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住野よる「君の膵臓をたべたい」(双葉文庫)感想

10 君の膵臓をたべたい(住野よる/2017年4月/双葉文庫)

(単行本刊行は2015年6月)


 真打ち登場。大ベストセラー、漫画化、実写映画化。

 タイトルは御存じでしょう。最近一番成功したラノベ。

 愛称「キミスイ」。


 ヒロインは女子高生。美少女。

 膵臓すいぞうに難病、余命幾ばくもないが、周囲に

隠して元気に振る舞う人気者。


 対する主人公の少年は、クラスメイト。

 高一の四月、ヒロインの病気を偶然知ってしまいます。

 この件は二人だけの秘密に。


 少年はさえないキャラ。

 読書家で理屈っぽい。内気で友達なし。


 そんな主人公へヒロインはぐいぐい接近。すごいです。


 病気を主人公に知られた次の日には早速、主人公が

一人でやっていた図書委員に加わる。これにて、二人は

図書室で話す仲に(放課後のみの関係で、クラスには

知られていない模様)。


 その後、夏休み前にエスカレートし、


・日曜日にいきなり高級焼き肉食べ放題デート


・その翌日にはスイーツ食べ放題放課後デート


・三日後には遠出お泊まり(主人公は日帰りのつもりで

待ち合わせたが、実は泊まりと後で判明)


 以上、これら全部ヒロインが企画。


 主人公は強引に誘われ、ついていっただけ。

 幾らラノベだからって、努力せずここまで一方的に

恩恵を受ける少年も珍しいです。


 そもそも、命を題材にした泣ける小説という触れ込み

だったのに。何ですか、男性読者ウハウハのこの展開は。


 美少女に振り回される非モテ少年。コテコテのラノベ。

 間違えて別の作品を読んじゃったかと疑ったよ(苦笑)。


 主人公には友達こそいないが腹黒さはなく、口止めも

不要。なのに、この好待遇は一体何だ。


 でも、私はそれがうれしくもあり。

 楽しませて、さあ、最後はどう泣かせてくれるのかと。


 しかし、残念ながら、ラストのメッセージでぶち壊し。


 説明調で無駄だらけ。あれじゃ単なるアリバイ作りです。

 あのぶっ飛んだヒロインが、あんな文学少女じみた

長文を書くとは到底思えないですから。不自然過ぎ。


 作者の心境を推察するに、むごい死や難病をネタに

ラブコメを書き始めたものの、途中で怖じ気づいて、

徐々にお涙ちょうだいへシフトしたのかもしれません。


 「あんな陽気な人でも、実は普通の女の子。やっぱり

悩んでいたんだよ」という安楽椅子に座り込んでしまった。

 批判の芽を摘む自衛策として。ちょっとなあ。


 ヒロインは陽気で、めちゃくちゃで、うざいくらい

しつこく絡んできて、非常に魅力的。私も惚れました。

 「こんな素敵な子がもうすぐ死んじゃうのか」と思うと

切なくてまぶしかった。


 そのまぶしさを損なうことなく、うまくラストへ

つなげてほしかった。


 例えば、悲壮感のかけらもなく死んでいき、後から

ふと悲しみがわいてきて、「あいつ何考えてたんだろ」

と主人公が涙ぐみ、読者も泣かされるとか。

 お祭りの後の寂しさみたいな感じで。


 中盤まであんなに「ラノベしてた」んだから、たとえ

不謹慎でも、最後までブレずに同じノリで書き切って

ほしかったなと思うんですよね。


 作者御自身も罪悪感から逃げず、作家として、

ある種「ワル」に徹してほしかった。


 その覚悟が中途半端で、私は全く泣けなかったです。

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