エレメント
こういう、現実離れしたのを書くのは不得意で、いろいろ読みにくいところ等あると思いますが、少しでいいので読んでみてください。
中世、宇宙論を唱える人々がいた。その宇宙論は、この広い全宇宙は「地」「水」「火」「風」で構成されているというものだった。
ある日、この宇宙論を唱える4人の男が集まった。4人は、これら四つのエネルギーを玉に封じ込める事に成功した。その玉は、四つのエネルギーの総称からとり、「エレメント」と呼ばれた。俄かに信じられないが、何百年と経った今、このエレメントの玉を所有する者たちがいる。
ある日、とある町で、大地震が起こった。普通の地震ではありえないほどの長時間の地震だった。ダッカはこの町に住んでいた。ダッカはこの頃8歳。よく喧嘩をするワンパクな少年だった。今までに感じたことのない地震に、ダッカの家族は、どうすることもできなくなっていた。とにかく、頭を守るために、必死で何かの下にもぐり込もうとした。しかし、あまりの揺れに、動くことすらままならない。ダッカの両親は、子供だけでもと、ダッカに手を伸ばすが届かない。
「パパ、ママァ!」
泣き叫ぶ少年を、嘲笑うかのように、揺れは酷くなっていく。そしてとうとう、ダッカは放り出され、家は殆どつぶれてしまった。それでもなお、揺れ続ける。ダッカは飛ばされまいと、必死にしがみつく。ふと顔を上げると、少し向こうで、誰かが地面に何かを押し付けている。実は、これが地のエネルギーを封じ込めた「地玉」なのだが、小さいダッカには、あれが何なのか、まったく理解できなかった。
間もなくして、地震は止まった。ダッカは、すぐに立ち上がり、つぶれた家の中を探し始めた。このとき既に両親は息絶えていたのだが、ダッカには、まだ「死んでいる」という発想がなかった。すぐに、レスキュー隊が到着、両親の遺体は、運び出された。しかし、死んでいるなどと知らないダッカは、両親の体にすがりついた。そんなダッカを、哀れみながらも。レスキュー隊員は、引き離した。ダッカは、何がどうなったのか分からなくなり、泣き叫んだ。その後、ダッカは、つぶれた家の中へ入った。家具も何もかも粉々だ。そんな中、一箇所だけ、塵も何もなく、きれいな場所があった。そこには木箱がおいてあった。ダッカはそれを拾い上げ、腹に抱えた。これがなんなのかはわからない。ただ、小さいときから教え込まれていたのだ。何かあっても、これだけはもっていろ、と。ダッカは箱を開けた。中には折りたたまれた古い紙と、薄く緑を帯びた玉が入っていた。それは遺言状と「風玉」だった。しかし、小さいダッカにはやはり分からなかった。
同じ頃、ダッカのいる町からまただいぶはなれた場所。そこでは、豪華が町を襲っていた。その豪華を操るのは、「炎玉」をもつタンカーだった。
「燃えろぉ!燃えろ、燃えろ、燃えろぉ!!」
タンカーは狂ったように炎を撒き散らした。町にある家は全て燃やされてしまった。逃げ惑う民をタンカーは容赦なく焼き殺した。このとき、少女エリーは、両親と一緒に逃げていた。母親は、娘の上に覆いかぶさるようにして逃げ、父親は、活路を開くように先頭を立って突き進んでいた。父親の手には狩猟用の銃が握られていた。そこへ、タンカーがやってきた。タンカーは、この親子を見つけるなり、炎を放ってきた。
次の瞬間には父親が真っ黒になっていた。家族を守るために、身を盾にしたのだ。狩猟用の銃はエリーの足下に転がった。エリーはまだ熱い銃を手に取り、大声で泣いた。すると、次の瞬間、エリーをかばっていた母親までもが豪華の餌食になった。
エリーは、恐怖のあまり、その場から動けなくなっていた。泣くことさえも忘れていた。しかし、タンカーは容赦なく次の炎を繰り出していた。その炎を見た瞬間、エリーは、ふたたび泣き始め、無意識のうちに、狩猟銃を構えていた。炎は、エリーに襲いかかった。エリーも小さな指で、力いっぱい引き金を引いた。パァン、と乾いた音が響いた。
エリーは、前に突き出していた左腕を火傷した。しかし、そのほかには異状がなかったので、目をこすりながら自分が殺したタンカーのもとへ歩み寄った。このときエリー8歳。そのとき、自らの力で「炎玉」を勝ち取った。少女はポケットの中から、小さな紙を取り出した。それは遺言状だった。
