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瑞智士記「二周目の僕は君と恋をする」(ファミ通文庫)感想

17 二周目の僕は君と恋をする

(瑞智士記/2017年7月/ファミ通文庫)


 白い半袖セーラー服美少女が、屋上に立って右手を

高く掲げています。


 (恐らく夜明けの)陽光と星空をバックに、ふわりと

跳ね上がる長い黒髪、空を見上げるひたむきな横顔。

 遠くに浮かび上がるビル群の影。


 濃く描き込んであるのに、構図はシンプル。

 素晴らしい表紙イラスト(和遥キナ)。即、ジャケ買い。


 タイトルで想像が付く通り、内容はタイムリープ物です。


 主人公はさえない少年。

 好きだった女の子(同学年)が、高三の夏に突然消えて

しまいます。もちろん美少女。そしてヒロイン。


 失踪とは違い、主人公以外の人々の記憶、記録から抹消。

 最初からこの世に「いなかったこと」に。

 残ったのは彫金細工の髪留めのみ。ただ事ではありません。


 主人公はショックで部屋に引きこもってしまい、二年後。

 二十歳の夏、交通事故をきっかけに、主人公は高三の

春へタイムリープします。ヒロインと出会った日。


 どうやら、もう一度人生をやり直せたらしい。

 そこで、主人公は決意します。ヒロインが消えた原因を

突き止め、次は消さないようにするぞと。


 リミットは数か月後の夏。直前ではないにせよ、割と

すぐです。

 果たして間に合うのか、というのがお話の核となります。


 学園物の甘酸っぱさも、タイムスリップ物の壮大さも

味わえ、一冊で二度おいしい感じでした。


 それから、ヒロイン消失の理由と、それへの対応策は

整合性が取れており、物語最大の仕掛けにブレがなかった。


 また、消失を阻止するため、主人公が前回よりも積極的に

ヒロインへアタックし、早めに親密になろうと頑張ったのも

良かった点です。


 少なくとも友達以上の関係にはならないと、込み入った

話し合いもできませんからね。

 一回目とは違い、もはや照れたりためらったりしている

場合ではありません。急がねば。


 この小説に限らず、一般論としても、人生は何が起こるか

分からないのだから、大事なことは前倒し、前倒しで

やらなきゃいけませんよね。

 これは、多くの共感を呼びそうな普遍的テーマだと思う。


 ただ、全体的に、私は、どちらかといえば不満な箇所の

方が多かったですね。残念ながら。


 最初の、過去へ飛んだ原因からして安直です。今日び、

交通事故でタイムリープって。

 ちょっと、ひねりがなさ過ぎるでしょう。


 冒頭からこれでは先が思いやられるな、大丈夫かなと

心配したのですが、やはり大丈夫じゃなかったですね(苦笑)。


 タイムリープ自体の法則もふわっとしており、「起きる

こと、できること」が場面ごとに継ぎ足されている印象。

 力業が目立ちます。


 先述の髪留めも重要なアイテムなのですが、作者が

持て余し気味で、小道具として使いこなせていません。

 ヒロインが「付けてるだけ」、主人公が「持ってる

だけ」で、明確な役割、必然性が感じられない。


 この傾向、ストーリーのあらゆる面に共通しているんです。


 例えば、景色を壊すように工事が進む近所、ヒロインが

踊る際の選曲、昔からなぜか不運な目に遭いやすい主人公、

ヒロインの叔母が古ぼけた民家で職人をしていること、

サブヒロインをめぐる三角関係。


 次々と意味ありげな場面設定が出てくるものの、やはり

どれも中途半端。

 不吉な予感を高める効果こそあるものの、それで終わり。


 プロが作るストーリーならば、終盤でこれら全部を

つなぎ合わせ、読者を驚かせてほしいのですが。


 私たち読者は、意味ありげな箇所ほど、「これは後々

重要な伏線となるかもしれない」と考え、頭に入れて

おこうと努力するわけですよね。タイムリープ物とかは特に。


 それがくたびれもうけに終わった時のがっかり感といったら。


 もう一つ。

 お色気サービスシーンの入れ方も、余りうまく

なかったです。


 冒頭、近所で制服姿のヒロインが踊る場面があり、

主人公は見とれ、これが二人の出会いになります。

(リープ後の二度目は、もちろん、主人公は「知ってて」

そこへ向かいます。)


 踊りをのぞき見されていたことに気付いたヒロインは、

スカートの中を見たでしょと主人公をとがめるのですが、

このやり取りは不要と思いました。


 時空を越えた「二年ぶり、二度目の出会い」がぶち壊し。

 ここはせっかくの泣かせどころなのに。


 そもそも、日常的に踊っている以上、とっくにスカートの

下に短パンを履くなどの自衛策は講じていなきゃおかしい。


 実際、次回からはそうするのですが、いやいや、遅い

でしょ(苦笑)。女子としてどうよ、って話で。


 むしろ、普段はスカートの下に短パンを履いているけど、

たまたま短パンを履いていなかった時、不意に踊りたく

なり(又は踊らざるを得ない局面になり)、思いがけず

サービスシーン発生、とかの方がメリハリが効いた気が

するんですけどね。

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