第二話「Iris」
美波聖羅視点
この春、俺は高校生になった。
私立光ヶ丘学院に雪白翼"ちゃん"がいるって噂があったから俺は今こうやって私立光ヶ丘学院の門の前にいる。
色々な科目があったけどアイドル科にいるかと思って志望したらまさかの男子校だったっていう…その前に調べなかったら俺も馬鹿だ。
もしかしたら翼"ちゃん"は普通科クラスなのかもしれない…
普通科に受ければよかった、涙目になりながら自分の前を通る男子生徒たちを見る。
すると
見覚えのある緑色の髪色をした男子生徒が俺の前を通った。
まさか…
そう思いすぐに彼の方に駆け寄り腕を取る
「ねぇ君」
男子生徒は弱々しい表情でこちらを見る。
やっぱり
同じ中学校にいた新堂暮人がそこにいた。
あまり話したことがないがよく変な意味で目立っていたため顔と名前は把握済み。
でもなんでこんな臆病者の暮人がアイドル科に…?
知らない人ばかりのこの学校に中学の頃の同級生がいることはとても安心した。
「立花中学校の新堂暮人くんだよね?俺は美波聖羅!…同じ中学!」
そう大きな声で言いながら腕を掴む。そうすると彼は手を振りほどいて逃げるように走って行く。
走ることは大好きだしなんでこの学校に入ったのか、とても気になったため直ぐに彼を追いかける。
「待ってよ暮人!!」
意外と足が早くて驚いた。直ぐに捕まえられると思ったけど全然捕まえられない。
ムキになって走っていれば自分よりも背の高い生徒が集まった廊下にいて知らない生徒の後ろに隠れている。
「暮人見っけ!!やっぱり暮人じゃん!!」
顔を見ればやはり同じ中学校の新堂暮人の姿であり近寄らないで欲しいというオーラが俺でもわかるほど不機嫌な顔をしていた。
こんな感じで暮人と感動的な再会をして、翼ちゃんと同姓同名の先輩とも仲良くなって全てが物語のようで信じられないことばかりだった。
暮人はなんでアイドル科に入ったのか全然教えてくれないし翼ちゃんには会えてないし…なんだか凄くモヤモヤする。
沢山の友達ができて昼食も誘ってくれるけど暮人がぼっちだとなんか可哀想だし、一緒にこの頃は食べている。
「1人の方がいい」「近寄らないで」
暮人は変わらずそう言うけど、俺は聞きもしないで一緒に昼食を食べる。暮人は校庭が好きらしくいつものように校庭のベンチで昼食を食べる。
いつものように校庭で昼食をとっていると金髪で眼鏡をかけている男子生徒が何やら困っているらしく、ネクタイを見ると同じ1年生だ。まだ名前を覚えることが出来ていないため名前は分からないが困っているなら助けるのが普通、そう思えば直ぐに彼の方に向かう。
「どうしたの?」
そう述べると直ぐにこちらを振り向いた
「ああ…えっと生徒会室に行きたくて…」
すごい不安そうな顔でそう言う彼は小さい声で(伝わったかな…)そう呟いていた。顔からして外人?っぽいけど帰国子女なのかな。
「俺がそこまで案内するよ!暮人も!」
困っているなら助けてあげるのが普通。昼食をまだ食べている暮人の腕を引っ張り上げて金髪の生徒の手をとり生徒会室へと足を運ぶ。
「俺は美波聖羅!…そしてこの臆病者は新堂暮人!よろしく!…君の名前はなんて言うの?」
「美波聖羅さんに、新堂暮人さん、僕は宙美悠真って言います。よろしくお願いします。…えっと久々の日本で日本語が上手く使えているか心配なんですが…僕の言葉は伝わってますか?」
苦笑いでそう彼は述べた。
「伝わってるから大丈夫!」
久々だとしても新しい世界に入るのは誰だって勇気が必要だし、俺だって違う国に行くことになったら不安になるし怖いと思う。だから俺が彼を少しでも安心させられる存在になれたらいいな、そう思った。
廊下に沿って歩いていくとなにやらとても大きな音がした。
爆発…?