場所こそ違うが、少年ダッカと少女エリーは同じ遺言状を手にした。そして、ダッカは「風玉」、エリーは「炎玉」をも手にしたのだ。
遺言状にはこう記されていた。
我々が後世に残した無限の力を秘める「エレメント」
この力は、あまりにも強大だ。いずれ、この力に心奪
われるものがあるだろう。
もし、この「エレメント」が何らかの災いの種となっ
たとき、お前たちは、それら4つを全て集めて破壊して
くれ。
あれから十年が経った。2人は18歳。この日の朝、ダッカは遺言と風玉を持って、親友のアレンを訪ねた。アレンの家は、ダッカの町のすぐ近くにあった。地玉による地震被害も受けていた。しかし、奇跡的に、アレンとその家族は生きていた。そのおかげで、ダッカはあのときから2年間、アレン一家に世話になれた。
ほんの十分でアレンの家に着いた。
「アレーン!」
すると、二階の窓からアレンがひょっこり顔を出した。
「何?ダッカ」
ダッカは、大きく息を吸い込み、一息に言った。
「ちょっとこれから大事な話があるから、いつもの場所に来てくんない?」
するとアレンは、殆ど迷うことなく、首を縦に振り、「わかった」と返事をした。
いつもの場所というのは、二人がこっそり会うときや、辛いことがあったときによく行く、小さな湖の畔だ。
数分後、アレンはそのいつもの場所にやってきた。
「大事な話って??」
いきなり訊かれたダッカは、喋りにくくなってしまった。しかし自分から呼んだのだから、話さないわけにもいかない。深呼吸をして、ゆっくり話し始めた。
「俺さ、10年前、地震で、親なくしたじゃん…。それで、この10年、いろいろ整理したんだ。例えばこの玉の事とか」
そう言いながら、ダッカは、風玉を取り出した。
「この玉は、風玉って言うらしいんだけどな、このほかにも、こういう力を秘めた玉はあるそうなんだ。で、いろいろ考えたんだけど、あのときの地震は、地玉っていうののせいなんじゃないかなって…そう思うんだ。俺の色褪せた記憶だけど、俺の見た男が、変な石みたいなのを、持ってた。たぶんそれが…」
「地玉か…」
ダッカの言葉を、アレンが奪った。ダッカは無言で頷き、続けてこう言った。
「それと、この遺言状、これ読んでくれるか」
受け取ったアレンは、最後までじっくり読んだ。そして顔を上げ、こう言った。
「わかったよ。この四つの玉を集めるのを手伝ってほしいんだろ。最初からそう言えばいいのに、水臭いやつだな」
アレンに見透かされて少し恥ずかしいように感じたが、やはり持つべきものは友達だと思った。
時同じくして、炎玉を所有するエリー。エリーも18歳になっていた。エリーはこの日、10年前、タンカーから勝ち取った炎玉と、エリーの家系に代々受け継がれてきた遺言状を持って、ちょっとした旅に出た。エリーには親戚も親しい知り合いも居らず、今まで独りで生活してきた。誰にも頼らなかったエリーの生き方は、彼女自身を強くしていた。容姿は良いのに、今まで、ボーイフレンドどころか、親しい友達までもができなかったのは、その強すぎる心のせいだったのかも知れない。
旅に出ると決めたのはいいが、残る三つの玉が、どこにあるのかまったく手がかりがない。はたまた、本当にあるのかどうかさえ…。
当ても無く歩いていると、急に足下が揺れ始めた。地震だ。旅立って一日目に地震に出くわすなんて、幸先悪い。そう思っていたが、遠くに人影が在る。その人影は、徐々に遠くへ行く。この揺れの中で。怪しげに思ったエリーは、ゆっくり後ろをつけていった。すると、とある町に着いた。そいつは、町に入るなり、腰を屈めて、何かを地面に押し当てた。その瞬間、地面は揺れ始めた。そこでエリーは確信した。こいつが持っているのは「地玉」。
「何とかして奪わないと…」
そうは思うのだが、揺れで、体が前に進まない。それどころか、立ち上がることすらできないのだ。エリーは奥の手を使うことにした。
「本当は使いたくないのだけれど…」
