に来て光ヶ丘にきて良かった、そう思えるほどこの時間が最高に幸せだった。
話していればすぐに生徒会室に着いた。雰囲気が全く違う。
2人にお礼を言えば呼吸を整えてドアを開ける。
「待っていたよ。悠真」
ドアを開けては響さんの姿があった。立派な椅子に座り大人な雰囲気を纏っていた。
「響さんのお陰で無事何事もなく学院に着きました。ありがとうございます。会うのは久しぶりですね」
久しぶりの響さんは大人らしく優しげな表情をしていた。
「久しぶりだね悠真。元気そうでよかった。」
微笑む響さんにこちらまで笑顔になる。響さんから勧められた学校だったが素敵な方達と出会えたため感謝しか無かった。
「さぁ学院を案内するから着いてきてね」
生徒会室の扉を開く響さんを見てはこれからがとても楽しみで目を輝かせた




