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最強の戦力

うるさい心臓を誤魔化すように質問を投げかける。



「な、なぁ、『ラフィア』が来ても立ち向かうてきなこと言ってたけど本当に返り討ちできるのか?一度世界を滅ぼした災害なんだろ?」



食べる事に夢中になっていたシリカは、ん?と口を大き開けたまんまこちらにチラリと目を向ける。


「んがっ……ごく、ご馳走さまでしたっと、それはねあんたも聞いた通りここには世界最強が集まっているのよ。」


食い終わるの早すぎだろ、もう少しこの風景や味をしっかりと噛み締めてから飲み込めばいいのに、そう思いながら俺も一口貪り、んで?と続きを聞く。




「スミル帝国の王。剣聖ウルヴァリン・ツアレ、彼一人で何万もの兵士を打ち滅ぼせる実力を持っているらしいわ……。」

いつま経っても続きが話されないのでシリカを見ると、じーーーっと見ていた、俺のサンドウィッチを。


「欲しいのか?」


「ほ、欲しくない!……けどいらないならもらってあげるわよ?」

とは言いつつも熱視線をずっとサンドウィッチに浴びせながらなので強がりが出まくりなんだが、


「じゃあ、質問に早く答えてくれたらこれやるから、な?」



「武器や防具を売って成り上がった国の王族と、あとはアリシアなど!」

言い終わるとスパッとサンドウィッチを奪い取りシリカを見たときにはもう食べ始めていた。


「いやおい、雑すぎだろ。」


「いいじゃない。どうせ聞いたところで会うことなんかないんだしね」

またも神速の勢いで食べ終わり、シリカは指をペロッと舐めていた。

まぁ確かにそうなんだが、気にはなるんだよな。




しぶしぶながら聞き出すところによると、この世界にある多くの国のながでも特出して強大な力を持つ国がある。


スミル帝国、さっきの追加情報でその剣聖のおっさんは山1つを一瞬で燃やす魔法を素手で弾き返したり、剣の一振りで地面を割ったりする化け物らしい。


あとは武器商人から成り上がった商人が集まる国。

ラトビアン共和国、商人が力を持つその国で最強の武器と防具を取り揃えその国で最も強く、英知のある奴が装備しているらしい。実力のほどは詳しく知らないがなんでもその装備をつけた奴は1人でもそこらへんの国なら攻め落とせるとか……すげぇチートの集まりだな。



「それで?なんか4人って聞いてたけどあと一人は?」


「あ、えーーーっと」

なぜか突然言い淀み、口を半開きにして何かが喉に詰まったような変な顔をしている。


「まぁ、なんていうかちょっと、いやだいぶ生理的に受け付けない人であんまり口にもしたくないんだけどな。」


苦虫を100匹ほどすり潰して、1週間風呂に入ってないおっさんのパンツに染み込ませて、それを頭から被らされた。そんなような顔をしていた。

嫌だな特におっさんのパンツがな。




シリカがまだ嫌そうに顔をしかめて、えーーーっとなーーと未だ言いあぐねていると、


「ひっどいなぁぁあ、ボクも一応この世界を守るためにいるんだけど、そんなに敬遠しなくてもいいのにぃ」

背中を舐めるような身の毛もよだつ声色が突然空間を埋め尽くした。




「ひっひひひひ、相変わらずシリカちゃんは可愛いぃぃいなぁぁあ、髪もサラサラで肌もすべすべでぇえ触りたいなぁぁ、なめたいなぁぁあはぁはぁあははは、ははうひひ。」


空気が呟いているかのように発生源のない声がこの空間に響いている。

き、気持ち悪い。頭に直接響く感じも、声も、内容も、不快感を全力で引っ張りださせるてくる。


「レイカー卿そのような言葉は気分を害するのでやめていただきたいです。」

凛とした口調でそうシリカは口早に言い切る。



すると目の前に黒い外套を身に纏った長身のやせ細った男が現れる。

細長い指で持っている杖をカリカリと掻きながら、笑っていない目で満面の笑みを浮かべていた。



「いやぁ、申し訳ないねー趣味みたいなものだよ、それよりそこの男は誰だい?」

ギラリと睨むその瞳とその声音には明らかな敵意、殺意が込められていた。


「い、いや俺は、連れてこられたっていうか、そんな感じです」

現れた不快感の固まりみたいな奴に話しかけられて、慌てて要領を得ない事を言ってしまう。


「この人は私のお客様です。失礼しますね、私達は戻りますので」


そう言うとシリカは俺の手を少し強く握ると手を引いて立ち去ろうとする。俺の手は霧吹きで吹き付けたかのように汗ばんでいたので、手を離そうとしたが、冷たい彼女の手のひらがプルプルと震えているのを感じてほんの少し握り返した。