そう言って、袋から「炎玉」を取り出した。そして、右手で柱にしがみつき、火傷の痕のある左手で炎玉を持ち、前に突き出した。炎玉からは一筋の炎が流れ出た。すると気配を感じたのか、その男が振り向いた。この男の名前はタイタス。10年前、ダッカの町を襲った男だ。タイタスは、咄嗟に地玉を持ち替えた。すると、さっきまでの揺れはなくなり、急に地面が隆起した。炎はその壁に阻まれ、タイタスには届かなかった。
タイタスは、壁の死角を利用し、逃げようとしていた。しかし、エリーも逃がすわけにはいかない。壁の横を通り、すばやく追いかけた。すると、タイタスは急に立ち止まり、地玉を押し付けた。するとまた地震が始まった。さっきよりも強い。家はどんどん崩れていく。逃げ惑う町人。しかし皆、あまりの揺れに、逃げることができない。
その光景を見たエリーは、怒りがふつふつと込み上げてくるのがわかった。そして、今度は、大きな炎の壁を作り出した。そしてそのまま押し出した。炎の壁は一直線にタイタスの方へ飛んでいく。タイタスはまた地面を隆起させて壁を作った。しかし、炎の一部は、壁からはみ出し、タイタスに飛んでいった。
「ぐぁっ!」
タイタスの叫び声が聞こえた。この期に乗じて、エリーは、二つの炎の渦を放った。何も音が聞こえなかったので、外したかと思ったが、壁の向こうにタイタスは倒れていた。
こうしてエリーは、自らの力で、二つのエレメントを手にした。
ダッカたちはあのあと、少し遠くまで歩いた。1つ隣の町だ。情報を集めるには、人が多い場所の方がいい。そう考えたのだ。しかし現実は甘くなかった。アレンが必死に聞き込みをするが、誰も知らないと答える。そもそも、「エレメント」なんていう存在自体知られてないのに、それを探すなんていう方が無理なのかもしれない。こうして一日中探し回ったが、何も情報は得られなかった。2人は、クタクタの足でそれぞれの家に帰った。
家に帰ったダッカは、家の本棚にある本を片っ端から読みあさった。何か情報があるかもしれない。すると、それぞれの力について書かれたページがあった。
「何だこれ?」
そこにはこう書かれていた。
エレメントの種類
1,炎玉…炎を放ち、炎を操る
2,水玉…水を放ち、水を操る
3,風玉…風を操り、かまいたちを巻き起こす
4,地玉…地を揺らし、地に起伏をつける
これらにはそれぞれ弱点がある。
ここまで読んで、ダッカは目をこすった。あまりに文字が小さいので、疲れてしまったのだ。
「弱点…?そんなのがあるのか」
炎玉は水玉に弱い
水玉は地玉に弱い
風玉は炎玉に弱い
地玉は風玉に弱い
しかし、エレメントの力は、この力の優劣だけでは決まらない。
使用者の実力もやはり関わってくる。
これら…
ここから先は文字がにじんで読めなかった。
しかし、エレメントの力の関係、それがわかっただけでも大収穫だった。しかし1つ後悔した。幼かったとはいえ、あの時風玉を使えていたら…もしかすると勝てていたのかも知れない。
となると、やはり狙うは地玉だ。そう心に決めた。こうして、長い夜は更けていった。
翌朝、ダッカの目の下には隈ができていた。あのあと、地玉を持つやつを倒す妄想をしていると、興奮して眠れなくなってしまったのだ。
ふらふらと千鳥足で向かったのはアレンの家だった。この日は、外から叫ぶ力などない。ダッカはドアをノックした。アレンはすぐに出てきた。
「今日も行くんだね…ってなにその顔?!寝てないんじゃない??」
「おう…まぁな…いろいろ考え事してたからさ」
妄想してたなんて、恥ずかしくて言えやしない。しかしアレンは鋭い。
「敵を倒す妄想でもして興奮したんじゃないの?」
笑いながら冗談を言っているつもりなのか、少し怖かった。アレンの洞察力に、驚きを隠せなかった。
「ば、バカ、そんなんじゃないし…」
そんなダッカを見てアレンは笑った。そして、奥から荷物を持ってきて言った。
「今日は早い目に行こう。なるだけたくさんの人に聞きこまなきゃ」
その言葉に、今日こそはという熱意を感じたダッカは、急に活力がわいてきた。
「よっし、今日こそは…」
そう言うと、ダッカは大股で歩き出した。アレンも後に続く。
