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高峰自由「俺の青春に、ゲームなど不要!」(電撃文庫)感想

35 俺の青春に、ゲームなど不要!

(高峰自由/2018年2月/電撃文庫)


 これはかなりおすすめです。

 楽しく読みました。


 主人公はさえない少年で、そして、タイプの

違う美少女二人と交流して、という感じで、

ラノベのお約束は踏まえています。


 しかし、美少女との「イチャつき」は

抑制されています。

 あくまでも、主役はゲーム。タイトルに偽りなし。


 ゲームのジャンルは、テレビやパソコン画面で

行う物です。ゲーム機やソフトを使います。

 あるいは、携帯ゲーム機で行う物も。


 現実世界でもたくさんの愛好者がいますよね。


 要は、CGなどで描かれた架空の場所を

舞台に、プレイヤーが架空の人物などを

主人公として動かし、格闘や冒険をする

というもの。

(昔は「ビデオゲーム」とか呼ばれて

いましたが、今も言うんですかね。)


 主人公の少年は高校二年生。

 かつては、虚弱体質で学校を休みがちで、

小中学校時代はゲームに夢中。


 その当時、学校では孤立していましたが、

ゲームの達人として、インターネットでは

カリスマ的な有名人となりました。


 自分がゲームをプレイする画面を撮影し、

それをネットへ上げた物も大人気。

(いわゆる「ゲーム実況動画」と呼ばれる物。)


 また、ネットほどではないにせよ、

ゲームセンターでも注目される存在でした。


 ゲームセンターで知り合い、よきライバルに

なった美少女もいました。(まさに、前述の

美少女二人のうちの一人です。)


 しかし、高校へ進学してしばらくすると、

環境が新たに変わったためか、友達が

でき始めます。

 ゲーム抜きでも、教室での楽しいひとときが

増えていったのです。


 クラスメイトの美少女が、いい感じに

クラスを仕切ってくれているためでもあります。


 この子がヒロインです。

 モデル並みの美しい外見に加え、

勉強もスポーツもでき、しかも人格者。

 学級委員長で、生徒会副会長。


 クラスどころか、学校中の人気者です。

 この少女のおかげで、クラスの明るさや

平穏も保たれているわけなのです。


 やがて、主人公の少年はゲームを

やめてしまいます。


 自分の殻に閉じこもってゲームばかり

やっていた過去とは決別しようと思ったのです。

 普通の健全な高校生活を送ろうと。


 ところが、です。


 ひょんなきっかけから、主人公の少年は、

クラスメイトのこの美少女から、ゲームの

やり方を教えてほしいと頼み込まれるのです。


 一見、完璧で何不自由なさそうな

この少女も、厳しい家庭環境などで

実は結構疲れており、ストレス解消法や

夢中になれるものを探していました。


 そして、ゲームはどうだろうと、

強い興味が湧いてきたのです。


(余談ですが、この「ひょんなきっかけ」の

場面はドタバタで、非常に楽しかった。


 ただ、これ以降もずっとこのノリで

やられたら疲れるなあとも思いました。


 でも、すぐに真面目なストーリーへ

戻ったのでうれしかった。)


 さて、助けを求められた主人公の少年。

 もうゲームなんてこりごりだと思っており、

断りたいのが本音です。


 が、むげには断れない事情もあります。


 今、そこそこ学校生活を楽しめているのは

この子の「環境整備」のお陰でもありますし、

他にも個人的な恩があるから(物語冒頭に

出てきます)です。


 とはいえ、話はそう簡単ではありません。


 学校では真面目な人格者で通っている

この美少女は、ゲームをやっていることを

誰にも知られたくないのです。

 そして、それは家庭でも同じ。


 主人公としても、学校中の人気者である

この子と、余り大っぴらに行動を共にする

わけにもいきません。

 変な憶測を呼んだり、嫉妬を買ったり

しかねませんから。


 すなわち、まずは「秘密裏に二人で

ゲームができる場所」を確保しなければ

ならないわけです。

 ハードルが高いですよね。


 しかしながら、解決の糸口は意外な

ところから見つかり、物語は展開して

いきます。


 もうゲームはやりたくないと思って

いる主人公と、どんどんゲームを好きに

なってゆく少女とのギャップを、いかに

埋めていくのか。それも見どころ。


 それから、前述の「元ライバル」の

少女も、やはり、少年と本気のゲーム対戦を

やりたがっています。かつてのように。

 こちらもどうするのか。


 あと、この小説にはもちろん、ゲームを

する場面もたくさん出てきました。


 私自身はゲームを全くやらないので、

正直、「ゲームのシーンでは置いてきぼりに

されるだろうけど、まあ仕方ないよね」と

覚悟はしていました。


 ですが、大丈夫でした。

 ゲームの場面は丁寧かつシンプルに

描写されており、ゲームをやらない私にも

容易に絵が浮かびました。


 明らかに、ゲーム愛好家以外の読者へも

配慮されていました。


 少なくとも、テレビCMなどでゲーム画面を

見たことがある人なら、十分について行かれます。


 ゲーム自体の流れも面白かったですし、

さらには、現実での課題とゲーム中の課題が

リンクする瞬間もあり、熱くなりました。


 さあ、主人公の少年は、結局、ゲームと

どう付き合ってゆくのでしょうか。


 ヒロインがゲームのやり方を覚えてくれさえ

すれば、当初の義理は果たせるわけです。

 その時点でやめるのか、それとも。


 また、誰もが認める優等生のヒロインは、

ゲームと自分との関係性を、家庭や学校へ

どう納得させていくのでしょうか。

 あくまで秘密にするのか、それとも。


 小説の途中では、他にも幾つかの事件が

発生しますが、終盤、それらがギュッと収束し、

最後に大きな戦いが待ち受けています。


 盛り上がりに欠けることもなく、逆に、

盛り上げるだけ盛り上げておいてラストで

中途半端になることもなく、数々の伏線も

きれいに回収され、読み終えた時には

とても満足しました。


 文庫本の帯には「青春コメディ」と

ありますが、確かにギャグもたくさん出ては

くるものの、根底には一本の筋がきちんと

通っていて、よくまとまったストーリーだと

思います。

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