世界の始まり
暗く黒く深く見えない。
何もない、何も、手も足も頭も胴体もない。
意思も意味も何もない。
生きていると考える事がある、それはもうたくさん、でもそれは必要なのだろうか。
本当に大切なことなのだろうか。わからない。
恋愛、夢、友達など、高校生が持てる物など多くはないその中でなにが本当に大切なんだろうか。
何もない俺にはわからない。
他人に真剣になんてなれないし、ましてや夢なんてあるわけ無い、大体が世間が吹聴する話に流されて流れて行く。
生まれてからそうだった。誰とも知れない、話したことすらない人間に俺という人物は作られる。
意思や意味を作られて変えさせられる。そうしないと、この世界は生きていけない。
人と衝突する度に俺は死に新しい俺が生まれた。適応し殺されて、また適応する。
そんな人間が見る夢は本物だろうか、友達と会う時、恋人と会う時、そこにいるのは俺は本物だろうか、また自分を殺して生まれた俺なんだろう。
こんな偽りだらけの人生に意味はあるのだろうか、自分を騙し、他人に嘯く。欺瞞だらけのこの世界は本物だろうか?
「あなたは生きたいの?」
さぁ、生きる意味のない人生だ。どちらでもいいかな。
「じゃあ死にたいの?」
どうだろうか、死ぬ意味もない。どちらでもいいかな。
「そう……わかった」
そう。意味のない人生、変わらない人生そんなのばっかりで、辛い事に慣れて自分を誤魔化し社会に貢献せよと全ての大人はそういうだろう。
あいつはどんな人生だったろか、運命に抗い死んでいった。彼女が最期に笑顔は幸せの笑顔だったのだろうか。
流されず抗って傷ついて、なんの意味がある。
世界にみんなに与えられた自分に抗っても痛いだけだ傷つくだけなんだ。
なのになぜ抗って、戦って傷を負った死の手前なのに、なぜ笑えるんだよ。
こんな俺に出会えて何がよかったんだよ。
こんな理不尽恨めよ。当り散らせよ。それが人間だろ?
他人を貶めて、利用し自分本位に生きる。
「なのにあなたは知りたいのね」
なにを?
「人を自分を。あなたは揺るぎない信念に出会った。そして強さに出会った、あなたのために死の恐怖すら打ち破り笑顔を見せる強さに」
こんな自分は変えれない、けど誰かのために動けたのなら、ほんの少し自分で動けたのなら、本物の自分だと言えるかも知れない。そしたら人は変われるかも知れないこんな俺でも動き出せたのだから。
「そう、良かった。」
光が差す、頭上からパラパラと音もなく黒い破片が落ちてくる。黒のカケラが剥がれ落ち下に消えていく度に青い光が広がっていく。
眼前に広がる淡い青一色の世界。
いつのまにか黒は足元だけになり気づいた時には全てが青いに染まっていた。