町に着いた二人は早速、町のはずれに行った。町の人よりここの人の方が情報を持っているかもしれないのだ。しかし、2人は、違うものを目にした。遠くにしぶきを上げる水。その水は、徐々にこちらに迫ってくる。
ダッカはもしやと思った。すると、向こうの方から、一人の男が歩いてくる。その男は、手に玉を持っている。間違いない。水玉だ。2人はその場を動こうとしなかった。その男を倒そうと考えたのだ。
「なんだぁ、お前ら。何か用か?」
にやけながらそう訊いてくる男の名は、ウェイブ。ウェイブは答える間もなく、水を放ってきた。ダッカも負けじとかまいたちを巻き起こす。初めての実戦だが、昨日の妄想のおかげで、だいぶやりやすかった。
「おっ、お前は風玉か…。なら、頂かないとなぁ…」
その瞬間、ダッカの横から、水が飛んできた。ダッカは咄嗟に風の壁を作り出す。それにより、水柱の軌道はウェイブの方に変わる。
「へへッ、ざまぁみろ」
しかし甘かった。ウェイブは水を操ることができる。それにより跳ね返した水柱は、もう一度ダッカの方へ飛んできた。しかしそれを、またも風の壁で防ぐ。
「何度やっても無駄だよ!」
そう言い放ったダッカに、ウェーブはまたにやけながら言った。
「使い方次第じゃ、水玉は何にも負けねぇ…」
ウェイブは、水玉を地面に押し付けた。その瞬間、地面に亀裂が入り、そこから水が溢れだした。ダッカは、その水をまともに喰らい、アレン共々気絶した。
あれからどのくらい時間が経ったのか。ダッカは、とある家の玄関で寝ていた。まだ少々、体のあちこちが痛いが、ダッカはゆっくりと起き上がった。すぐ近くには、アレンがいた。アレンは下を向いたままボーっとしている。ダッカは心配になり、声を掛けた。
「おい、アレン、大丈夫か?」
その問いに、アレンは下を向いたまま、あぁ…と答えた。すると、奥から年を取ったおじいさんが現れた。
「お前さんら、大丈夫かね…??まだわけぇんじゃ。命を大事にしなされよ…」
そう言うと、また奥へ消えていった。
「ダッカ、ごめん!」
急にアレンがそう言ってきた。
「何だよ急に」
「風玉…守れなかった…」
ダッカはすっかり忘れていた。そういえば風玉がどこにもない。
「やっぱり取られてたのか…」
その問いに、アレンは無言で頷いた。
「そうか。まぁ、負けちゃったのは俺だし、いいって、気にすんな」
「でも…」
そこから先をいう前に、ダッカが叫んだ。
「よっし!今度こそ勝つぞ〜!」
そして、ダッカはまた歩き出した。
この頃エリーは、新しく手に入れた地玉の力を試していた。そっと地面に押し当て、念じると、地面が揺れ始めた。地震だ。するとそこへ、先ほど町のはずれから出てきたダッカとアレンがやってきた。エリーは気付かず、地震を続ける。
ダッカは、すぐに感じ取った。
「地震だ!もしかして…」
ダッカは辺りをよく見はじめた。すると、すぐそこで、女性が玉を地面に押し合てている。その手には、古い火傷の痕があった。
そのとき、ダッカにふつふつと怒りが込み上げてきた。こいつだ…こいつが両親の敵。
ダッカは、素手で襲いかかった。が、エリーはすぐに気付き、身を翻した。そのとき、アレンには顔が見えた。若い、この人じゃない。すぐにわかった。しかし、ダッカにはエリーの顔など見えていない。エリーは、隙をついて、玉を使おうとするが、その隙が殆どない。徐々にダッカが追い詰めていく。このままではまずいと思ったアレンは、大声で叫んだ。
「ダッカ!!ダッカ!!その人じゃない!」
しかし、ダッカの耳には届かない。アレンは仕方なく、ダッカのもとまで走った。そして、慣れたように、ダッカを後ろから羽交い絞めにして動きを止めた。
「落ち着けダッカ。この人を見ろ。俺たちと同い年ぐらいだ。人違いだよ」
そう言われて、ダッカはその場に膝を折った。
「じゃ、じゃぁ、何であんたが地玉を持っているんだよ?」
ダッカの質問に、エリーは驚いていた。
「あなたも『エレメント』を知っているの?!」
「はぁ?!」
すると、エリーは勝手に自己紹介を始めた。親をなくしたこと、自らの力で、二つのエレメントを手に入れたこと。とにかく全て語った。
それを聞いたダッカも、親が殺されたことから、風玉を奪われたこと、全て話した。もちろん、あの遺言状のことも。