その後、なにやら教師が怒鳴りながら誰かを追いかけていた。
ああ…
夜長雲雀だ。
問題児でまた1年留年したって噂を聞いてたけど本当に問題児だった。授業にも出ないし、いつも変なものを作っては大きな音を鳴らしている。そりゃ留年になるよなぁ…
「俺…あの人嫌い」
暮人が大きな音がした途端、ものすごい勢いでしがみついてきたため俺はそれに驚いた。
確かに暮人が嫌いそうな感じがする。うるさい人が嫌いだとか言ってたし問題児は相当嫌いだろう。
中学校はあまり派手目な生徒がいなかったため今のこの生活は驚きと刺激が沢山で毎日が楽しい。
「悠真はなんで生徒会室に?」
生徒会室に呼ばれることなんて俺には滅多にないし、他の生徒も呼ばれるなんてことはほとんどないから少し気になって聞いてみる。
「大したことではないんですけど…日本の学校も慣れていないだろうって響さんがこの学校のことなどを教えてくれるらしく…」
鶴北響、この私立光ヶ丘学院の生徒会長。あまり良い話は聞かないから俺は少し怖い。よくその話に乗ろうとしたよなぁ、なんてことも思った。
「鶴北先輩より俺の方が絶対にいいと思うけどなぁ」
「響さんはとても素敵な方です。いつか聖羅さんと暮人さんにも道案内とかしてもらいたいな。その時はよろしくお願いします。」
綺麗な笑顔でそう述べる。本当に人形のように綺麗な顔立ちで暮人も見とれていた。その気持ちは物凄くわかる。
生徒会室へと着けばお礼を言われ俺達はその場をあとにした。
「なんか…凄く綺麗な人だったね…」
「確かに綺麗な人だった。外人かと思ったもん俺…でも俺たちと同じ学年ならまた会える機会はあるし、仲良くなりたいね!そしたら暮人も話せる相手が増えるから一石二鳥〜」
自分とは真逆な暮人と話しているとまた違った視点から周りを見ることが出来る。本当に楽しい。
そうやって二人で話していれば面影のある姿が目に入る。
まさか…
目をこすってもう一度見る。そこには
陰由良杏里の姿があった。
俺の憧れの存在でもあるし、翼ちゃんとの雑誌でよく見ていた。雑誌で見るよりも大人びていてかっこいい… 。握手してもらおうと思ったけどオーラがあってとてもじゃないけど俺なんかが杏里さんの空気にお邪魔できない、そう思った。
すると、なぜだかこちらに杏里さんが気づき近寄ってきたため暮人が俺の後ろに隠れる。
「あ…君、美波聖羅くんだよね。翼から話は聞いていたんだけど…会ってみると本当に似てるな…」
凄いジロジロと見られ心臓がすごい速さで鳴っている。やっぱり本物の陰由良杏里だ…!暮人は俺の袖を引っ張って帰りたそうにしたがこんな滅多にないチャンスを無駄にしたくはなかった為、暮人を無視した。
「陰由良杏里さんですよね…!俺、小さい頃からずっと見てて…憧れてます…」
言いたいこと全部言いたかったけどこれぐらいしか今の俺は言えなかった。翼ちゃんがどこにいるか、なんて聞ける雰囲気ではなかった。
「俺にも憧れてくれていたのかな?…ありがとう。えっと…そこの後ろの子は確か…翼に激突した子だよね?石みたいに頭が固くて死ぬかと思ったとか翼が言ってたけど確かにかたそう」
笑顔でありがとうなんて言われると男の俺でも惚れてしまう…。翼ちゃん同姓同名の先輩にぶつかった話を先輩から聞いたらしくすごい笑っていた。杏里さんは笑う姿も絵になる。
「本当にあの話を聞いた時は俺でも笑っちゃったよ。翼に面白いことをしてくれて君達に感謝しかないよ」
くすくすと笑いながら杏里さんはそう言う。
いつだってこの人は前ばかり向いている。どこにも欠点がない。本当に俺にとっては完璧な人、男の人は杏里さんに憧れている人だって沢山いるはずだ。
聞いちゃ…だめかな