一瞬だけビクッと手は震えたが落ち着きを取り戻して冷たい手に力強く握り返される。



「もどるわよ。」


「そうだな。」


吊り橋効果なのか?よくわからないが一心同体のような感覚を覚えて、正体のわからない安心感が体を温めてくれた。



「おいおいおいオイィい、連れないなぁぁ、シリカちゃぁぁん?」


体温を奪うように纏わりつく声は俺たちの足を重くさせて動けなくさせてくる。

なんだよ、なんなんだこいつは?針金で止められたかのように足は1ミリも動かない。

するといつの間に目の前に来ていたのか、見たくもない顔面が俺たちの歩幅一歩分先に現れる。

血走った目に痩せこけた頬、ボサボサの長い髪が不気味に揺れていた。無理やり作ったかのようにギチギチと音を立てて笑みを浮かべるとゆっくりと手をシリカに伸ばし始める。


「カ、か、かかかかか。動けない、ない?いつもの邪魔ものもいな、い、だろ?さぁ、触れさせておくれ?」


こいつはやばい!異常者を超えてる。だめだ触れさせては、近づけさせては、なのに動けない。体が動くなと命令している、今動いたら危険だと。


目だけを動かしてシリカを見ると青ざめた顔でただじっと前を見つめていた。気丈な振る舞いを見せるシリカの手は、震えを誤魔化すように強く握りしめてくる。



特に仲が良いわけでもないけどこんな風に握り締められたらなんとか助けないとと思ってしまう。

それにこのままだと思う俺もやばいしな。



「おい、おっさん。迷惑防止条例違反って知ってるか?」

絞り出すような声でなんとか相手の注意を引きつける。



「は?」

と目の前のおっさんと横のやつからも聞こえてきた。いやお前が言うのはおかしいからな!

動けない体で唯一動く所を使って止めてやったのにほんとコイツは可愛いくないやつだ。



「な、ぁなぁんで、動ける?ける?」


「うるさい、壊れたラジオのように何回も言わんでもいい、聞こえてる。」



少し驚いたように目を少しだけ見開き一歩分後ずさる。

見たくもないが初めて感情を見た気がしたぞ。

「あへえへへへ」

また近づこうとしてくる、今度は俺に。


「ちょ、ちょっと待った!ほら動けるの首から上だけだし、気にすんなって!な?」


機嫌を直してもらおうと取り繕うも無駄なようで手が、何かに穢れた細長い指をこちらに向けて伸ばしてくる。





「そこまでにしてもらおうか。」

閃光のように轟いた声の方に目をやると、黄金色の長い髪が月明かりに照らされて神秘的な輝きを放つアリシアがいた。


「レイカー卿、私の友人にちょっかいをかけるのはやめてもらおう。」

スタスタとこちらに向かってくる音が近づくたびに体の硬直が無くなるのを感じた。


「くっっむっっつ!!かぁぁぁぁあ!!」

耳を劈く奇声を残して、溶けるように消えてしまう。



消え去ると、あたりの空気は戻り体に体温が戻ってくる。

「ぷっはぁぁ!なんだよあれ、生きた心地がしなかったぞ!」


溜め込んでた息を一斉に吐き出し、深呼吸をして整える。全身に血が巡り出し心臓が思い出したかのようにバクバクと早鐘を打ってくる。あいつに触れられてたら走馬灯を見えてたまであるな。


ふとシリカに目をやると手を握ったままその場にへたり込んでいた。


「お、おい、大丈夫か?」

出来るだけ安心させるように言葉を発したが俺も震えが残っていたのか、なんとも情けない声を出してしまう。



すると近づいてきたアイリスに優しく抱きしめられる。

「大丈夫。大丈夫だぞ、シリカ。」

安心したのか胸に顔を埋めるとシリカは小さく嗚咽を漏らし始めた。



俺も結構泣きたいんだけどな。

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