「風玉を取られたの?!なんてこと…」
「いいさ、また取り返せば」
真剣に考えるエリーと楽観的に考えるダッカたち2人は、性格こそ違えど、お互いが似たもの同士ということもあって、すぐに仲良くなった。親友のアレンも、すぐに打ちとけた。
そうこうしているうちに、日は沈みかけていた。エリーは近くに宿を取っているからと、宿に帰り、ダッカとアレンは、そこから家まで歩いて帰った。距離的にはさほど遠くなかったが、坂道が多い分2人の足には、厳しかった。
日も完全に沈み、星が瞬き始めたころ、二人は家に着いた。と言っても、そこはアレンの家。ダッカはそこからさらに歩かなければならない。ダッカはアレンに手を振り、家路についた。
翌日、明朝。ダッカはアレンを訪ねた。アレンは寝ぼけ眼で玄関から顔を出した。
「なんだよダッカ、今日は早いな…」
「あったり前じゃねぇか。早くエリーの所へ行って、一緒にエレメントを取り返そう」
「わかった。ちょっと待ってて」
そう言うと、アレンは家の奥に戻って、数分後に、パンをくわえたまま出てきた。
「よひ、いほー」
パンを口にほおばるアレンは、なんて言っているのかよく分からないが、ダッカは、おう、と返事をして、駆け足で出発した。
数分後、2人は宿屋の近くまでやってきた。すると、向こうからエリーが走ってくる。何事かと思って訊いてみると。
「出たよ。水玉のヤツ。早く行きましょう」
と早口に答えた。2人は言われるがままに、後をついて走った。
昨日、ウェイブと出合ったところ辺りに、水をまとった大きな竜巻が見える。おそらくそこだろう。3人は急いだ。走る中で、エリーは2人に地玉を渡した。
「丸腰というのは不安でしょう。どちらかもってれば」
ダッカはそれを受けとり、アレンに渡した。
「ダッカ??いいのか?」
「あぁ。俺は素手であいつを一発ぶん殴ってやりてぇ」
ダッカは笑いながら言ったが、その心のどこかには強い覚悟があった。
かなりのハイスピードで走ったおかげで、すぐにその場所へ着いた。するとそこには、ウェイブが両手に玉を持って立っていた。
「やっと来たか。待ちくたびれたぞ」
エリーは、即座に炎玉を構えた。アレンも、地玉を地面に押し当てる。そんな中、ダッカは冷静に考えていた。
(炎玉は水玉に弱い。けど、風玉には強い。そして、地玉は風玉に弱いが、水玉には強い。だったら、どうにかして、都合のいいように組み合わせないと…)
気が付くと、エリーは既に攻撃していた。炎の渦を、何本も前に放ち、ウェイブを攻撃しようとする。しかし、ことごとく水をまとった竜巻で防がれる。そして隙があれば、かまいたちで攻撃してくる。しかし、そのかまいたちは、アレンの作る壁によって防がれていた。
ダッカは素手でどうするか、じっとタイミングを見計らっていた。
そのとき、ダッカの足下の地面が急に隆起した。
「おわっ!」
「行くぞダッカ!」
アレンが地玉でやっていた。ダッカはそのまま隆起した地面の波に乗ってウェイブのもとまで一直線だった。
「馬鹿め…」
ウェイブはかまいたちを繰り出してきた。そのとき、目の前が真っ赤になった。エリーの炎だ。炎は風を打ち消し、ダッカと共に突き進む。しかし、ウェイブも負けてはいない。大きな水の壁を作り出し、奥からかまいたちで攻撃してくる。
「ぐぁっ…」
ダッカの肩に、かまいたちが直撃した。
「ダッカ、大丈夫?」
エリーが心配そうに訪ねる。
「俺は大丈夫だ。ちょっと、って言うかかなり火力上げてくれ。限界まで…」
「わかった…」
すると、目の前を直進する炎が急に揺らぎ始めた。
「ダメ、制御できなくなる」
「大丈夫。これぐらいなら」
炎は、ウェイブの作り出した水の壁にぶち当たった。小さな音を立てて、炎が消えていく。
「もっと火力を!制御しなくていい!」
そう言われ、エリーは、限界まで炎を激しくした。それと同時に、アレンが地面をさらに高く隆起させた。ダッカはその反動により、高くジャンプ、水の壁を越えた。目の前の炎に気をとられ、上を飛び越えるダッカにウェイブは気付かない。
「っく!なんて火力だ」
その瞬間、ウェイブは空から降ってきたダッカによって、首を思いっきり蹴られ、意識を失ってしまった。水の壁は崩れ落ちた。
