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岸本和葉「この青春にはウラがある!」(電撃文庫)感想

66 この青春にはウラがある!

(岸本和葉/2023年6月/電撃文庫)


 女の子ばかりの(そしてもちろん、全員が美少女ッ!・笑)生徒会に、男子が一名だけ加わり、楽しい毎日を送るお話です。

 ……身もフタもない説明ですけど、間違ってはいないはず。この枠は強固で、かなり真面目に維持されていますので。


 どういうことかといえば、「このあと、普通だったら、悲惨な展開にもなり得る」というピンチが何度もあるんですが、陽気なムードを壊すことなく、都合よく、上手に話が進むのです。この安心感、安定感。


 まあ、悪く言えば「冒険してない」わけですけど、一方で、「ラノベに冒険なんて求めてねえよ。気持ち良く読めればそれでいいんだ」という人たちもいるはずで(実は私自身、割とそうだったりします)、その手の期待を、裏切らぬ仕上がり。


 舞台は高校。

 都内トップクラスの進学校で、生徒会長になった者は、校内の名誉はもとより、大学受験で有利になれる等、うまみがあります。その座を狙う者も多い。


 もっとも、会長になるには選挙に勝たなければならないですし、日々の生徒会業務も多忙。予算の計算等、他校なら教師がやってる業務すら、一部を生徒会で引き受けています。

 基本、面倒くさいので、大部分の生徒は生徒会活動に無関心です。この辺は、至ってリアル(笑)。


 現在の生徒会長は、皆が憧れる美少女、八重樫(やえがし)(ゆい)。三年生です。

 主人公は、二年生の少年。花城(はなしろ)夏彦(なつひこ)といいます。


 物語は、学校の屋上で、夏彦が唯と偶然出会うところから始まります。

 何と、唯は夏彦の氏名を知っており(逆は当然としても)、驚く夏彦ですが、唯が言うには、全校生徒の名前を覚えているそうです。スゲエ。やはり、非常に有能であるらしい。

 ただ、芝居がかった話し方は、若干、浮き世離れしています。それでいて、気さくで照れ屋の一面もあり。

 優秀で美人で、かわいくてお茶目な唯へ、夏彦は、いっぺんに好感を持ってしまうのでした。


 しかし、せっかく、いい感じで談笑できたのに、別れぎわ、衝撃的な出来事が起こります。

 唯の着た制服スカートが、不意に風でめくれるのですが、信じられないことに、唯はパンツを履いていなかったのです。

(唯は、スカート内を見られたことに、気づいていない様子。)


 一瞬だったので、もしかしたら見間違いかもしれない。けど、どうも、そうとは思えない……。

 あんなに素敵な先輩が、なぜノーパン!?

 夏彦は、唯のノーパン疑惑の真相を、むしょうに突き止めたくなります。


 夏彦は、女好きでひょうひょうとした性格ですが、特に趣味はなく、部活にも未加入です。

 とはいえ、決して孤立しているわけではありません。クラスメイトには、幼なじみの美少女・一ノ瀬ひよりもいます。


 幸い、ひよりも生徒会の役員です(会計)。

 早速、夏彦は、唯のノーパン疑惑をひよりに話します。

 女子相手に、ちょっとストレート過ぎる気がしますけど(笑)、ひよりは、夏彦のスケベっぷりもよく分かっているので、話すこと自体は大丈夫です。

 もっとも、ツッコミを受け、容赦(ようしゃ)なくブン殴られますけど。ひよりは空手が強いのです。


 顔面を殴られたら、夏彦の「鼻」が奥へ引っ込んでしまい、指でつまんで、引っ張り出さなければなりません(笑)。そういったアニメチックな描写も楽しい。

 地の文章も、口語調で、愉快です。夏彦の一人称なのですが、ギャグ連発の語り。


 そのあと、生徒会長の極秘情報を知ったとして、夏彦は生徒会に(会長以外)「連行」されてしまいます。

 で、「今から、お前の制服を脱がせて、恥ずかしい写真を撮る。もし、生徒会長の秘密をバラしたら、その写真をばらまくぞ」と脅迫されます。


 しかし。

 女好き、ちょっと変態(?)の夏彦は、全く動じないどころか、むしろ喜んでしまうのでした。

 「美少女に脱がされるなんて、ごほうびだろ。しかも、女性の気持ちを重んじる俺が、会長の秘密をバラすわけがない。つまり、写真をばらまかれる心配もない」と。まあ筋は通ってますよね(笑)。


