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いぬじゅん「いつか、眠りにつく日2」(スターツ出版文庫)感想

46 いつか、眠りにつく日2

(いぬじゅん/2019年6月/スターツ出版文庫)


 2016年の「いつか、眠りにつく日」の続編です。

 過去記事に取り上げていますから、細かい設定等はそちらも御参照ください。


 この物語の世界観として、死後はこうなっています。


・人は命を落とすと、死後の世界へ旅立つ(要は、成仏する)


・ただし、絶命直前に強い未練を抱いた死者は、それを解消しなければならない。リミットは49日


・未練解消前の死者は、生前同様にこの世の様子を見聞きできるが、生者との交流はできない(未練解消時のみ例外)


・未練解消前の死者は、物体に対して、触れたり動かしたりすることは可能だが、生者側からそれは感知できない


・49日以内に未練解消ができなければ、地縛霊となってしまう


・未練解消のサポート役として、「案内人」が付く。外見は人間だが、この世を超越した存在。この仕事を200年以上続けている者もザラ


 という感じです。


 あとがきにも書かれていましたが、今作から読んでも大丈夫なように、以上の設定は改めて説明されていきます。


 ただ、前作を読んでいた私は、冒頭で、主人公の女の子が、記憶もあいまいなまま身動きも取れず、山奥に座り込んでいる場面を読んだ時点で、状況をすぐにつかめたのでした。


 ああ、恐らくこの少女は既に亡くなっており、未練解消に失敗し、徐々に弱って地縛霊となりかけているのだろうな、と。


 やはり、その通りでした。

 少女は高校2年の頃に死亡。それから9か月ほど経過している様子。


 そこへ、りんという名前の少年が話しかけてくるところから、物語は始まります。

 輪は霊感が強いので、霊も案内人も見えるのです。


 久々に声を出した少女は、光莉ひかりという自分の名前を思い出します。

 少しずつですが、生前の記憶も取り戻していきます。


 やがて案内人も現れ、三人で話し合ううちに、光莉には、あと一回だけ未練解消の機会を与えられることが決まります。

 ただし、


・特例でもあり、リミットは9日だけ


・半分は地縛霊になりかけたので、再び動けるようになるためには相当な苦痛を伴う(要は、地面から体を引きはがすような感じ)。また、そのあとも体調は安定しない


・自らの死因も、未練の内容も、未練解消から逃げた理由も、自分で思い出すこと。また、自分で克服すること


・リハビリも兼ね、案内人の別件の仕事を手伝うこと


 との条件付きではありますが。


 こうして、光莉は行動を開始します。


 だんだん、過去を思い出してゆく光莉。

 どうやら、生前は女子二人、男子二人の仲良し四人グループに属していたらしく、会話の断片や名前、互いの関係性も分かっていきます。

 やっぱり、男子のいずれかとの恋愛がらみかなあ、と推理していきます。


 それと、輪には更なる能力が備わっていることも判明。

 何と、自分の霊感による「霊力」を生者へ分け与えることで、一時的に光莉と交流させることができるのです。


 その力を使わせてもらい、光莉は父母等と再会し、誤解を解いたり、最後の別れをしたりします。


 その他、全く別の死者の未練解消エピソードも加わります。

 ここら辺は前作と同じです。なかなかに感動的ではありました。


 しかし、読むほどに、私には次の2点がどうしても引っ掛かってきまして。


・そもそも、未練解消が許される期限は49日だったはず。何らか事情はあるのかもしれぬが、光莉だけ特別扱いはちょっとどうなんだろう


・「原則、死者と生者は交流不可」だったはず。なのに、輪の霊力はずるい。ちょっと都合が良過ぎではないか。これじゃ、交流し放題にもなりかねない


 両方とも、物語の根幹設定に関わるだけに、私は興ざめでした。

 もはや何でもありじゃん、と。


 ところがところが。

 全然、そうではなかったんですよ。


 終盤の鮮やかな種明かしと伏線回収は、今回も健在。

 まさしく大どんでん返し。またしても、見事にだまされました。

 ああそういうことかと、納得させられました。


 前作とは違い、読みながら涙ぐむことはありませんでした。

 多分、仕掛けが凝っており、泣ける話というよりも、ゲームやミステリーの謎解きみたいな雰囲気だったからでしょう。


 ともあれ、読み終えてみれば2作目も、1作目と甲乙をつけ難い力作でした。


 もっとも、好みで言えば、結末は前作の方が良かったですね。


 なぜなら、死後の世界をさんざん描きつつも、


「でも、結局、人は死んだら終わり」


 という冷徹なメッセージが、前作からはしっかり伝わってきたからです。


 逆説的に、読後に頑張ろうと思えるのは、前作の方ではないでしょうか。

 私たち読者は、ファンタジーを振り切って、ドライな現実を生きていくしかないのですから。

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