ダッカは、落ちた衝撃で足を捻挫したが、それ以外は得に異状はなかった。エリーもアレンも、少し気力を使いすぎて、ふらふらしていたが、怪我は無かった。
「倒せた??」
ダッカが言うとアレンは嬉しそうに返した。
「あぁ。お前がやったんだぜ」
3人は、軽く笑い合った。勝利を分かち合うかのように。そして、ウェイブのそばに落ちている、風玉と水玉を拾い上げ、四つを並べた。
「これで全部そろったな」
アレンが言うと、2人が無言で頷いた。
「痕は壊すだけだ…」
アレンの言葉に、また2人は頷いた。
「けど、エレメントって簡単にこわせるのか??」
アレンのこの質問に、エリーが反応した。
「エレメントだろうと玉だろうと、基はただの石。斧で壊れるわよ」
そのとき、遠くの方から、小さな拍手が近づいてくる。
「何だ?」
ダッカのその言葉の直後に、目の前に、妙な男が現れた。
「ブラボー。ブラボーだよ君たち」
そう言いながら近づいてくる男の名前は、キルム。シルクハットに、蝶ネクタイと、本当に奇妙な男だ。
「あなた誰?」
エリーがそう問うと、キルムは鼻で笑って答えた。
「君らに言う必要はない。ただ黙って、そのエレメントを渡せ」
その言葉に、3人は凍りついた。この男も、知っているのか…?
一番初めに動いたのはダッカだった。足を引きずりながら立ち上がり、風玉を手に、かまいたちを巻き起こした。
「無駄…」
キルムは、内ポケットから、黒く、丸い石を取り出した。ダッカの放ったかまいたちは、その石に吸収された。
「な…に…?」
驚きのあまり、ダッカは次の攻撃を繰り出せなかった。ダッカだけではない。エリーも、アレンもだった。
「私が持っているのは、陰玉。暗黒物質だ。これは、そのエレメントの力を吸収する能力を持っている。これは、私の祖先が、君たちの祖先に対抗して作ったものだ。しかし、これは、攻撃に適していない、完全防御型だ。だから、お前らの持つ四大エネルギー、エレメントが欲しいのだ」
そんなわがままな理由が通るか、と思ったが、誰も口に出せなかった。
と、そのとき、キルムが急に白目をむいて倒れた。三人が驚いていると、キルムの後ろから、一人の男が現れた。
「父さん?!」
アレンが叫んだ。
「アレン!父さん、アレンが心配でついてきちゃったぁ。まぁ、危なかったとこだし、ケッカオーライってことで…な!?」
「ど、どういうことだよ??」
ダッカが、たまらず訊ねた。
「父さんに訊かなきゃわかんねぇよ」
すると、アレンのお父さんは、話し始めた。
「あぁ、ほら、アレン知らなかっただろうけど、お前の祖先も、えれめんとにたずさわってたからな」
「えぇ、何で教えてくれなかったの?!」
「そりゃぁ、おめぇ、俺がまだ生きてるからさ。こいつらは、親が死んじまって、こうやって苦労してんだ。よくやったよお前ら」
そう言いながら、後ろから、何かを出した。それは斧だった。
「父ちゃん気がきくだろ??」
するとその斧を、エリーに手渡した。
「お前さんは、炎玉を割りな」
「えっ、はい」
エリーは、斧で炎玉を割った。
「次はダッカ。お前だ。お前は風玉だ」
「わかりました」
ダッカはすぐに、風玉を真っ二つにした。
「次はアレン。お前は地玉だ。思いっきりやれよ」
「わかった」
アレンも、思いっきり地玉を割った。すると、最後に、アレンのお父さんは斧を自分で持ち、水玉の上にかざした。
「父ちゃんの友達もな、エレメント関係者だった。けど、いつぞやの大地震で、全員死んでよ、遺言を果たせなかったんだ。だから父ちゃんはその分な」
そう言うと、斧を空高く振りかざした。
振り下ろした斧は水玉を真っ二つにした。
「では最後に、この陰玉とやらを片付けたいんだが、エレメントがなくなった今、こいつは意味をもたねぇ石ころだ。こいつは…」
アレンのお父さんは、大きく振りかぶって、思いっきり投げ飛ばした。
「…こうだ!!」
陰玉は、真っ直ぐ、飛んでいく。方向は海。
陰玉が遠くに消えて行く中、4人は午後の光に照らされていた…
読んでくださってありがとうございました。感想、アドバイスなど、頂けたら嬉しいです。