 生徒会役員たちは呆れ果てますが(そりゃそうだ)、脅しが通用しないことには納得します。

 そこで、作戦を変え、夏彦を生徒会へ引き入れることにします。規則としては、選挙があるのは会長だけで、それ以外は会長の指名さえあればよいのです。

 ひよりの口添えもあり、これはうまくいきます。屋上での出会いで、既に夏彦と打ち解けていた唯も、事情を聞いて、快諾。


 夏彦としても、悪くない提案でした。

 美少女に囲まれる喜び以外にも、何か一生懸命になれる・人の役に立てる活動に加われたことが、素直にうれしかったのです。

 この意外な純粋さ、真面目さが、夏彦の隠れた魅力です。だからこそ、ひよりに好かれているし、短時間で唯の信頼も得られたわけです。


 ちなみに、唯のノーパン疑惑については、物語の早い段階で真相が明かされます。

 本当に履いてなかったのか否かは、実際に読まれてお確かめください(笑・書くと、やや、ネタバレになっちゃいますし)。


 余談ですが、ブックカバーにも、あっと驚く仕掛けがありますから、是非、持ち上げたり、外したりしてみましょう(笑)。

 イラストは、Bcoca氏。


 いずれにせよ、疑惑が起きた原因は、唯のある「特性」だったのです。

 はっきり言って、生徒会長としては、良い特性ではないです。もし、一般の生徒たちに知られてしまったなら、唯のカリスマ性は揺らぎ、最悪、生徒会長不信任決議案が出されるおそれもあります。


 実は、今まで、会長以外の生徒会役員(女子三名)は、この秘密が外部へ漏れないように、会長を守る役目も(にな)っていたのでした。

 もちろん、これからは夏彦も、その任務に加わることになるわけですが、さあ、果たして、どうなることやら。

 ……ってな具合で、話は盛り上がっていきます。


 困った「特性」はあるにしても、唯の生徒会長としての使命感は本物です。

 また、他の女子役員も、唯を支えつつ、学校を良い雰囲気に保ちたいと考えており、基本、皆が善良です。


 無論、生徒会役員でいた方が内申や受験に有利だとか、生徒会室の居心地が良いとか、そういう打算も、ないではないです。でも、それは、青春真っ盛りの高校生としては、ごく普通の感覚として許容範囲でしょう。

 で、夏彦の性格についても、前述したとおり。


 つまり、主人公もヒロインたちも「いい奴ら」ばかりで、最初に書いたとおり、最後まで気持ちよく読めるラノベでした。


 ラノベのお約束どおり、夏彦はモテモテです。

 生徒会役員の美少女たちや、それ以外の美少女が(同じクラスの女子。男子たちからアイドル的人気)、一人一人、夏彦に絡んできて、それぞれ、裏の事情を打ち明けてきます。皆、夏彦の意外な誠実さが好きなのでしょう。

 それらを受け止めて、いろいろ考えつつ、学校生活や自身を見つめ直す夏彦。

 ベタな展開ではあるものの、前述のとおり、内容が暗くないので、楽しく読みました。


 余り、大きな山場がないため、スリルや泣かせ、意外性は少なめでしたけど、巻末には続編の予告も載っていましたから、そういう刺激はそっちでどうぞ、ということかもしれません。

 もっとも、このまま平和的なほのぼのムードが続くとしても、それはそれで、悪くないような気がします。

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