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終わりの象徴。

風景は変わらないのに見えている景色は色を失ったかのように味気なく見え、音も匂いもなにも感じない。ただ見えている。全ての感覚が鈍って正常に動けないでいると、急激に風景は変わり気がつくと地面がすぐ目の前にあった。


「っ!はぁ!はぁはぁ」

息を忘れていたみたいに大量の空気を肺に送り込む。次第にヒリヒリと感覚が戻ってくる。すると隣にも同じく肩で息をしているシリカがいた。



「シ、シリカ大丈夫か?」


「え、ええ、けどいったい何が?急に身体が動かなくなったと思ったらここにいたのよ。」


まさしく俺もそうだ。意識を失う感覚とは違う、意識を保った状態で体の活動が一瞬だけ止まる感覚。

なぜかはわからないがそれを感じて気づいたらここにいた。


「え、なんで。」

シリカからそんな声が聞こえて、周りを見てみると手を地面につき見上げる俺たちの目の前で黄金色の長い髪が風でふわりと揺れるのが目に入る。

そしてその隣には赤い短髪の筋骨隆々な巨漢の男が身長と同じくらいの巨大な大剣を肩に乗せてそこにいた。



シリカは戸惑いの表情で前の2人を見ていた。

「ウルヴァリン・ツアレ皇帝……なんでここに?」

ぼそっと小さな声でシリカが呟くのが聞こえた。



後ろ姿しか見えないがその大きな背中だけでも貫禄や強さが伝わってくる。

2人の強者は肺が締め付けられるような威圧感を放っていたが、それと同時に正体不明のモノから守られているという安心感も得ていた。




「アイリス、間違いないな。命そのものを穢されるような感覚……人ではありえないぞ。」

胸にしっくりくるような勇ましい声で剣聖はアイリスに語りかける。


「あぁ、間違いない。あれが『ラフィア』だろう」

俺が知っているアイリスとは違い、鋭い刺すような声音が彼女から聞こえてきた。


「言い伝えではまだ先だったが、来てしまったなら仕方ない。」

アイリスはそう言うと帯刀している剣を抜刀する。

彼女の髪と同じ黄金色のそれは太陽のような輝きで周囲を照らしている。なのに相対する黒いモヤは現れてから一度も動かず今なおただじっと止まっていた。



「あぁぁーこ、こんなにも、は、早く現れるとは、ねぇぇえ」


纏わりつくような声は、アイリスから少し離れた位置で準備運動をしているかのように手をプラプラとさせて宙に浮いていた。

あの変態はむしろ敵側に見えるんだが、ちゃんと戦うのかこいつ。

だがそんな心配は不要なようで、さっきとは違い嫌悪感はなく、目の前の存在に意識を集中しているのかニタニタと笑いながら凝視していた。



「おまたせ……。」

ガチャガチャっと金属が擦れ合う音が聞こえてきて、後ろをみると髪の短い白髪の女の子がガトリングガンのような重火器を携えて俺たちの後ろから現れた。


「遅いぞ、マリア・メルト。早く位置につけ。」

剣聖にそう言われても顔色1つ変えることなく、スタスタと黒いモヤに近づいていく。


「返事をしろ、返事を、ほんとに最近の若い子は反抗期しすぎだろ。もっと年上を敬うもんだぜ。」

剣聖が少し気分を害したようにしていたがアイリスに「まぁ、まぁ、」となだめられて不承不承といったように剣を握り直す。



あの小さい白髪の女のコがすごい勇気だな。もしくはただのコミュ障か、俺ならすぐさま返事をしてる。 あんな態度を取れるってことは最強のうちの1人って訳か。

あんな見た目が中学生くらいでもすごい強い力を秘めているのだろう。全く緊張した気配もなくごく普通に向かっていく。

黒いモヤからある程度近くに立ち止まると持っていた重火器を向ける。

ってかよくみると続々と人が集まってきている。周りを見れば武装した兵たちが集まり始めている。



「おい、シリカ今ここに最強の4人が集まっているのか?」

この状況で聞いていいのか迷ったが確認したいこともあったので小さな声で聞いてみる。

「そうよ。まさか、こんなに早く現れるとは思ってなかったけど被害なくこうして集まれたのは幸いね。」


そう言って少し安堵の表情を浮かべているが、

なるほど、やっぱりあれが『ラフィア』で間違いないらしい……そしてまたしても巻き込まれたみたいだな。だが悲観した気持ちはなかった。

それは目の前の4人の存在がそうさせているのだろう。



『ラフィア』過去、世界を滅ぼした存在で、言い伝え通りにこの地に現れた。だがここには過去類を見ない最強の力が集まっているらしい。最初は少しの心配もあったが、今は負けるイメージなど湧いてこないほどに安心しきっていた。

アイリスもそうだが、剣聖や癪だがあの変態にも自分の持つ力への自信が感じ取れる。白髪の女の子はちょっとわからないが、この4人から溢れてくるのは絶対的な強者のそれだった。



「では、俺からいこう。先陣を切り奴の力を確認する。」

剣聖は一歩ずつ奴に向かいながら剣先を向ける。

瞬間、剣聖は姿を消して気づいた時には大剣がモヤに接触し、火花を散らしているところだった。


「硬いな、ならば、はぁ!!!」

剣聖の持つ大剣は血のように赤く染まり、黒いモヤに大剣が深く切り込まれていく。


そして、


綺麗な切断音が耳の中で木霊して静寂が訪れる。

真紅の大剣はいつのまにしまったのやらどこかに消えていた。これも魔法なんだろうな。4次元ポケットみたいに幾らでもしまえて、いつでも出せる。そんな魔法があるのだろう。

俺なら大量の氷をしまっておいて夏場を快適に過ごすな。なんならその氷から出てくる冷気でクラスの女子を涼ませてあげる。そしたら女子に「やだ、青井くん凄いクール、冷気だけにね♪」なんてジョーク言われてモテはやされるんだ。……ないな。

なんて益体も無い事を考えていると、後ろから、ドスっと何か落ちる音が聞こえる。



振り返ると、そこには真紅の刀身が地面に突き刺さっていた。そして、今度はドサッという音がしてなにかが転がってく。それは先ほどまで剣聖ウルヴァリン・ツアレの胴体に繋がっていた頭が転がっていた。

勝利を確信したような笑みをそこに残したまま。


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