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椎月アサミ「カラフル ――明日の君は、十二月のひまわり。」(講談社ラノベ文庫)感想

32 カラフル ――明日の君は、十二月のひまわり。

(椎月アサミ/2018年8月/講談社ラノベ文庫)


 コテコテのテンプレといいますか、終始、

ラノベの「お約束」のみを組み合わせて、

ブレずに書き切った感じでした。


 市場で「こういう本」を出し続ければ、

当面は、主に男性読者から一定の需要が

見込める、というお手本のような作り。


 かく言う私も癒やされました(笑)。


 一気に読み通すのではなく、空き時間に

数ページずつ読んで行ったにもかかわらず、

わずか十日間で読了してしまいました。


 つまり、家でも職場でも、気付けば

この本へ手が伸びていたわけです。


 買ったきっかけからして、書店にて

即決のジャケ買いでしたので。


 表紙のカバーイラスト(蜜桃まむ)は、

白い半袖セーラー夏服で振り返る美少女。


 頭部と瞳の大きな、典型的なアニメ顔。

 楽しげだが、わけありな様子もある、

やや弱々しいほほえみ。


 これは癒やされるはずだ、絶対に期待を

裏切るまいとの確信のもと、私は本を手に

取り、レジへと直行したのでした。


 主人公・海詞みことは高校一年の少年。


 四人家族ですが、父親は単身赴任、やがて

母親も夫の赴任先へ引っ越し、大学生の姉も

友人とルームシェアで引っ越し。


 こうして、都合よく独り暮らしに

なった高一の夏休み(笑)。

 すっかり、美少女の受入れ態勢が

整ったところへ(笑・笑)。


 幼なじみの美少女・叶恋かれんが、

大きな荷物を持ち、押しかけるように

やって来ます。

 しかも、「私をお嫁さんにして」と

頼んでくるのです。


 いいぞいいぞ、そう来なくちゃ。

 余りにも分かりやす過ぎる展開ですが、

どうせやるなら、ここまで徹底してほしい

ですよね。


 叶恋は、四歳の頃に親の都合でイギリスへ

引っ越し、以降は年一回の手紙のみの交流。


 顔写真等のやり取りはなく、初めは誰だか

分からなかった海詞。

 見違えるほどきれいになった叶恋に、

海詞は動揺するやら、うれしいやら。


 しかも、叶恋は、今までずっと、海詞の

ことが好きだったわけです。

 幼稚園の頃、海詞が「かれんをおよめさんに

する」と言ってくれたこともあり。

(ただし、海詞は振られたと思い込んでいた。)


 その上、何ということ、叶恋の実家はまだ

イギリスにあり、今回は叶恋一人で来日。

 それどころか、夏休み明けには海詞の

高校へ通うらしい。


 詳しく事情を聞くと、叶恋は既に海詞の

高校へ短期留学の手続きを済ませており、

年内は日本にいるとのこと。


 その間は海詞の家に暮らすつもりで、

自分の親の許可も取ったそうです。


 のっけから夢のような出来事が

立て続けに起こり、私も読者として、

「もう、どうにでもしてくれや」という

気分でした(笑)。


 こうして二人は、夏休み中には家で

過ごしたり、コスプレイベントで

遊んだりし、二学期からは高校生活も

楽しみます。


 でも、そこへ別の美少女も登場し、

一方では叶恋の抱えた重大な事情も

明かされて……と、これまたお約束の

展開が続いていくというわけなのでした。


 私が、小説全体を通して一番楽しめた箇所は、

海詞と叶恋が共同生活を始めた初期の頃でした。


 おいしい料理を作ってくれる叶恋。

 それを二人で食べて。

 それから、海詞が入浴していたら叶恋が

風呂場へ突然入ってきて、背中を流してくれて。


 何かこういう、男なら一度は夢見た場面を

丁寧になぞってくれる、作者の律儀な

仕事ぶりがうれしくて。


 それ以後、ひまわり畑や横浜、遊園地での

コスプレイベントも、まあ、それなりには

楽しいんですが、私自身はコスプレにも

アニメにもさほど興味がなく、若干、

置いてきぼりの観がありました。


 それよりも、前述の食事やお風呂の場面を

もっと増やしてほしかった気がします。

 多少、ワンパターンの繰り返しになって

しまっても構わないので。


 もっとも、最初に書いた通り、この本は

表紙絵からしてアニメ風。


 要は、もともとアニメファン向けに

書かれた小説だったのかもしれず、

私みたいな人は対象読者として余り

想定されていないのかなあ、などとも

思いました。

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