第十四話「淡紅色のゼラニウム」
陰由良 杏里視点
なんで来ない
ライブでの反省会が終わり、みんなが帰っていく。
いつもは美影と翼と帰るが美影が1人で帰った。
俺は講堂を調べたかったから翼には外に待っていろと言って講堂へと向かった。
鶴北とつるんでいるヤツらが何か企んでいるのではないかとライブ中集中出来なかった。
疑うなんておかしい、なんて思う奴もいると思うけど何回もこいつらから酷い目を受けてきた。
ライブ中、響の親も当然のように俺たちを見ていた。
吐き気がする____
見るだけでも胃液が上がってくる気持ちだ。
なにかしてくるんじゃないかと不審な目で見ていた。なぜ俺も響につるんでしまったのか
今思えば自分が馬鹿だと思う。
弱音なんて吐いている暇がない。俺だけが変わらない。
早く俺も変わらなくちゃいけない。
講堂を隅々まで見ていると下校時間になっていた。
結果としては講堂にはそれらしきものは何一つ隠されていなかった。
講堂から出て辺りを見回す。翼の姿はなかった。
そこで待ってろって言ったのに…
今日は普段通りの生活ではなかったから1層腹が立った。
もしかしたら翼は俺が中々講堂から出てこないから帰ったのかもしれない。
__俺をそうやって直ぐに置いていく。最近置いていかれてばかりだ。
あいつだけが成長して俺は変わらない。
俺は必死に何かをしたのか?ずっと恨むだけで行動に移したか?
変わる為に自分でしたことは何も無かった___
美影は変わった。出会った頃は何も知らない夢見がちなヤツで見ていて面白かったけど今はつまらない。長年夢なんて見てなかった俺からすれば美影が羨ましかった。変なやつだったけど夢を見てるあいつは瞳が輝いていた。あいつに俺は助けられたのだとこの頃実感した。
美影といると楽しいし自分の価値観が変化していると思い込むこともできた。翼も嫌々で付き合っていたけど素の笑顔で美影と話していた。楽しそうに。
俺は美影の笑顔に頼っていたんだ。
今からでも俺はなにか出来ますか、
神様、俺に時間をください。
後ろばっか見てないで前を見ろ。
見覚えのあるふたりの姿が視界に移る。
翼と美影だ
俺に気づいたのか美影は苦笑いで手を振り翼は探してたんだよ、って言いそうな顔で向かってくる。
「どこに行ってたの?!」
「俺は待ってろって言ってたけど…。ちゃんと聞いてろよ。」
この先が心配だと思いながらため息混じりにそう言った。
「浮かない顔だね美影くん。」
「なんもねぇよ…」
呆れたような口調でそう彼は言う。
また初めに戻ろう
「今日は俺の家でお泊まり会しよっか」
「俺疲れてるからパス」
「杏里がお泊まり会しようなんて聞いたことないから気持ち悪い」
「拒否権は美影にも翼にもありませんってことで」
俺が嫌がっていた男子高校生らしいことをしよう。ずっと籠に篭っていたって変わらない。
俺たちの帰る場所へ足を向けた。
この2人を守ろう。
そして
愛を__




